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15年にわたる研究の成果から摂食ホルモンの心臓病治療薬としての可能性を提唱し、臨床研究を開始した。

平成26年7月9日

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:橋本信夫、略称:国循)糖尿病・代謝内科の岸本一郎医長と研究所生化学部の徳留健室長らの研究グループは、循環器病研究センターからの26本を含む国内外の85本の論文をまとめてグレリンが心臓を保護する作用とその機序の全体像を明らかにし、胃がホルモンを出して心臓を保護しているという考え方を発表しました。また、この作用を応用して心臓病の治療薬として臨床開発できる可能性を提唱し、現在、グレリンのヒトへの作用を確かめる臨床研究を開始しています。本総説は、平成24年6月23日付けでHypertension誌オンライン版(Hypertension. 2014 Jun 23. pii: HYPERTENSIONAHA.114.03726.)に発表されました。

現在までの当センターを中心とした基礎的・臨床的検討により、投与したグレリンの自律神経への作用が迷走神経を活性化し交感神経を抑制することにより心臓を保護する作用が示されています。モデル動物を使用した研究では、心筋梗塞の直後または2時間後にグレリンを単回皮下注射することで、急性期の致死性不整脈が減少し急性期死亡が明らかに抑制されることがわかりました(Endocrinology 2008;149:5172-6)。このグレリンの効果は顕著な心臓交感神経活性抑制を伴っており、グレリン投与が心臓自律神経障害を改善して予後を良くすることが示唆されています。実際、健常人や心不全患者に投与したグレリンは交感神経活性の指標である血中ノルエピネフリン濃度を有意に抑制します。また、心不全ラットへのグレリンの慢性皮下投与で左心不全が改善しました。さらに、ヒトにおける投与でもグレリンは重度心不全により生じる悪液質(カヘキシア)を改善したことから、グレリンの慢性投与が重症の心不全に対する新しい治療的アプローチとなり得ると考えられます。加えて最近の研究では、グレリンの働きを無くした動物では自律神経の異常興奮が起こり、心臓病が重症になることをつきとめました(Endocrinology. 2013;154:1854-63.)。さらにグレリンは皮下投与でも効果的であることも明らかにしました(Endocrinology. 2012;153:2436-43)。これらの結果より、グレリンの投与は自律神経の異常を改善して心臓を良くする可能性が示唆されており、当センターではその臨床効果を科学的に検討する目的で、倫理委員会の承認の下で「糖尿病心臓自律神経障害に対するグレリン皮下単回投与の有効性及び安全性を評価する二重盲検クロスオーバー比較試験」を開始しています。

※この報道資料は、大阪科学・大学記者クラブの皆様にお届けしています。

【報道機関からの問い合わせ先】
国立循環器病研究センター
(代表)06-6833-5012  (夜間・休日) 06-6833-5015
総務課広報係(内線2116) 辰己・中野

■グレリンについて
グレリンは、当センターで発見された成長ホルモン分泌刺激作用を持つ内因性ホルモンです(Nature 402: 656-660, 1999)。グレリンは主として胃内分泌細胞で産生され、摂食亢進や体重増加、消化管機能調節などエネルギー代謝調節に重要な作用を持ち、今まで知られている中で唯一の末梢で産生される摂食促進ペプチドです(Nature 409: 194-198, 2001)。胃から分泌されるグレリンの情報は、迷走神経求心路を介して摂食や成長ホルモン分泌調節の中枢である視床下部に伝達され、これらの促進作用を発現すると考えられています。グレリンの発見により胃が消化機能だけでなくエネルギー代謝や成長ホルモンの分泌調節にも機能していることが明らかになり、肥満や摂食障害などの病因や病態における意義も解明されつつあります。

最終更新日 2014年07月09日

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