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急性心筋梗塞後の心破裂防止における樹状細胞の役割をヒトで解明

平成26年6月4日

国立循環器病研究センター(略称:国循)心臓血管内科部門の永井利幸医師、安斉俊久部長、臨床病理科の池田善彦医長、植田初江部長らの合同研究チームは、心筋梗塞後の梗塞組織への樹状細胞浸潤が心筋梗塞後の梗塞組織治癒過程の促進と関連し、心筋梗塞後の重大な合併症である心破裂に対して保護的役割を果たしている可能性を初めて明らかにしました。本研究の成果はJournal of American Heart Associationのオンライン版に平成26年6月4日(日本時間)に掲載されました。

心臓血管内科部門の安斉部長らは、ラットを用いた基礎研究により免疫応答の司令塔と言われている骨髄由来の樹状細胞が心筋梗塞後の心筋組織に浸潤することを世界に先駆けて2008年に報告しました。また、浸潤した樹状細胞の役割を解明するため、2012年には樹状細胞を選択的に除去したマウスモデルを開発し、心筋組織内に浸潤した樹状細胞が心筋梗塞後の組織治癒過程に悪影響を与える過剰な炎症を抑制するとともに心不全の発症を抑制することを報告しました。しかしながら、心筋梗塞組織への樹状細胞浸潤のヒトにおける役割に関しては明らかになっていませんでした。

本研究では、急性心筋梗塞で当センターに入院し、院内死亡により剖検が施行された24症例(心破裂で死亡:13症例、不整脈や心不全など、心破裂以外の原因で死亡:11症例)の心筋組織検体について解析を行いました。
その結果、心破裂を起こさなかった症例では心破裂を起こした症例と比較して、梗塞心筋組織内への樹状細胞の浸潤が多く認められ、過剰な炎症をもたらす炎症性マクロファージの浸潤が少ないことがわかりました(図1)。さらに、梗塞心筋組織内に浸潤する樹状細胞数が増加するにつれて、心筋梗塞後の心破裂に保護的にはたらく修復性線維化の範囲が広くなっていることも明らかになりました(図2)。これらの結果から、基礎研究で得られた知見と同様に、急性心筋梗塞後の心筋組織への樹状細胞の浸潤は過剰な炎症を抑制し、修復性線維化を促進しながら心破裂に対して保護的役割を持つ可能性が示唆され、急性心筋梗塞の予後改善に寄与する新たな治療の開発につながると期待されます。

【図1】非心破裂例と心破裂例における心筋梗塞後修復性線維化の進展と各種細胞の浸潤

<修復性線維化の進展(マッソン-トリクローム染色)>

修復性線維化の進展(マッソン-トリクローム染色)

心筋梗塞部位の修復性線維化の進展を示しています。写真の薄い青の部分が線維化を示し、非心破裂例では心破裂例より2倍近く修復が促進されていることが示されています。

<炎症性マクロファージの浸潤(CD68 免疫組織化学染色)>

炎症性マクロファージの浸潤(CD68 免疫組織化学染色)

心筋梗塞部位の炎症性マクロファージの浸潤を示しています。写真の茶色の細胞が炎症性マクロファージで、非心破裂例では心破裂例より明らかに浸潤が少ないことが示されています。

<樹状細胞の浸潤(CD209 免疫組織化学染色>

樹状細胞の浸潤(CD209 免疫組織化学染色

心筋梗塞部位の樹状細胞の浸潤を示しています。写真の茶色の細胞が樹状細胞で、非心破裂例では心破裂例より明らかに多く浸潤していることが示されています。

【図2】心筋梗塞後修復性線維化の進展と梗塞組織に浸潤した各種細胞数の関係

【図2】心筋梗塞後修復性線維化の進展と梗塞組織に浸潤した各種細胞数の関係

左:心筋梗塞部位へ浸潤した炎症性マクロファージの数と修復性線維化の進展にはあまり関連がないことが示されています。
右:心筋梗塞部位へ浸潤した樹状細胞の数と修復性線維化の進展には強い関連があり、樹状細胞の浸潤が多かった症例ほど修復性線維化が進展していることが示されています。

最終更新日 2014年06月04日

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