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地域住民を対象とした10年後心房細動予測スコアの開発

平成29年6月6日

国立循環器病研究センター(略称:国循)予防健診部の小久保喜弘医長らの研究チームは、吹田研究(注1)のデータから地域住民を対象とした心房細動のリスクスコアを、わが国で初めて開発しました。本研究成果は、日本循環器学会の専門誌「Circulation Journal」に2017年5月26日に掲載されました。

背景

医療の進歩で寿命は延び、わが国の65歳以上人口の割合(高齢化率)は4分の1を超えていますが、健康寿命との乖離は広がっています。循環器病は国民医療費と要介護原因の1位であり、特に脳卒中と認知症を総合した脳血管疾患は要介護原因の4割を超えることから、超高齢社会を迎え健康寿命の延伸のためには循環器病の予防が不可欠です。
2008年から開始された特定健診で健診項目から心電図が外れたため、高齢者の脳梗塞の大きな危険因子である心房細動(注2)の早期発見が難しくなり、潜在的な心房細動患者の増加が懸念されています。一方でわが国には心房細動のリスクスコアは存在せず、国際的にもフラミンガム研究やARIC研究など欧米諸国の疫学研究によるものがありますが、その数は極めて少ないです。今後急速に高齢化が進展するわが国においても、日本人の実態に則した心房細動リスクスコアの作成が必要です。

今後の展望・課題

本リスクスコアは健診の項目程度からなるので、健診時にスコアが高い場合に追加で心電図を実施することや、一般外来でも高スコアの患者に心電図検査を実施することで、早い段階で心房細動の予防を行うことが可能になります。加えて、個人でも健診の結果を入力することで10年後の心房細動の予測確率を求めるスコアファイル(xlsx:19KB)も作成いたしました(表3)。これで、個別にどの項目に気を付け改善したらよいかがわかります。今後は他の地域集団での妥当性や他のリスク要因の検討も行い、心房細動になる予測能を高め、健診や疾患ガイドラインの策定などに寄与できることを目標とします。

注釈

(注1)吹田研究
国循が1989年より実施している、吹田市民を対象としたコホート研究(地域住民の健康状態を長期間追跡し、病気になる要因等を解析する研究手法)。わが国のコホート研究の中でも、特に全国民の3分の2を占めている都市部住民を対象としていることに特徴があり、より国民の生活習慣に合致した研究とされている。

(注2)心房細動
高齢者に多く発症する不整脈の一種。心臓が小刻みにけいれんすることで血栓ができやすくなり、その血栓が脳に飛んで血管を詰まらせることで脳梗塞を発症する(心原性脳梗塞)危険性が高まる。

図表の解説

(表1)心房細動発症の要因とスコア
高齢・男性・収縮期高血圧・過体重・飲酒・喫煙などの要因があると心房細動をおこしやすい傾向にある。
(表2)心房細動リスクスコアと10年後心房細動発症予測確率に関する対応表

(表3)10年後の心房細動予測確率を示すスコアファイル【xlsx:19KB】


スコアの合計が13点に該当する心房細動予測確率は16%となります。
循環器リスクの中で、過体重を改善すれば2ポイント下がり、16%から9%になります。
生活習慣・血清脂質の中で、適正飲酒にすれば2ポイント下がり、16%から9%になります。両方を改善すると7%になり、16%から7%と心房細動の予測確率が半減以上に低い値になります。このようにどの項目を改善すれば予測確率がどれだけになるかが具体的にわかります。

最終更新日 2017年06月06日

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