国立循環器病研究センター

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広報活動

体外設置型連続流補助人工心臓システム「BR16010」を用いた重症心不全患者に対する補助循環法の安全性及び有効性に関する単施設単一群治験(NCVC-BTD_01)患者登録・試験終了の報告

平成30年6月14日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(略称:国循)移植医療部の福嶌教偉部長と人工臓器部の巽英介部長らの研究チームは、世界に先駆けて国循とニプロ(株)とで共同開発した、「体外設置型連続流補助人工心臓システムBR16010(図1)」を用いた重症心不全患者に対する補助循環(NCVC-BTD_01)のfirst in human試験()を平成29年10月1日から医師主導治験として単独の施設で開始しました。10月6日に第1例目を登録、補助人工心臓(VAD)装着した後、2018年5月2日に全患者の観察期間を終了しましたので、ご報告いたします。

※今後薬事承認・実用化に向けた審査があるため、概略のみのご報告となります。

これまでの経緯

現在、患者が重症心不全のためにショックに陥った場合には複数の治療法がありますが、いずれの方法にも血栓性合併症や流量不足などの問題があります。

このため、国循では血栓ができにくく、30日間の使用に耐えるような遠心型血液ポンプ(図2)と送血・脱血カニューレ、回路チューブを組み合わせたBR16010を開発し、医師主導治験を実施しました。BR16010の血液ポンプは、国循人工臓器部が新たに開発した動圧浮上方式非接触回転型というタイプで、体外設置型の遠心型血液ポンプとしては世界初かつ唯一のものとなります。

結果概要と今後の展望

本治験では、従来の治療(薬物療法、外科的療法、不整脈治療、機械的補助循環法)では十分な効果が得られない重症心不全または心原性ショックの患者を対象にBR16010を用いて最長30日間の循環補助を行いました。対象症例数は9例で、循環補助中に自己心の機能が回復すれば30日経過前でもBR16010を外し(離脱)、自己心の回復が見られず心臓移植の適応と判断された場合には植込み型補助人工心臓に移行する計画でした。

BR16010装着時平均年齢47.4±8.0歳(うち男性5人)、原疾患は拡張型心筋症3例、虚血性心筋症3例、劇症型心筋症3例で、全例で何らかの機械的補助循環装置が装着されていました。平均補助期間は19.0±14.1日で死亡例はなく、6例で心臓移植の登録をして植込み型VADに移行し、3例で心機能が回復してBR16010から離脱しました。

今後、本治験データをもとに重症心不全に対する高度管理医療機器としての薬事承認を早ければ年内に申請し、2019年末までに認可されることを期待しています。


参考資料

図1.治験機器の概略図 (左心補助の場合)

左心室に脱血管、上行大動脈に送血管を挿入し、左心室内の血液を抜いた血液を、遠心型血液ポンプ(血液充填量16ml、重量33g)で、上行大動脈に送る装置。駆動装置のモーター部の重さ約1kg、大きさ77(L)×60(φ)×70(H)、コンソール部の重さ8kg, 大きさ 210(W)× 350(D) ×326(H)です。回路、ポンプの内面にはT-NCVCコーティングが施されていて、血栓ができにくく工夫されています。


図2.本機器の遠心型血液ポンプ(バイオフロート遠心ポンプ)の仕組み

本システムの血液ポンプは、新たに開発された動圧浮上方式非接触回転型というタイプで、体外設置型の遠心型血液ポンプとしては世界初かつ唯一のものとなります。羽根車が血液ポンプ内で周囲に接触せずに回転するため、赤血球・血小板などの血球成分を傷害しないので、血栓ができたり、溶血(赤血球が壊れて、血球の内容物が血液内に溶け出すこと)したりすることが少ない構造になっています。3000 rpm以上で使用し、7000 rpmまで駆動可能で、最大9 L/minで血液を送りことができます。ポンプの内面は、T-NCVCコーティングされていていることも、血栓ができにくい理由です。

(注)first in human 試験

初めて人体に医薬品や医療機器を投与してその有用性や安全性を確認する試験。

最終更新日 2018年06月14日

最終更新日:2021年09月26日

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