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心エコー図検査による無症候性僧帽弁逆流症の簡便な予後予測指標を発見

平成30年12月14日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(略称:国循)心不全科の岡本千聡医師、岡田厚医師、泉知里部長らの研究チームは、無症状で心機能の保たれた僧帽弁逆流症(器質性)患者における、心エコー図検査を用いた新たな予後予測指標を発見しました。本研究成果は「Heart」オンライン版に2018年10月20日に掲載されました。

背景

高齢化の進展により弁膜症患者数は増加しており、中でも僧帽弁逆流症は最もよくみられる弁膜症の一つです。弁膜症を発症しても長期間無症状であることも多く、これまでは心機能が低下したり心房細動や肺高血圧症などの合併症が生じたりした場合に、手術を検討していました。しかし最近になり弁形成術の成績向上や低侵襲化を背景に、症状が出る前の早期手術を勧める報告も相次いでいる一方で、どのような症例に早期手術を選択とすべきか現在も十分には解明されていません。

研究手法と成果

研究チームは、国循で2012年から2015年までに心エコー図検査を実施した僧帽弁逆流症患者1,312名のうち、無症状の器質性僧帽弁逆流症患者188名について僧帽弁通過血流速度(注1)と予後の関係について解析しました。その結果、僧帽弁通過血流速度のE波(図1)が大きい患者ほど、心血管死やうっ血性心不全、左室機能低下、心房細動、肺高血圧症などの心血管イベントを有意に多く発症することが明らかになりました(図2)。

今後の展望・課題

E波の測定は、他の心エコーによる逆流の評価法と比べて、より簡便かつ測定者間での誤差が非常に少ないため、今後、適切な治療時期や治療法を検討するに当たり、広く活用できる指標となると考えられます。2018年4月よりわが国でも僧帽弁逆流症に対するカテーテル治療「MitraClip®」が保険償還されており、今後「MitraClip®」も含めた僧帽弁逆流症の治療指針となる弁膜症治療ガイドライン策定等にも役立つことが期待されます。


<注釈>

(注1)僧帽弁通過血流速度

左心房から左心室に向かって僧帽弁を通過する血流のスピード。心エコー図検査で「パルスドプラ法」を用いて計測したものが左室流入血流波形で(図1)、非常に簡便性の高いエコー指標である。E波は、僧帽弁逆流症の患者では大きくなるということは知られていたが、予後予測因子として使えるかどうかの検証は行われていなかった。

<図表>

(図1)心エコー図検査による僧帽弁通過血流速度のE波の大きさ


(図2)E波の大きさと予後の関係

最終更新日 2018年12月14日

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