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不整脈を起こしやすい心筋症における致死性不整脈発症予測に心磁図検査が有効

平成29年8月30日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(略称:国循)病院心臓血管内科(部門長 安田聡)の不整脈科(部長 草野研吾)と研究所循環動態制御部(部長 杉町勝)の共同研究チームは、心磁図検査(注1)が不整脈原性右室心筋症(ARVC、注2)における致死性不整脈の発症予測に有用であると明らかにしました。本研究成果は、日本循環器学会の英文医学雑誌「Circulation Journal」オンライン版に2017年8月30日(日本時間)に掲載されました。

背景

ARVCは致死性不整脈や突然死を起こしやすい、予後不良の疾患です。ARVC患者の心筋には脂肪変性(注3)や線維化(注4)が生じているために、心筋の発する電気信号に異常を生じさせることがわかっています。このため心室頻拍や心室細動など重篤な不整脈が出現し、死に至ることもあります。ARVCによる突然死は植込型除細動器(ICD、注5)の装着により回避可能になりますが、ICD植込を検討するための明確な指標はこれまでありませんでした。

研究手法と成果

心磁図検査は心臓の電気的活動を詳細に評価できることから、心筋症の予後不良因子となる電気信号の異常を検出できる可能性があり、心磁図検査の臨床的意義の確立が求められています。本研究チームは、2016年11月にも心磁図検査で拡張型心筋症の予後予測が可能であることを明らかにしており、今回はARVC患者において、従来の検査法では検出困難な右室の電気的活動の異常を心磁図で見つけ出すことができるか、またそれが致死性不整脈の予測に有効であるかを検証しました。
本研究チームはARVC患者40例に対し、64チャンネル心磁計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、図1)で右室の電気信号を測定しました。そこから得られた心磁波形をもとに、株式会社日立製作所が開発した電流分布画像化技術を用いて、電気信号の伝播を観察しました。その結果、24例(60%)において心臓の電気的活動の終末期に、通常認められない微弱な電気信号が再増強する現象が認められました(図2)。
さらに、この微弱な電気信号の再増強のタイミングを測定したところ、より遅いタイミングで再増強を認める症例(12例)では、その後の追跡期間(中央値42.5ヶ月)で致死性不整脈を起こしたのは6例(50%)、再増強なしもしくは再増強のタイミングが比較的早い症例(28例)では致死性不整脈を起こしたのは2例(7%)のみでした。なお、心電図や加算平均心電図など従来の手法では致死性不整脈予測の有効性は証明されませんでした。
本成果は株式会社日立製作所研究開発グループとの共同研究の成果の一部です。

今後の展望・課題

本研究により、心磁図検査で心臓の電気信号の再増強の有無やタイミングを調べることがARVC患者の致死性不整脈発生予測に有用であると明らかになりました。突然死予防を目的としたICD植込が必要な症例を心磁図検査で非侵襲的かつ正確に検討できることから、今後はカテーテルアブレーション(注6)による不整脈治療の効果判定や、他の様々な心疾患患者の電気生理学的な病態解明が進むことが期待されます。

<注釈>
(注1)心磁図検査
心臓の磁気の流れから電気信号の伝達を画像として表示できる検査方法。磁気の流れは心臓周囲の臓器や組織などの影響を受けないため、従来の心電図検査より正確かつ詳細に心臓の電気的活動を評価することができる。
心磁図検査は先進的診断法として循環器診療に大きく貢献できると考えられ、国循では世界に先駆けて2007年より保険適用の検査として通常診療に導入された。

(注2)不整脈原性右室心筋症(ARVC)
主に右心室の心筋の変性が進むことにより右心室が拡大する疾患。心筋の変性が進むことで電気的活動に異常を来し、その結果致死性不整脈による突然死を起こすこともある。突然死の予防にはICD治療が有効である。

(注3)脂肪変性
心筋細胞が脱落し脂肪に置き換わる現象。心筋の脂肪変性が進行すると、心不全や不整脈を起こし、浮腫や呼吸困難、動悸、失神などの症状が現れる。

(注4)線維化
内臓などを構成する結合組織が異常増殖する現象。心筋に線維化が生じると、脂肪変性と同様の症状が出る。

(注5)植込型除細動器(ICD)
折り畳み式携帯電話ほどの大きさの装置で、主に鎖骨の下の前胸部に植込まれる。頻脈性不整脈を感知すると、心臓内に留置される電線(リード)から電気治療(ペーシングまたは電気ショック)を自動的に行って不整脈を停止させる。

(注6)カテーテルアブレーション
治療用のカテーテルを用いて、不整脈を起こす原因となっている異常な電気興奮の発生箇所を焼き切る治療法。

<図表>
(図1)心磁図検査
心臓の磁気を測定する検査で、地球の磁気の影響を受けない専用の部屋(シールドルーム)で横たわった状態で検査・記録をする(A)。30秒~1分で検査を終了できるが、金属は磁気に影響を及ぼすためペースメーカやICD等の植込を行っている場合は検査ができない。
心臓の電気的活動の周囲に生じる磁気を読み取る仕組みである(B)。

(図1)心磁図検査

(図2)ARVC患者における心磁図検査の結果
心臓の電気的活動の終末期に微弱な電気信号の再増強が認められる場合(上段)は通常の場合(下段)より致死性不整脈を起こしやすい。

(図2)ARVC患者における心磁図検査の結果

最終更新日 2017年08月30日

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