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国循ブレインハートチーム 令和2年度活動実績

令和3年5月24日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の脳血管内科・脳神経内科と心臓血管内科を中心とするブレインハートチームの、令和2年度活動実績を報告します。

ブレインハートチームとは

国民病の双璧とも云える脳卒中と心臓血管疾患は、危険因子や発症機序に共通項が多く、両領域の専門家が共同して診療にあたることが理想的です。国循は開設以来44年間にわたってこの共同作業を続けてきた、ブレイン+ハートのチーム診療の老舗です。
脳卒中医家と心臓医家が連携すべき代表的疾患は心原性脳塞栓症(心房細動などの不整脈、心臓病を塞栓源とする脳梗塞)ですが、従来は本疾患の再発予防法は薬物治療としての抗凝固療法に尽きました。近年の構造的心疾患(弁膜症や先天性心疾患など)に対するカテーテル治療の進歩に伴い、近年ではこのようなカテーテル治療を心原性脳塞栓症の再発予防に積極的に用いるようになってきました。同時にこれら治療を実施する心臓医家と、脳梗塞の機序を正確に診断し発症後の患者診療を担当する脳卒中医家との診療連携が重視され、ブレインハートチームという名称が定着してきました。

経皮的卵円孔開存閉鎖術の実績

脳梗塞患者に行う構造的心疾患へのカテーテル治療(経皮的治療)の代表格は、卵円孔開存症閉鎖術と左心耳閉鎖術です。
卵円孔は、心臓の右心房と左心房の壁(心房中隔)に空いている穴のことで、胎児期には開いており、生後すぐに自然閉鎖しますが、2~3割では十分に閉鎖せず小さな裂孔が残存します。下肢などの静脈にできた血栓が、この小さな穴を通して右心房から左心房、さらに脳へと流れて脳動脈を詰め、脳梗塞の原因となります。このような脳梗塞を奇異性脳塞栓症と呼び、特殊な心原性脳塞栓症と考えられます(図1)。国循では、奇異性脳塞栓症の診断基準を作成したり、卵円孔開存症の超音波診断法を開発したり、長年にわたって本疾患の診療技術開発に関わってきました。経皮的卵円孔開存閉鎖術はこの穴を閉じて脳梗塞の再発を予防する治療です。
カテーテル治療による卵円孔開存閉鎖術は2019年に国内で薬事承認を得て、実施施設基準を満たし公的な管理委員会の認定を受けた施設のみで治療可能になりました。国循では2020年より本治療を導入し、肺循環科、心不全科、小児循環器科を中心に治療を行っています。まだ導入して1年半に満たないのですが、既に28件、国内第3位の実績を挙げています。とくに本治療に関するブレインハートチームの連携が優れていることを理由に、国内で初、世界全体でも約10施設しか得ていない、本治療のCoE(Center of Excellence:人材やハード面を集約した横断組織)の称号を受けました。
近年では高リスクの卵円孔開存を有し、他に明らかな脳梗塞の原因を認めない比較的若い(原則として60歳未満)脳梗塞を「卵円孔開存症関連脳梗塞」とみなして、積極的に卵円孔開存閉鎖術を行うことが推奨されています。しっかりしたブレインハートチームを作り上げた施設での治療が、重視されています。

他のブレインハートチームの実績

心房細動は心原性脳塞栓症の最大の原因となる不整脈で、左心房の中の袋小路のような左心耳と呼ばれる部位に血栓を作り、その血栓が脳に流れて脳動脈を詰めることで、比較的重症の脳梗塞を起こします(図2)。この左心耳に、カテーテル治療でパラシュートのような器具を留置して、左心耳全体を塞ぐ治療を経皮的左心耳閉鎖術と呼びます。国循は、この治療法の開発治験や薬事承認にも専門的にかかわりました。心房細動を伴う脳梗塞患者には通常抗凝固薬で再発予防を行いますが、抗凝固薬の適正使用下でも脳梗塞を再発したり、出血リスクが高くて十分な抗凝固療法を行えない患者に、非常に適した治療です。本治療も実施施設基準を満たし認定を受けた施設のみで治療可能で、国循では不整脈科を中心に治療を行っています。
国循心臓外科では、手術による左心耳閉鎖治療も行っています。メイズ手術という心房細動を停止させて正常洞調律に戻す治療を同時に行うこともでき、患者の状況に応じてカテーテル治療と手術とを選び分けることが出来ます。
他にも、原因不明の脳梗塞患者への植込み型心電図記録計の挿入とその後の長期間モニターによる塞栓源検査、失神・意識消失患者への共同での外来診療(失神外来)、心房細動患者に特化した特殊外来(心房細動外来)、心房細動へのカテーテルアブレーションが脳梗塞再発を減らし得るかを調べる多施設共同研究への参加をはじめ、国循のブレインハートチームの活動は多岐にわたります(図3)。ブレインハートチームの意義を主題とした第8回日本心血管脳卒中学会学術集会も、国循を会場としたハイブリッド方式で4月に開催され、大きな反響を得ました。長年にわたって培ってきた脳領域と心臓血管領域の診療連携を基に、今後もより良い循環器診療を進めてゆきます。

(図1)奇異性脳塞栓症と経皮的卵円孔開存閉鎖術: 国循HP(肺循環科)より改変引用


(図2)左心耳血栓と経皮的左心耳閉鎖術: 国循HP(不整脈科)等より改変引用


(図3)国循ブレインハートチームの様々な活動

最終更新日 2021年05月24日

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