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冠動脈バイパス術後のカテーテル治療成果の評価

冠動脈の状態を示すスコアを用いた、初めての予後検証

平成28年9月8日

国立循環器病研究センター(略称:国循)心臓血管内科冠疾患・心血管集中治療科の浅海泰栄医長、野口暉夫部長、安田聡副院長らの研究チームは、冠動脈バイパス術(CABG)後に年月を経て再度の冠動脈血行再建治療が必要な症例に対する経皮的冠動脈カテーテルインターベンション術(PCI)の治療成績や予後を初めて検証しました。本研究成果は、米国の循環器病専門誌「Circulation: Cardiovascular Intervention」に2016年8月31日(日本時間)付で掲載されました。

背景

CABGは、冠動脈が狭窄した場合に体の他の部分から健康な血管を移植して、狭窄部分を迂回する新しい血液の通り道(バイパス)を作る手術です。CABG後年月を経ると、バイパス血管や他の冠動脈の硬化が進行することで再度の冠動脈血行再建術が必要になることもあります。PCI技術の進歩により、このような場合に侵襲的な再度の開心術(CABG)ではなく、非侵襲的なPCIをなされる症例が増えています。しかしこのような症例の治療成績や予後はこれまで検証されていませんでした。

研究手法と成果

浅海医長らの研究チームは、国循で2004年から2011年の間にCABG後にPCIを実施した434例について解析しました。その結果、PCI後の冠動脈硬化の距離や狭窄の数、狭窄部位等や心筋虚血の領域の程度を冠動脈造影画像に基づいて評価する「CABG SYNTAXスコア(注)」が高い症例では、低い症例より心血管事故が多いことが明らかになり(図1)、術後のスコアの値により予後判定に有効となる可能性が示唆されました。ただし術前からスコアの値が高い場合は術後も高い症例が多いことから、PCIの効果に限界があることも判明しました(図2)。

今後の展望

CABG後にPCIを実施した症例で、PCI後のSYNTAXスコアが高い場合の予後が不良であることが本研究結果で明らかになりましたが、その場合の対処法については確立されていません。再度の冠動脈硬化を防ぐ至適薬物療法を十分に実施するとともに、今後は再度の冠動脈血行再建術が必要になった場合にどのような管理が必要になるかを解明することが必要になります。

(注)CABG SYNTAXスコアの実際
冠動脈およびバイパス狭窄間の距離や狭窄の数、狭窄部位などによって点数付けを行う。下記の症例1では静脈グラフトにPCIを施行し38点(術後スコア高値の状態)で終了した。一方、症例2では左回旋枝2ヶ所の狭窄にPCIを行い20点(術後スコア低値)となった。

(図1)CABG SYNTAXスコアに基づいた予後の違い
PCI後SYNTAXスコアが高いと、(A)心臓血管死+心筋梗塞+緊急冠動脈血行再建術(B)心臓病に由来する死亡(C)すべての死亡(D)すべての冠動脈血行再建術の発生率が高まることが明らかになった。


(図2) PCI術前後のCABGSYNTAX スコアの関係
両者の関係は強い正相関を認めることから、術前状態が術後状態を決める可能性がある。

最終更新日 2016年09月08日

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