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心房細動を有する脳梗塞患者への実臨床での抗凝固療法
~SAMURAI-NVAFを含む国際統合解析~

令和元年5月8日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(略称:国循)の豊田一則副院長を研究代表者とする、「非弁膜症性心房細動を有する急性期脳梗塞・TIA患者への抗凝固療法選択と治療成績に関する多施設共同研究(Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement-NonValvular Atrial Fibrillation : SAMURAI-NVAF研究、以下「本研究」)では、海外の同種研究のチームと積極的に交流を進めています。この度、国循脳血管内科の古賀政利部長らの国際チームが本研究を含めた多研究の統合解析を纏めた成果が、米国神経学会 (American Academy of Neurology)機関誌「Annals of Neurology」に平成31年4月13日に電子掲載されました。脳梗塞再発予防の実臨床における直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant: DOAC)とワルファリンとの効果を比べた、興味深い結果となりました。

SAMURAI-NVAF研究の紹介

心房細動が脳梗塞発症の大きな危険因子である(心原性脳塞栓症)ことは、広く知られています。心原性脳塞栓症の発症予防には、血液が固まる作用を抑制する抗凝固薬が使われます。従来からのワルファリンに加えて、2011年以降に国内ではダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンの4つのDOACが、次々と承認されました。本研究では、2011年から2014年にかけて、国内18施設(表1)に急性脳梗塞や一過性脳虚血発作(transient ischemic attack: TIA)で緊急入院し、非弁膜症性心房細動を有した1192例を登録して、2年間の追跡調査を行いました。主解析結果は、国循脳血管内科の吉村壮平医師らによって公表されています(Circ J. 2018;82:1935-1942)。他にも、いろいろな観点から解析したサブ研究を発表しています。

国際統合解析の経緯

非弁膜症性心房細動を有する脳梗塞患者に、DOACやワルファリンがどのような再発予防効果を示すかは、各DOAC開発時の無作為化比較臨床試験のみでは判断し難い点が少なくありません。開発試験は概して条件の整った患者を登録して行うので、たとえば脳梗塞発症後早期からDOACを使えるか、高齢で合併症の多い患者にどう対応するかなどの疑問に応えるためには、実臨床における質の高い観察研究を統合して、検討する必要があります。スイス バーゼル大学脳神経内科のDavid J Seiffge医師の呼びかけに応じて、本研究と欧州での6研究の統合解析を進めました(図1)。

研究の手法と成果

解析対象症例は本研究と同様に非弁膜症性心房細動を有し、脳梗塞やTIAの発症後にDOACまたはワルファリンの内服を開始した4912例(女性47.5%、年齢中央値78歳)で、3ヶ月以上の追跡を行いました。抗凝固薬種類は、患者の担当医師が病状を考慮して決定しました。DOAC服用群(2656例)もワルファリン服用群(2256例)も年齢、性別その他の背景要因は大差なく、またどちらの群も脳梗塞発症の5日後(中央値)という比較的早い時期に内服を始めています。
今回の統合解析では、①脳梗塞再発、②頭蓋内出血、③死亡、およびこの3つのいずれかが起こった場合を評価項目に設定しました。ワルファリン服用患者と比べて、DOAC服用患者では3つのうちいずれかの発症(①+②+③)と頭蓋内出血が有意に少なく、脳梗塞再発と死亡には群間の有意差を認めませんでした(表2図2)。

この研究成果から分かること

脳梗塞実臨床において、発症後早期からのDOAC服用がワルファリンと比べて頭蓋内出血を起こしにくいが脳梗塞再発を必ずしも有意に減らしていないことが、日欧の多数例の解析で示されました。今回の結果は、本研究単独での結果と同様でした。
この国際チームは、今後も各種統合解析を進めてゆきます。日本人を含めた解析結果は、わが国の脳梗塞診療を考える上でも、大きな助けになるでしょう。

※SAMURAI-NVAF研究は厚生労働科学研究費(H23-循環器疾患・糖尿病等(生習)一般-010)により支援されました。

<図表>

(表1)SAMURAI-NVAF研究の参加施設
神戸市立医療センター中央市民病院みやぎ県南中核病院
中村記念病院トヨタ記念病院
広南病院京都第二赤十字病院
杏林大学医学部脳神経センター大田記念病院
聖マリアンナ医科大学熊本赤十字病院
NHO名古屋医療センターNHO鹿児島医療センター
川崎医科大学東海大学医学部
NHO九州医療センター北里大学医学部
自治医科大学国立循環器病研究センター

(図1)統合解析の患者構成



(表2)イベント発症の比較
DOAC群
2656例
ワルファリン群
2256例
ハザード比
(95%信頼区間)
下記3項目のうちいずれかの発症 11.0 %/y 15.1 %/y 0.82 (0.66 - 1.00)
脳梗塞再発 4.4 %/y 4.2 %/y 0.91 (0.70 - 1.19)
頭蓋内出血 0.9 %/y 1.6 %/y 0.42 (0.24 - 0.71)
死亡 6.3 %/y 10.8 %/y 0.83 (0.68 - 1.03)
性別、年齢、NIHSS値、脳梗塞/TIA既往(登録時脳梗塞/TIAを除く)、頭蓋内出血既往、糖尿病、高血圧、喫煙、血栓溶解療法で補正

(図2)統合解析の患者構成


最終更新日 2019年05月08日

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