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世界で初めて、心臓突然死「ポックリ病」の原因の一つであるブルガダ症候群における遺伝子検査の有用性を報告

2017年4月19日

学校法人 日本医科大学
国立循環器病研究センター

~米国心臓病学会誌『circulation』オンライン版に掲載(2017年3月24日)~

概要

学校法人日本医科大学(東京都文京区、理事長:坂本篤裕)の清水 渉大学院教授、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:小川久雄)の相庭武司医長らの多施設合同研究グループは、主に青壮年男性が夜間に突然死する「ポックリ病」の原因の一つであるブルガダ症候群(注1)の突然死予測におけるSCN5A遺伝子変異(注2)の検査の重要性を世界で初めて報告しました。
ブルガダ症候群による突然死は、植込み型除細動器(ICD)で多くの場合回避できますが、ICD植込みを検討するための明確な指標はこれまでありませんでした。
本研究によりSCN5A遺伝子に異常がある症例では、なかった症例の約2倍の頻度で致死性不整脈が起きていたことが明らかになりました。SCN5A遺伝子の有無を調べることで将来の致死性不整脈発症予測が可能になり、ICD植込みを検討する際の有用な指標になると期待されます。
本研究は、米国心臓病学会誌『Circulation』のオンライン版に2017年3月24日に掲載されました。

【注釈】
(注1)ブルガダ症候群
心電図のST波が上昇する特徴的な波形を示す疾患。多くの場合は無症状だが、致死性不整脈である心室細動を起こして突然死することもある。日本などアジアでは全人口の0.05~0.2%の割合で発症し、男女比は9:1程度とされる。
ブルガダ症候群のうち、遺伝子異常を認めるのは全体の15~30%で、そのほとんどの異常が下記(注2)に示すSCN5A変異である。
(注2)SCN5A遺伝子
心臓の心筋細胞のナトリウムイオンの通り道となるたんぱく質(ナトリウム・イオンチャネル)の電気信号を調整する遺伝子。

研究の背景

ブルガダ症候群は、心電図でST上昇という特徴的な波形を示す疾患で、多くは無症状ですが、一部の症例で心室細動という致死性不整脈を発症し突然死の原因となります。ブルガダ症候群の原因となる遺伝子の異常の一つとして、SCN5A変異がありますが、これまで日本人のブルガダ症候群症例において、SCN5A変異の有無が将来の致死性不整脈イベントの発症にどのような影響を与えるかは十分に検討されていませんでした。

研究手法と成果

今回の研究は、2006年から厚生労働省「厚生労働省科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)(代表 清水 渉))」による支援を受け、日本国内の14施設においてSCN5Aの変異の有無を調べた415例のブルガダ症候群発端者を対象に、SCN5A変異の有無により致死性不整脈の発症に差異がみられるか前向きに長期追跡調査しました。
415例中、60例(14%)にSCN5A変異を認め、355症例(86%)にはSCN5A変異を認めませんでした。平均追跡期間72ヶ月間にSCN5A群では13例(22%)、非SCN5A群では49例(14%) で致死性不整脈が起こりました。両群の生存曲線を比較したところ、SCN5A群で有意に致死性不整脈が多く発症しました(図)。
また多変量解析にて、SCN5A変異を有することが致死性不整脈イベントの有意な予測因子であることがわかりました。
特に変異の部位がナトリウムイオンの通り道(中心孔領域)にある症例では、より致死性不整脈イベントが多く、逆にSCN5A変異を有していても、中心孔領域以外の部位に変異がある心室細動・心停止既往のない症例では、致死性不整脈イベントが少ないことがわかりました。

図 全症例における生存曲線A)SCN5A(+)とSCN5A(-)を比較した図。B)特にSCN5A(+)において中心孔領域の変異の有無で更に検討した図。

図 全症例における生存曲線A)SCN5A(+)とSCN5A(-)を比較した図。B)特にSCN5A(+)において中心孔領域の変異の有無で更に検討した図。

本研究の意義

本研究により、ブルガダ症候群において致死性不整脈イベントを予測するためにSCN5A遺伝子変異の有無を調べることの重要性が明らかとなりました。本研究は、ブルガダ症候群において、社会的損失が大きい青壮年男性の突然死を予防するICDを植え込むべき症例を検討する際の有用なエビデンスを示しました。

論文情報

<タイトル>
Genotype-Phenotype Correlation of SCN5A Mutation for the Clinical and Electrocardiographic Characteristics of Probands with Brugada Syndrome: A Japanese Multicenter Registry.

<著者名>
Kenichiro Yamagata, Minoru Horie, Takeshi Aiba, Satoshi Ogawa, Yoshifusa Aizawa, Toru Ohe, Masakazu Yamagishi, Naomasa Makita, Harumizu Sakurada, Toshihiro Tanaka, Akihiko Shimizu, Nobuhisa Hagiwara, Ryoji Kishi, Yukiko Nakano, Masahiko Takagi, Takeru Makiyama, Seiko Ohno, Keiichi Fukuda, Hiroshi Watanabe, Hiroshi Morita, Kenshi Hayashi, Kengo Kusano, Shiro Kamakura, Satoshi Yasuda, Hisao Ogawa, Yoshihiro Miyamoto, Jamie D. Kapplinger, Michael J. Ackerman, Wataru Shimizu

<雑誌>
Circulation

<DOI>
10.1161/CIRCULATIONAHA.117.027983

発表者・機関窓口

<発表者>
※研究内容については発表者にお問い合わせ下さい

日本医科大学大学院医学研究科 循環器内科学分野
 大学院教授      清水 渉(しみず わたる)
(国立循環器病研究センター 心臓血管内科 客員部長)

国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門 不整脈科
 医長         相庭 武司(あいば たけし)
(心臓ゲノム医療部遺伝性不整脈診療室長 併任)

<機関窓口>
学校法人 日本医科大学 総務部広報課 報道担当
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最終更新日 2017年04月19日

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