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心臓MRIを用いた心房細動合併心不全への治療効果の予測指標を発見

平成28年9月6日

国立循環器病研究センター(略称:国循)心臓血管内科の岡田厚医師らの心不全科・不整脈科合同研究チームは、心房細動を合併した心不全の病態の一種である「頻脈誘発性心筋症」の新しい治療効果予測指標を発見しました。本研究成果は、日本循環器学会の英文専門誌「Circulation Journal」に平成28年8月23日にオンライン掲載されました。

背景

心房細動の罹患率は年々増加傾向にありますが、その一部に心房細動に伴う心拍上昇が原因となり心筋の収縮がうまくいかず心機能が低下する「頻脈誘発性心筋症(TIC)」があります。TICは心房細動の治療により心機能が著しく改善しますが、治療前にTICであると予測することは困難で、不整脈治療後に心機能が改善したことで初めて診断が確定します。特に心機能低下を伴った心房細動の症例では、TICと特定難病に指定されている特発性拡張型心筋症(DCM:注)とは初期病状がよく似ており、一般的な検査でも鑑別が困難なため、初期段階でこの2つの病気を区別する有効な指標が求められていました。

研究手法と成果

岡田医師らの研究チームは、国循で2009年から2013年の間に心臓MRI検査を実施した患者のうち、心機能低下を伴う心房細動の102症例についてMRI撮影データと最終的な診断を解析しました。102例のうち55例は1年以内に症状が改善しTICと診断され、47例はDCMと診断されました。解析の結果、初診時のMRI検査で右心室機能が低下していた症例は結果的にTICと診断される率が有意に高いことが明らかになりました(図1)。右心室と左心室それぞれの収縮力(ポンプ能力)を比較する右室駆出率/左室駆出率(RVEF/LVEF)比が1.05未満の場合にTICと診断される割合が有意に高く(図2)、この指標(RVEF/LVEF<1.05)は90%以上の確率でTIC を見分けられると判明しました。

今後の展望

心臓MRIを用いたRVEF/LVEF比の算出によりTICの診断がより早期に高い精度で予測可能となったことから、心房細動患者に対する迅速な治療方針の決定と最適な医療の提供に有益な指標となると期待できます。

注)特発性拡張型心筋症(DCM)
TICと異なり明確な原因がなく(特発性)心筋の収縮がうまくいかなくなり、心機能が低下する病気。動悸・息切れ、むくみなどの身体症状があり、利尿剤や血管拡張剤などの薬物療法や、ペースメーカ装着により心筋の収縮を調整する心臓再同期療法などが行われる。予後は悪く、上記治療によっても改善しない場合は補助人工心臓の装着や心臓移植が行われる。

(図1)病態による右心室・左心室の収縮力の分布
頻脈誘発性心筋症(TIC)と特発性拡張型心筋症(DCM)は初期において見分けるのが難しいが、心臓MRIで両心室の収縮力(ポンプ能力)を計測するとTICの場合は右心室の収縮力(ポンプ能力)がDCMに比べ減少していた。
病態による右心室・左心室の収縮力の分布
(図2)病態による右室駆出率/左室駆出率比(RVEF/LVEF)の違い
DCMの場合、症例全体の95%がRVEF/LVEF=1.36±0.31に該当するため、RVEF/LVEF<1.05であれば大多数の症例がTICであると考えられる。
病態による右室駆出率/左室駆出率比(RVEF/LVEF)の違い

最終更新日 2016年09月06日

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