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心臓デバイス周術期における多剤抗血栓療法の是非と出血リスクを検討

平成28年8月16日

国立循環器病研究センター(略称:国循)不整脈科の石橋耕平医師らの研究チームは、ペースメーカ植込術をはじめとする心臓デバイス周術期における多剤抗血栓療法は重大な出血リスクとはならないことを明らかにしました。本研究成果は、専門誌Heart Vesselに2016年7月28日付で掲載されました。

背景

ワーファリンに代表される抗凝固薬を用いた抗血栓療法は、中止すると血栓塞栓症が増加する一方で、心臓デバイス周術期に抗血栓療法を継続すると出血のリスクとなると考えられていました。これに対し、近年単剤抗血栓療法であれば継続しても出血のリスクとはならないことが判明しましたが、多剤抗血栓療法の場合の安全性は不明でした。

研究手法と成果

石橋医師らの研究チームは、当センターで心臓デバイス手術を受けた患者300名を対象に、抗血栓療法を内服していない群、単一薬剤を内服している群と複数の薬剤を内服している群(いずれの群も周術期に薬剤内服は継続)に分けて、それぞれの経過を分析しました。その結果、重大な出血の起こった割合に関して、3群間に有意な差は認められませんでした(図)。また、重大な出血の起こった患者は弁膜症を合併しているか出血リスクスコアが高いことが判明し(表)、これらの要因は心臓デバイス手術で起こる重大な出血における独立した予測因子であると考えられます。

今後の展望

本研究の成果により、抗血栓療法を行う際に複数の薬剤を用いること自体は出血リスクを増大させませんが、弁膜症及び高い出血リスクをもつ場合には治療に注意を要することが明らかになりました。心臓デバイス手術における抗血栓療法の選択肢が広がったため、今後は適切な管理方法の確立が期待されます。

(図)抗血栓療法の方法と重大な出血の関係
No-AT(抗血栓療法なし)、OAT(経口抗凝固剤1剤)、SAPT(抗血小板薬1剤)、OAC+SAPT(経口抗凝固剤1剤と抗血小板薬1剤)、DAPT(抗血小板薬2剤)、TAT(抗血栓薬3剤併用療法)実施後に重大な出血を起こした割合を示す。No-AT、OAT、SAPT、OAC+SAPTで、それぞれ1%、6%、2%、10%重大な出血が起こっているが、DAPTやTATでは出血がなく、総合的には抗血栓療法なしの場合と1剤使用及び多剤使用で出血リスクの差はさほどないといえる。

(表)重大な出血の要因分析
弁膜症(Valvular Heart Disease)や高い出血リスク(HAS-BLED score)において、年齢やBMI、虚血性心疾患(Ischemical Heart Disease)など他の要因よりも心臓デバイス術後の重大な出血割合が高くなっている。


最終更新日 2016年08月16日

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