ホーム > 広報活動 > プレスリリース > 循環器病予防のための危険因子管理 社会全体のサポートが必要(地域糖尿病調査)

循環器病予防のための危険因子管理 社会全体のサポートが必要(地域糖尿病調査)

平成26年7月10日

国立循環器病研究センター(略称:国循)糖尿病・代謝内科の岸本一郎医長と豊能医療圏糖尿病クリティカルパス検討会議、豊能圏薬剤師会の研究グループは、地域の糖尿病患者の糖尿病に関する知識や療養行動を把握する目的で、糖尿病実態調査を行いました。この結果、医療者の治療努力と治療薬の進歩にも関わらず、循環器病予防のための危険因子である血糖・血圧・コレステロールが推奨通りに管理できにくい患者群が存在する現状が、地域で明らかとなりました。本研究は、日本糖尿病学会英文誌Diabetology Internationalオンライン版に平成26年6月29日付けで発表されました。

・調査概要
豊能圏域の保険薬局で糖尿病実態調査をしたところ、十分な薬物治療によっても血糖、血圧、コレステロール管理が推奨値を上回っている患者群の存在が、うかがわれました。

・結果
血糖管理指標が高値(HbA1c8%以上)の糖尿病患者さんでは、血糖値のみならず血圧や脂質管理も不十分である傾向にあり、未管理リスクの集積により循環器疾患発症の可能性が高まっていることが示されました。こられの患者群は、比較的低年齢にもかかわらず罹病期間が長く、50歳以前に発症していると考えられました。
この背景には、これらの年代では、①生活習慣改善が不十分である、②通院や内服が不規則である、③入院治療の時間が取れない、④経済的負担が大きい、等の状況があります。米国でも高齢者と比較して若年の成人糖尿病患者では危険因子管理が不十分であることが報告されており(N Engl J Med 368:1613-1624)、早期からの危険因子包括管理の重要性を鑑みるとこの点においてさらに研究と対策が必要であると結論されています。実際、仕事や家事をしながらの療養行動は大幅に制約を受ける事実があり、医療機関のみならず、家族、地域社会、企業、行政、保険者、教育機関を含めた社会全体での一体的な取り組みを継続することが重要と考えられます。

・結論
早期から危険因子包括管理に向けて社会全体でサポートすることが重要と考えられました。

・調査の詳細
糖尿病診療において、心筋梗塞や脳卒中等の血管合併症発症・進展に関わる危険因子群の包括管理が求められており、血糖、血圧、LDL(悪玉)コレステロールの良好なコントロールはその基盤となります。今回、豊能2次医療圏の保険薬局に院外処方箋を持参した糖尿病患者を対象に各危険因子の把握度・管理度をアンケート調査しました。
調査の時期は平成25年2月~4月の3ヶ月間で、調査の対象は池田市・箕面市・豊中市・吹田市の薬剤師会会員薬局に糖尿病薬の処方箋を持参された患者のうち、協力が得られた方(平均67.6歳(16~97歳))です。1,144人に依頼して262人が無回答でした。残り882枚のうち(有効回答855枚)それぞれの項目に回答した方を対象に解析しました。
平均年齢は67.7歳、男女比は男性が58%、女性が42%で、糖尿病治療期間の中央値は8年、血糖管理指標であるHbA1cの平均値は7.1% (n=427)、収縮期血圧の平均値は132 mmHg (n=809)、LDL(悪玉)コレステロールの平均値は119 mg/dL (n=439)でした。
年齢、治療期間の4分位別に、治療強化が困難な際の目標であるHbA1c 8%未満を満たしている割合を検討したところ、年齢61歳以下の群および治療期間15年以上の群で有意に少ない結果でした(図1参照)。また、HbA1cが高いと収縮期血圧が高く、さらに、HbA1c 8.0%以上の高値群で平均LDLコレステロール値が120 mg/dlを超えており、未管理リスクの集積が認められました(図2参照)。本研究は、医療者の治療努力にもかかわらず危険因子管理の不十分な糖尿病患者群の存在を明らかにしたものであり、地域糖尿病診療においてさらに研究を進め、社会全体で効果的な対策を講じる必要性が示唆されています。


(図1)


図1 年齢カテゴリー別HbA1c未管理(8%以上)群の割合(左)、治療年数カテゴリー別HbA1c未管理(8%以上)群の割合(右)

年齢61歳以下、62歳から67歳、68歳から73歳、74歳以上の各群において、HbA1cが8%以上の未管理群の割合は、39%, 20%, 16%, 11%でした。61歳以下でHbA1c未管理群が多い結果でした(図1左)。また、糖尿病治療期間カテゴリー別解析では、治療期間3年未満、3-7年、8-14年、15年以上で、HbA1c未管理群の割合は、それぞれ、13%、16%、24%、31%であり、治療期間が長くなるほどHbA1c 8%以上の割合が有意に増加していました(図1右)。

(図2)

図2 HbA1cカテゴリー別 収縮期血圧値(左)、LDLコレステロール値(右)

HbA1c 5.9%以下、6%以上7%未満、7%以上8%未満、8%以上の各群において、収縮期血圧の平均は127 mmHg, 130 mmHg, 131 mmHg, 133 mmHgであり、HbA1cが高いと血圧も高くなっており、HbA1c 7%以上からガイドライン推奨値である130 mmHgを超えていました(図2左)。さらにLDLコレステロールは、121 mg/dL, 116 mg/dL, 116 mg/dL, 123 mg/dLと全体では有意な相関傾向を認めませんでしたが、HbA1c 8%以上の高値群で平均LDL値がガイドライン推奨値である120 mg/dLを超えていました(図2右)。

※この報道資料は、大阪科学・大学記者クラブの皆様にお届けしています。

【報道機関からの問い合わせ先】
国立循環器病研究センター
(代表)06-6833-5012  (夜間・休日) 06-6833-5015
総務課広報係(内線2116) 辰己・中野

最終更新日 2014年07月11日

ページ上部へ