国立循環器病研究センター

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科学技術振興機構が「羊膜由来間葉系幹細胞の細胞製剤化と治療応用」を産学共同実用化開発事業に採択

平成26年9月9日

独立行政法人国立循環器病研究センター(吹田市、理事長:橋本 信夫)、及び株式会社カネカ(本社:大阪市、社長:角倉 護)は、共同で応募していましたプロジェクト(羊膜由来間葉系幹細胞(以下、羊膜由来MSC)*1の細胞製剤化と治療応用)が独立行政法人科学技術振興機構(以下、JST)の産学共同実用化開発事業(以下、NexTEP)*2に採択され、再生・細胞医療関連事業の拡大に向けて、2014年7月1日より共同で開発事業を開始しました。

*1 羊膜由来間葉系幹細胞(羊膜由来MSC)
羊膜に存在する未分化の細胞。筋肉、骨、軟骨、脂肪など間葉系に属するさまざま細胞に分化する能力や自己複製の能力を持ち、免疫抑制作用がある。

*2 産学共同実用化開発事業(NexTEP)
大学などで生まれた実用化が困難なシーズ特許を用いた開発について、JSTが開発実施企業に開発費を支出して開発委託する事業。

羊膜由来MSCは生体内にある幹細胞の中でも①増殖性が高い、②拒絶反応が起こりにくいため他人に移植しやすい、③羊膜は出産後不要となり倫理的にも問題となりにくい、といった特長があります。この羊膜由来MSCを分離する方法及び複数の難治性疾患を治療することができる可能性が、再生医療部 山原研一 室長の研究により見出されました。そこで共同事業者である株式会社カネカより、この羊膜由来MSCを使用し、急性移植片対宿主病(以下、急性GVHD)*3、およびクローン病*4を対象とした企業治験を、公益財団法人先端医療振興財団(神戸市、理事長:井村 裕夫)、兵庫医科大学(西宮市、理事長:新家 荘平)、および北海道大学(札幌市、総長:山口 佳三)を始めとした国内医療機関・研究機関において実施し、同社による細胞製剤(再生医療等製品)としての製造販売承認取得を目指します。

*3 急性移植片対宿主病(急性GVHD)
骨髄移植など造血幹細胞移植における重篤な副作用であり、難治性免疫関連疾患の一種。移植した細胞(移植片)に含まれるリンパ球が患者(宿主)を攻撃し、紅斑、肝障害、下血などを引き起こす。日本では、年間3,000例以上の造血幹細胞移植が行われており、そのうち50%以上の確率で急性GVHDが発症している。

*4 クローン病
主に小腸や大腸に炎症もしくは潰瘍を引き起こす、若年者に多く発症する原因不明の炎症性腸疾患。日本におけるクローン病患者数は年々増加しており、現在3万人以上が認定されている。

具体的には、

①共同事業者である株式会社カネカが、厚生労働省の品質保証の基準に準拠した細胞の調製および保存が可能な製造所を、神戸国際ビジネスセンター(神戸市)内に設置するにあたり、立ち上げのために国立循環器病研究センターより技術支援・技術移転を行うこと

②同社との共同研究により、羊膜由来MSCの大量培養・凍結保存技術(細胞バンク化技術)を確立

③同社による急性GVHD、およびクローン病を対象とした治験への協力を行う。

④同社により、2022年に羊膜由来MSCの細胞製剤の製造販売承認取得
を目指します。

本事業については、急性GVHD、およびクローン病への適応を皮切りに、羊膜由来MSCの細胞製剤をさまざまな難治性疾患の治療に展開を予定しており、2037年には1,000億円規模の市場となるものと期待しております。

※この報道資料は、大阪科学・大学記者クラブ、その他の報道関係の皆様にお届けしています。

最終更新日 2014年09月24日

最終更新日:2021年09月28日

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