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治療開始時間、年齢、脳梗塞重症度が血栓溶解療法(rt-PA静注療法)に及ぼす影響を、国際試験の統合解析から解明

平成26年8月6日

国立循環器病研究センター(国循)脳血管内科の豊田一則部長、古賀政利医長を含めた、脳梗塞血栓溶解療法の国際共同研究グループ(Stroke Thrombolysis Trialists' Collaborative Group)が、超急性期脳梗塞患者に対して施行された1990年代以降の静注血栓溶解療法無作為化臨床試験の成績を統合して解析しました。その結果、現在わが国でも承認されている発症後4.5時間以内の治療開始が、年齢や脳梗塞重症度に関わらず転帰良好者の割合を高め、4.5時間以内であってもより早い治療開始がさらに治療効果を高めることを、多数例の解析結果として示しました。本研究の成果は、医学雑誌「Lancet」のオンライン版に、平成26年8月6日付で、発表される予定です。

遺伝子組み換えによる組織型プラスミノゲン・アクティベータ(recombinant tissue-type plasminogen activator, rt-PA:一般名アルテプラーゼ)を用いた超急性期脳梗塞への静注血栓溶解療法は、わが国では発症後4.5時間以内の脳梗塞患者に対して、年齢や重症度による制限なく(ただし高齢者や重症脳梗塞例には、慎重な適応判断が必要)行うことが出来ます。しかしながら、米国などでは発症後3時間を過ぎると保険適応外となり、また欧州などでは80歳を超える高齢者や重症脳梗塞例に使用が制限されています。逆に、軽症の脳梗塞患者への治療効果も、確立していません。そこで、本研究では、とくに発症後の治療開始時間、年齢、脳梗塞重症度に重点を置いて、国際的に有名な9つの静注血栓溶解療法無作為化臨床試験の統合解析を行いました。

今回解析に用いられた試験は、NINDS A, NINDS B, ECASS I, ECASS II, ECASS III, ATLANTIS A, ATLANTIS B, EPITHET, IST-3です。主要評価項目を、発症3か月後(一部試験では6か月後)の転帰良好とし、脳卒中患者の自立度を測るmodified Rankin Scale (mRS) (一部試験ではOxford Handicap Scale を使用)での0ないし1に当たる、完全自立の状態であることと定義しました。また主な副次評価項目に、発症後7日以内の致死的頭蓋内出血や、90日後の死亡率を選びました。
発症後3時間以内の治療開始例では、転帰良好が血栓溶解治療群で32.9%、対照群で23.1%(オッズ比 1.75、95% 信頼区間 1.35窶・.27)、3~4.5時間の治療開始例では各々35.3%、30.1%(オッズ比1.26、95% 信頼区間 1.05窶・.51)と治療群で有意に転帰良好の割合が高く、4.5時間以降では各々32.6%、30.6%(オッズ比1.15、95% 信頼区間 0.95窶・.40)で有意差を認めませんでした。また年齢が80歳を超える群も、80歳未満の群も、血栓溶解治療群で有意に転帰良好の割合が高く、同様にNIH Stroke Scaleという神経所見重症度の尺度で4以下の軽症例や22以上の重症例でも、血栓溶解治療群で有意に転帰良好の割合が高いことが分かりました。発症後7日以内の致死的頭蓋内出血は、発症後の治療開始時間、年齢、脳梗塞重症度のいずれにもかかわらず、血栓溶解治療群で有意に高い割合を示しました。90日後の死亡率は、血栓溶解治療群で17.9%、対照群で16.5%(オッズ比 1. 11、95% 信頼区間 0.99窶・.25)と群間差を示しませんでした。

上記の研究結果は、各国での静注血栓溶解療法の適応を再考する契機となり得ます。またわが国の適正治療指針の妥当性を示す根拠ともなりました。今後、同じ研究グループで、さらに解析を進めてゆく予定です。


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最終更新日 2014年08月06日

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