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都市部地域住民における冠動脈疾患・脳卒中
発症予測スコアの開発

2020年2月28日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:小川久雄、略称:国循)OIC循環器病統合情報センターの中井陸運室長らの研究チームは、吹田研究(注1)のデータから都市部での地域住民を対象とした冠動脈疾患・脳卒中発症のリスクスコア(吹田心血管病スコア(吹田CVDスコア)) (注2)をわが国で初めて開発しました。本研究成果は、日本動脈硬化学会の専門誌「Journal of Atherosclerosis and Thrombosis」に2020年2月6日に公開されました(注3)。

背景

脳心血管病は、世界全体における最大の死亡原因であり、その対策が急務となっています。その予防のツールとして、欧米では、冠動脈疾患の発症を予測するリスクスコアだけでなく、冠動脈疾患に脳卒中を加えた脳心血管病の発症を予測するものも開発され、すでに活用されています。しかし、日本では、欧米と異なり、脳心血管病の発症全体に占める脳卒中の割合が冠動脈疾患より高く、欧米のリスクスコアをそのまま日本人に当てはめても正確な予測はできません。また、わが国でも脳心血管病のリスクスコアは開発されていますが、総人口の90%以上を占める都市部の住民(平成27年国勢調査)を対象としたものはありませんでした。そこで、今回、国民の現状により近い吹田研究のデータを用いて、冠動脈疾患・脳卒中発症のリスクスコアを開発しました。

研究対象と成果

吹田研究の対象者(30歳~79歳、男:3,080人、女:3,470人)において、冠動脈疾患・脳卒中の発症を2013年12月まで追跡したデータから、10年以内の冠動脈疾患・脳卒中発症確率を予測するスコアを開発しました。古典的な循環器疾患の危険因子だけでなく、尿蛋白や心房細動の有無、心電図所見(左室肥大)などを含めた予測も可能です。
各予測因子のカテゴリーの点数(表1)を合計することにより、発症確率(表2)を予測することができます。

今後の展望

本リスクスコアは、実際の健康診断や診療の場面で一般的に行われる項目を用いて、容易に計算可能であり、冠動脈疾患・脳卒中の早期予防に広く活用できるものと考えます。また、脳心血管病に関係するガイドラインの策定などに貢献することも期待されます。

謝辞

本研究は、下記機関より資金的支援を受け実施されました。 国立研究開発法人科学技術振興機構(「16H05252」)、厚生労働省(「H27-循環器等一般009」「H29-循環器等一般003」「H30-循環器等一般005」)、国立研究開発法人国立循環器病研究センター(「循環器病研究開発費27-4-3」)

<注釈>
(注1)吹田研究(第1次コホート:1989年~、第2次コホート:1996年~)
国循が1989年より実施しているコホート研究(研究対象者の健康状態を長期間追跡し、病気になる要因等を解析する研究手法)で、大阪府吹田市の住民基本台帳からランダムに抽出した吹田市民を対象としています。全国民の約90%以上を占めている都市部の住民を研究対象としていることが特徴であり、その研究結果は国民の現状により近い傾向があると考えられています。

(注2) 論文内で、冠動脈疾患・脳卒中発症のリスクスコアをSuita CVD scoreと定義しており、日本語標記を「吹田心血管病スコア(吹田CVDスコア)」とする。また、このスコアは評価に用いた検査所見等を持った一般的な人の発症確率を示して診療の補助に使うのが目的であり、個人の診断機器ではありません。

(注3) 英語論文タイトル:Development of a Cardiovascular Disease Risk Prediction Model using the Suita Study, a Population-Based Prospective cohort study in Japan

<図表>
(表1)吹田心血管病スコア(吹田CVDスコア)


(表2)10年以内に冠動脈疾患・脳卒中が発症する確率

最終更新日 2020年2月28日

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