ホーム > 広報活動 > プレスリリース > 心房細動を有する脳梗塞患者に対する発症早期の 直接作用型経口抗凝固薬 ~SAMURAI-NVAF研究~

心房細動を有する脳梗塞患者に対する発症早期の 直接作用型経口抗凝固薬 ~SAMURAI-NVAF研究~

令和2年1月31日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:小川久雄、略称:国循)の溝口忠孝脳血管内科医師、田中寛大脳卒中集中治療科医師、吉村壮平脳血管内科医長、古賀政利脳血管内科部長、豊田一則副院長らの研究チームは、心房細動を有する脳梗塞患者に対する発症早期の直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の有用性と安全性を詳細に検討し、脳梗塞の重症度に注意すれば、脳梗塞発症から数日以内にDOACを開始してもよいと考えられることを明らかにしました。本研究成果はStroke誌に令和2年1月22日付でonline掲載されました。

背景

心房細動は心臓の不整脈の一種です。心房細動があると、心臓の中に血栓が形成され、その血栓が脳に飛散することがあります。そのため、心房細動があると脳梗塞を発症しやすくなります。脳梗塞患者で心房細動があると、脳梗塞の再発を抑えるために、抗凝固薬といわれる血液が固まるのを防ぐ薬を内服します。抗凝固薬としては、従来から使用されているワルファリンに加えて、2011年以降に国内ではダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンの4つの直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant: DOAC)が承認され、現在では多くの患者に使用されています。

脳梗塞発症から数日間は脳梗塞再発が多い一方で、脳梗塞巣から出血することもよく経験します。心房細動を有する脳梗塞患者では、特に、脳梗塞再発リスクが高く、同時に脳梗塞巣からの出血リスクも高いため、「脳梗塞を予防するために抗凝固薬を早く開始したいが、脳梗塞巣からの出血が心配」というジレンマがあります。その点でDOACは塞栓症の予防効果はワルファリンと同等であり、加えてワルファリンに比べて頭蓋内出血が少ないという利点があります。今回、心房細動を有する脳梗塞患者についての国内多施設共同研究(SAMURAI-NVAF研究)に登録されたデータを使用し、脳梗塞発症早期のDOAC開始について、有用性と安全性を評価しました。

研究方法と成果

国内18施設の多施設共同前向き研究であるSAMURAI-NVAF研究に登録された、非弁膜症性心房細動を有する脳梗塞患者1192名のうち、DOACを開始した499名を対象としました。DOAC内服の開始タイミングの中央値は発症後4日でした。対象とした499名を、発症から3日以内にDOACを開始した早期群と4日以降に内服を開始した後期群の2群に分類して2年間追跡し、脳卒中や全身塞栓症、出血合併症の頻度に違いがあるかどうか評価しました。解析の結果、早期群と後期群の間では、脳卒中や全身塞栓症、出血合併症の頻度は同等でした(図1)。ただし、脳梗塞巣の大きな患者では、DOAC開始が発症から1週間程度でした(図2)。重篤でない脳梗塞患者で、塞栓症を発症する危険性が高い場合には、DOACの開始を遅らせる必要はないと考えられます。

今後の展望と課題

現在、米国、欧州ではDOAC開始の最適なタイミングを明らかにするための多施設共同無作為化比較試験が複数実施されています。その中の一つであるELAN(Early versus Late initiation of direct oral Anticoagulants in post-ischaemic stroke patients with atrial fibrillatioN)試験(スイス ベルン大学主催)に当センターからも参加する予定です。

謝辞

本研究は、下記機関より資金的支援を受け実施されました。
厚労科研H23-循環器等(生習)- 一般-010
「急性期脳卒中への内科複合治療確立に関する研究(SAMURAI研究)」

<図表>
(図1)DOACを開始時期の早期群と後期群の間での、脳卒中や全身塞栓症、出血合併症の頻度を比較したグラフ

(図2)DOAC開始までの日数を虚血性脳卒中の重症度別に比較したグラフ

DOACを開始した日数は、一過性脳虚血発作患者の中央値が3日、小梗塞・中梗塞の患者は4日、大梗塞の患者は7日であった。梗塞巣が大きくなるにつれて開始している日数は遅くなっている。

最終更新日 2020年1月31日

ページ上部へ