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PCSK9が、LDLアフェレシス治療により除去されることを発見

平成26年10月20日

国立循環器病研究センター(略称:国循)病態代謝部の斯波真理子部長、堀美香研究員らは、(株)ビー・エム・エルとの共同研究で、「成熟型PCSK9」と「切断型PCSK9」の測定系の開発に成功しました。また、この測定法を用いて、家族性高コレステロール血症(FH)の治療法の1つであるLDLアフェレシス(注1)治療によって、「成熟型PCSK9」と「切断型PCSK9」のいずれもが除去されることを発見しました。この成果は専門誌「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」オンライン版に10月15日付で掲載されました。

PCSK9は血中から細胞内へLDLコレステロールを取り込む働きをもつLDL受容体と結合し分解を促すことで血中LDLコレステロール値を上昇させることが知られています。そのため、PCSK9は新しい治療薬のターゲット分子として注目されており、モノクローナル抗体医薬を始めとしたPCSK9阻害療法の開発が世界中で進行しています。
PCSK9は血中ではLDL受容体分解活性を有する「成熟型PCSK9」と細胞内の酵素により切断され、活性の低い「切断型PCSK9」として存在することがわかっていますが、これまでこの両者を分けて測定することができず、またこの両者が存在する臨床的意義も分かっていませんでした。

斯波部長らのチームは、「成熟型PCSK9」と「切断型PCSK9」を分けて測定できる新しいELISA法(注2)の開発に成功しました。さらに、FHホモ接合体(注3)患者7名とヘテロ接合体(注4)患者11名において、新ELISA法を用いて、LDL吸着法及び二重膜濾過法によるアフェレシス前後の成熟型及び切断型PCSK9値を測定しました。その結果、成熟型及び切断型PCSK9は、LDL吸着法ではFHホモ接合体で55~56%、ヘテロ接合体で46~48%除去、二重膜濾過法ではヘテロ接合体で同様の除去効果を得ることができました(図)。次に、LDLアフェレシスによるLDL除去メカニズムを明らかにするための実験を行い、少なくともPCSK9の一部は、LDLと一緒に除去されていることがわかりました。

成熟型及び切断型のPCSK9が分けて測定できるようになり、これらの生体内における意義、高脂血症における意義を明らかにすることができるようになりました。また、LDLアフェレシス治療において、いずれの型のPCSK9も除去されると証明されたことは、今後この治療の効果や意義を明らかにする上で重要です。

【用語解説】
(注1)LDLアフェレシス
FHホモ接合体や、重症ヘテロ接合体に対して行われている透析に似た治療法で、LDLを吸着して除去するLDL吸着法と分子の大きさの違いを利用してLDLを除去する二重膜濾過法の2種類があります。

(注2)ELISA法
免疫学的手法により、試料中に含まれる蛋白質の濃度を測定する方法です。

(注3)FHホモ接合体
高コレステロール血症の素因を両親から受け継いだ患者さんのことで、通常、総コレステロール値450以上です。薬剤はほとんど無効ですので、LDLアフェレシス治療が必要です。

(注4)FHヘテロ接合体
高コレステロール血症の素因を片方の親から受け継いだ患者さんで、ホモ接合体に比べて血清総コレステロール値は低く、薬剤の効果がある程度期待できます。薬剤の効果が少ない場合、LDLアフェレシス治療が必要になることもあります。


本研究は下記により支援されました。
・厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等克服研究事業)原発性高脂血症に関する調査研究 H23-難治-一般-011 ・厚生労働科学研究費補助金(創薬基盤推進研究事業)アポC3をターゲットとした高中性脂肪血症、動脈硬化症に対する革新的核酸医薬の開発 H23-政策探索-一般-004 ・循環器病開発費「心血管疾患関連蛋白質の病態生理的意義の解明とその診断・治療への応用」(25-2-5)
本研究は以下の特許を出願中です。

【発行国】 日本国特許庁(JP)
【公報種別】 公開特許公報(A)
【公開番号】 特許公開2012-237752
【公開日】 平成24年12月6日(2012.12.6)
【発明の名称】 高コレステロール血症と動脈硬化の検出方法
【発明者】 斯波真理子(国立循環器病研究センター研究所)、石原光昭(株式会社ビー・エム・エル)、岩崎忠雄(株式会社ビー・エム・エル)、鯨岡 健(株式会社ビー・エム・エル)、小川一行(株式会社ビー・エム・エル)、服部浩明(株式会社ビー・エム・エル)
【共同特許出願人】 国立循環器病研究センター、株式会社ビー・エム・エル

※この報道資料は、大阪科学・大学記者クラブの皆様にお届けしています。

最終更新日 2014年10月21日

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