ホーム > 広報活動 > プレスリリース > 新規経口抗凝固薬時代における急性期脳梗塞患者への治療動向~SAMURAI-NVAF研究~

新規経口抗凝固薬時代における急性期脳梗塞患者への治療動向~SAMURAI-NVAF研究~

平成27年1月13日

 国立循環器病研究センター(略称:国循)脳血管内科の豊田一則部門長を研究代表者とする、国内18施設の合同研究チームによる前向き観察研究、SAMURAI-NVAF研究(Stroke Acute Management with Urgent Risk-factor Assessment and Improvement-NonValvular Atrial Fibrillation研究)からの第一報として、非弁膜症性心房細動を有した急性期脳梗塞患者における近年の国内での抗凝固療法の現状が報告され、多くの興味深い治療動向が明らかにされました。本研究の成果は、世界脳卒中機構(World Stroke Organization)の機関誌「International Journal of Stroke」オンライン版に平成27年1月12日午後3時(日本時間)に掲載予定です。

 心房細動が脳梗塞発症の大きな危険因子であることは、広く知られています。その予防薬として、半世紀にわたってワルファリンがほぼ唯一の選択肢であり、私たちは魅力(脳梗塞発症の強い抑制)も多いが危険(出血合併症)も多いこの薬の扱いに、ずいぶん手こずってきました。ワルファリンに替わる新たな抗凝固薬(血液が固まる作用を抑制する薬)として、2011年に直接トロンビン阻害薬のダビガトランが非弁膜症性心房細動患者へ国内承認されたのを皮切りに、翌2012年には活性化凝固第X因子阻害薬のリバーロキサバン、2013年にはアピキサバン、2014年にはエドキサバンが使用可能となり、しかもこれら新規の経口抗凝固薬は心房細動患者に対してワルファリンと比べて概して同等以上の安全性と有効性を示すことが、大規模な国際臨床試験で報告されました。これら新薬は海外とのいわゆるドラッグラグがなく承認されたので、急に増えた選択肢にどう対応するか、わが国のリアルワールドでの情報が求められています。SAMURAI-NVAF研究はこのような現場の要望に応えるべく、始まった研究です。

 本研究では、ダビガトランの販売が始まってから半年後の2011年9月から2014年3月までの31か月間に、18施設に急性脳梗塞や一過性脳虚血発作で緊急入院し、しかも非弁膜症性心房細動を有していた1192例を登録しました。図1に、院内死亡例を除く1165例の急性期病院退院時の抗凝固薬の選択内容を示します。ワルファリン服用者が依然として過半数を占めていますが、年を追うごとに新規抗凝固薬の服用割合が増えていることが分かります。また自立して退院できる患者に限れば新規抗凝固薬の割合が6割近くに達し、逆にベッドから離床できない重症の患者ではワルファリンが8割近くを占めています。重症脳梗塞患者には嚥下困難例が多くて未粉砕薬を服用し難いこと、脳梗塞発症に伴う経済的制約で高額な新薬を選び難いこと、また回復期・療養型施設の一部で新規薬が使えないことなど、脳梗塞患者に特有の事情が、これらの結果に反映されていると考えます。

 新規経口抗凝固薬を、脳梗塞発症の何日後から使い始めるべきかも、実はまだ分かっていません。大規模な国際臨床試験の登録基準から、発症後早期の脳梗塞患者は除外されています。本研究で新規薬を選んだ患者では、一過性脳虚血発作患者で発症2日後(中央値)、軽症脳梗塞で3日後、中等症で4日後、重症脳梗塞で5日後と、国内では発症後の相当に早い時期から新規薬の服用が始まっていることが分かります(図2)。しかし、これらの患者のうち急性期病院入院中に重大な出血合併症を起こした患者はわずか1例(消化管出血)で、抗凝固薬に不可避と考えられてきた頭蓋内出血が急性期には1例も起こりませんでした。新規経口抗凝固薬は、脳梗塞急性期から使い易い薬と言えそうです。

 この他にも、発症前抗凝固療法の違いによる発症後薬剤選択の差異や、薬剤選択が在院日数に及ぼす影響などを、報告しました。

 SAMURAI-NVAF研究に登録された患者は、2年間の追跡を行い、その間の脳梗塞・全身塞栓症や出血合併症の発症状況を今後調べてゆく予定です。このうち治療開始3か月後までの合併症発症について、来月米国Nashvilleで開催されるInternational Stroke Conferenceで発表予定です。

 本研究は厚生労働科学研究費(H23-循環器疾患・糖尿病等(生習)一般-010)により支援されました。

(図1)急性期脳梗塞患者の退院時抗凝固療法の選択
上段:全116例での検討 円グラフは全期間を通じての薬剤服用の割合、棒グラフは10か月毎に区切った服用割合の経時変化を表す。
下段:退院時自立患者(modified Rankin Scale 0-2)と退院時離床困難患者(同スコア5)にける服用の割合。

(図2)脳梗塞の重症度別に見た脳梗塞発症後に新規抗凝固薬を始めるまでの日数

(図3)SAMURAI-MVAF研究の参加施設

最終更新日 2015年01月13日

ページ上部へ