国立循環器病研究センター

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再灌流療法の発達とともに心破裂減少が明らかに~急性心筋梗塞の致命的合併症抑制によるさらなる救命率向上を目指す~

平成26年10月28日

国立循環器病研究センター(略称:国循)冠疾患科の本田怜史医師、浅海泰栄医長、安田聡心臓血管内科部門長らの研究チームは、当センターで蓄積した35年以上のデータベースより、急性心筋梗塞症の致命的合併症である心破裂が詰まった冠動脈の血流を再開させる「再灌流療法」の発達とともに減少していることを明らかにしました。本研究成果は、専門誌「Journal of American Heart Association」に10月21日(日本時間)付で掲載されました。

急性心筋梗塞症の入院中(超急性期)における死亡につながる大きな合併症の一つとして 心臓破裂の発生があります。これは冠動脈が動脈硬化・血栓により閉塞した結果、心筋組織が壊死を起こし脆弱となることにより生じます。急性心筋梗塞症の診療は、カテーテルによる冠動脈血行再建療法により大きく進歩しました。しかしこれまで致命的合併症である心破裂発生頻度の変遷に関する報告はありませんでした。

本田医師らの研究チームは今回、1977年の開設当初から2011年までの35年間に当センターに入院した急性心筋梗塞総計5699例のデータベースを解析するとともに、解剖症例の心臓組織変化を検証しました。その結果、
(1)心破裂の発症頻度は経年的に減少していることが明らかになりました(図1左)。
(2)再灌流療法の普及、特に経皮的冠動脈カテーテルインターベンション(Primary PCI) による冠血行再建術の発達が心破裂減少に寄与していることが示唆されました(図1右)。
(3)心破裂を起こした解剖症例の検証を行なった結果(図2)、再灌流療法が行われずに心破裂を起こした症例の筋壁は血管途絶の結果、薄くなり貧血様所見を呈していました(Becker 3型)。一方で再灌流療法が行われた心臓においては、梗塞部位の心臓壁厚は保持されているものの心筋内出血が認められました(Becker 1-2型)。すなわち、心筋出血など再灌流に伴う傷害が加わり以前とは異なる病態を呈しているものと推定されました。

本研究の結果から、急性心筋梗塞症に対して再灌流療法が行われるようになった結果心破裂発症頻度が減少したことが明らかになりました(図3)。しかし心破裂は依然として致命的な合併症であることから、今後は再灌流障害に伴う心筋出血を抑制する心筋保護的な治療法の開発が救命率の更なる向上につながるものと思われます。

(図1)急性心筋梗塞(AMI)患者に対する早期再灌流療法の増加と心破裂頻度の減少

35年間でAMI患者の心破裂頻度は1.5%程度減少し、再灌流療法(特にPCI)の頻度は急増した。

(図2)急性心筋梗塞後心破裂を起こした際の病理組織所見像

再灌流療法をしていない場合(C)は梗塞部位の心壁が薄くなっている。一方、再灌流療法がされた場合(A,B)は梗塞部位の心壁は厚いままだが心筋内出血が見られた。

(図3)本研究のまとめ

最終更新日 2014年10月28日

最終更新日:2021年09月28日

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