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心不全患者における個々の心血管イベント発生を予測できるモデルの作成に成功

平成30年3月6日
国立研究開発法人 国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(略称:国循)研究開発基盤センター臨床研究部の福田弘毅医師、北風政史部長らの研究チームは、心不全患者における退院後の心血管イベント発生と個人の臨床因子との関係を、数学的に予後予測モデルとして定式化することに成功しました。本研究は、大阪大学産業科学研究所知能推論研究分野の鷲尾隆教授、北海道大学、九州大学との共同研究の成果で、英国の科学誌「Scientific Reports」に2018年3月5日(日本時間)に掲載されました。

背景

心疾患は長らくわが国の死亡原因の第2位であり、特に急速な高齢化の進展等により心不全患者が増加しています。医療者が治療の指針とするガイドラインは平均的な患者像を想定していますが、ライフスタイルの多様化などにより患者個々の病気のタイプや併存疾患、生活習慣など実際の患者像は多岐に及びます。そこで、今後は患者個別の病態に応じたオーダーメイド医療の実現が一層求められると考えられます。

研究手法と成果

福田医師らの研究チームは、数多くの患者因子から個別の予後を推定する数学的モデルを作成し、実際の医療現場に応用可能かを検証しました。まず、国循病院に2007~2009年に心不全症状増悪のため入院し、その後退院した患者167名について心疾患による死亡や再入院などの心血管イベントが発生するまでの期間と、年齢や性別、基礎疾患、検査所見、投薬内容などの患者因子50項目を調査し、これらの各因子の心血管イベントに対する寄与度(表)を求め、心血管イベントが発生する時期を予測する数学的モデルを構築しました(以下「本モデル」、図1)。さらに、北海道大学および九州大学と共同で、2013~2016年に心不全により入院した患者213例について本モデルから予測される心血管イベント発生までの期間と実際の心血管イベント発生までの期間を比較する前向き研究を実施しました。その結果、本モデルは実際の心血管イベント発生までの期間を高精度に予測できることが明らかになりました(図2)。

今後の展望と課題

本モデルの活用により、心血管イベント発生を回避するために患者個々に最適な治療方針や外来スケジュールの決定などが可能になると期待されます。また、本研究では心不全症例に特化したモデル作成を行いましたが、本研究を応用して他の疾患についてもモデル化が可能になることで医療のオーダーメイド化がより進むと考えられます。

<図表>

(図1)心不全患者の退院後予後を予測する数式モデルのイメージ

(図1)心不全患者の退院後予後を予測する数式モデルのイメージ

(表)数式に用いた臨床因子とそれぞれの寄与度
個々の患者ごとに、下表に示すそれぞれの因子に寄与度を掛け合わせた数値を数式モデルに用いて、再発までの期間を予測する。

(表)数式に用いた臨床因子とそれぞれの寄与度

(図2)退院後の心血管イベント発生までの期間
本モデルの予測値(青)は実際に心血管イベント発生までにかかった期間(赤)とほぼ一致しており、患者個々に対する心血管イベントの発生を高精度で予測できたことを示す。

(図2)退院後の心血管イベント発生までの期間

最終更新日 2018年03月06日

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