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抗凝固薬を内服中に脳梗塞を発症した心房細動患者は脳梗塞の再発リスクが高い

2020年3月5日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:小川久雄、略称:国循)の田中寛大 脳卒中集中治療科医師、古賀政利 脳血管内科部長、豊田一則 副院長らを含めた国内多施設共同の研究チームは、韓国の研究者らとの共同研究で、抗凝固薬を内服中に脳梗塞を発症した心房細動患者さんでは、抗凝固薬を内服していない状態で脳梗塞を発症した心房細動患者さんに比べて、脳梗塞の再発リスクが1.5倍高いことを解明しました。本研究成果は、Stroke誌に令和2年2月26日付でonline掲載されました。

背景

心房細動は心臓の不整脈の一種です。心房細動があると、心臓の中に血栓が形成され、その血栓が脳に飛散することがあります。そのため、心房細動があると脳梗塞を発症しやすくなります。抗凝固薬は血栓形成を抑制する働きがあり、脳梗塞予防を主な目的として心房細動患者さんで使用されます。しかし、抗凝固薬で脳梗塞を完全に予防できるわけではなく、実際には抗凝固薬を内服しているにも関わらず脳梗塞を発症する患者さんを多く経験します。このような、抗凝固薬内服中に脳梗塞を発症した心房細動患者さんでは、抗凝固薬の効果がうまく発揮できなくなるような原因が潜んでいる可能性があるため、非常に重要ですが、現状ではデータがありません。
一方で我々は、国内18施設の多施設共同前向き研究であるSAMURAI-NVAF研究(注1)に登録された症例データと、韓国15施設の多施設共同前向き研究であるCRCS-K研究(注2)に登録された症例データから、心房細動を有する脳梗塞症例のデータをプールし、日韓合同でEAST-AF(East-Asian Ischemic Stroke Patients With Atrial Fibrillation)レジストリを構築しています。
今回我々は、抗凝固薬内服中に脳梗塞を発症した心房細動患者さんでは、抗凝固薬を内服していない状態で脳梗塞を発症した患者さんに比べて、脳梗塞の再発リスクが高いのではないかと考え、EAST-AFレジストリを用いて検証しました。

研究方法と成果

日韓合同EAST-AFレジストリに登録された非弁膜症性心房細動を有する脳梗塞症例6,033名のうち、5,645名分のデータが本研究で解析可能でした。抗凝固薬を内服中に脳梗塞を発症した症例がそのうちの2割(1,129名)を占めていました。抗凝固薬内服中の脳梗塞症例と、抗凝固薬を内服していない状態で脳梗塞を発症した症例の2群に分類して1年間追跡し、脳梗塞や脳出血、死亡のリスクに違いがあるかを評価しました。
解析の結果、抗凝固薬内服中に脳梗塞を発症した心房細動症例では、抗凝固薬を内服していない状態で脳梗塞を発症した心房細動症例に比べて、脳梗塞の再発リスクが1.5倍高いことが示されました(図)。脳出血と死亡のリスクについては、両群間で差がありませんでした。

今後の展望と課題

  • SAMURAI-NVAF研究と欧州6研究の登録症例をプールしたデータの解析においても、本研究と同様、抗凝固薬内服中に脳梗塞を発症した心房細動症例では、抗凝固薬を内服していなかった症例に比べて、脳梗塞の再発リスクが1.6倍高いことが示され、本研究とほぼ同時にAnnals of Neurologyに掲載されました。
  • 本研究と同様の結果がアジア人以外でも確認されたことから、抗凝固薬内服中に脳梗塞を発症した心房細動症例について、高い脳梗塞再発リスクのメカニズム解明、これら高リスク症例に対する脳梗塞予防戦略の確立など、国際的な取り組みが必要です。

謝辞

本研究は、下記機関より資金的支援を受け実施されました。

  • 厚生労働省「H23-循環器一般-010」

<注釈>
(注1)[NVAF]非弁膜症性心房細動(Non-valvular atrial fibrillation)の略。
[SAMURAI-NVAF研究]Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement (SAMURAI)-Non-Valvular Atrial Fibrillation (NVAF)研究。NVAFを有する発症7日以内の急性期脳梗塞/一過性脳虚血発作患者を対象とした国内18施設の多施設共同前向き研究。

(注2)[CRCS-K研究]Clinical Research Collaboration for Stroke in Korea (CRCS-K)研究。発症7日以内の脳卒中/一過性脳虚血発作患者を対象とした韓国15施設の多施設共同前向き研究。

<図>

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