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都市部地域住民における継続的な歯科定期受診と咀嚼能率との関係について

2020年3月6日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:小川久雄、略称:国循)予防健診部の宮本恵宏部長、新潟大学大学院医歯学総合研究科の小野高裕教授、大阪大学大学院歯学研究科の池邉一典教授らの共同研究チームは、無作為抽出した都市部一般住民である吹田研究(注1)参加者を対象に解析した結果、定期的な歯科受診が、食物を細かく噛む能力(咀嚼能力)の低下の予防に有効であることを示しました。本研究成果は、歯科医学の国際誌「Odontology」に2020年3月5日に早期公開されました(注2)。

背景

近年、高齢期の軽微な口腔機能の低下を反映したオーラルフレイルと呼ばれる症候が提唱されました。歯科受診することで口腔機能の低下に早期に気づき、オーラルフレイル予防に努めることが重要だと考えられます。

一方、さまざまな口腔機能の一つに、食物を細かく噛む能力である「咀嚼能力」があります。加齢に伴い歯数は減少し,咀嚼能力が低下することで、栄養摂取に悪影響を及ぼし、最終的にメタボリックシンドロームや動脈硬化性疾患の発症へとつながることが、これまでの吹田研究の結果からも示唆されています。そこで、咀嚼能力の低下を予防することが重要となりますが、これまでに歯科定期受診(かかりつけの歯医者さんを持って、症状がなくても定期的に受診して歯と口の健康を保つこと)と咀嚼能力との関係についての報告はほとんどなく、エビデンスが求められていました。

研究方法と成果

吹田研究参加者である50~79歳の都市部一般住民のうち、初回歯科検診、および2回目歯科検診(初回から4年以上経過)の両方を受診した1,010名(男性430名、女性580名)を対象に解析を行いました。咀嚼能力の測定には、専用に開発されたグミゼリーを30回咀嚼して増えた表面積を算出する方法を用いました。

その結果、継続的な歯科定期受診のある対象者は、咀嚼能力が低下しにくいことが明らかとなり、加齢に伴う口腔機能の低下を軽減する上で、継続的な歯科定期受診が有効である可能性が示されました(表1)。

今後の展望と課題

本研究成果の意義は、これまで多く報告されてきた、歯の数や咬み合わせの状態などの形態的な因子だけではなく、歯科定期受診という行動科学的因子が咀嚼能力に影響を及ぼすことを明らかにしたことです。歯科治療による対応だけでなく、口腔健康への関心を向上させるポピュレーションアプローチが、口腔機能低下を予防し、ひいては動脈硬化性疾患やフレイル予防の新たな戦略になると考えられます。そのためにも、医科歯科連携のもと、さらなるエビデンスを構築して行くことが今後の課題と考えられます。

謝辞

本研究は、下記機関より資金的支援を受け実施されました。
独立行政法人 日本学術振興会(科学研究費「20390489」、「23390441」、「26293411」、「17H04388」)、国立研究開発法人国立循環器病研究センター(循環器病委託研究費「22-4-5」、「27-4-3」)

<注釈>
(注1)吹田研究 (第1次コホート:1989年~、第2次コホート:1996年~)
国循が1989年より実施しているコホート研究(研究対象者の健康状態を長期間追跡し、病気になる要因等を解析する研究手法)で、大阪府吹田市の住民基本台帳からランダムに抽出した吹田市民を対象としています。全国民の約90%以上を占めている都市部の住民を研究対象としていることが特徴であり、その研究結果は国民の現状により近い傾向があると考えられています。

(注2)論文タイトル:Periodical utilization of dental services is an effective breakthrough for declining masticatory performance: the Suita study

<図表>
(表1)咀嚼能率低下率を目的変数とした重回帰分析

n=1010
年齢、咀嚼能率、歯数、咬合力、唾液分泌速度は、1回目検診時のデータである。
1回目、2回目検診時のどちらも歯科定期受診ありの者を、「継続的な歯科定期受診あり」とした。
咀嚼能率変化率
=(2回目検診時の咀嚼能力-1回目検診時の咀嚼能力)÷1回目検診時の咀嚼能力×100

最終更新日 2020年3月10日

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