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心臓ペースメーカー細胞群の複雑な構造解明へコンピューターシミュレーションで迫る

平成26年4月24日

国立循環器病研究センター(略称:国循)研究所研究情報基盤管理室の稲田慎研究員・中沢一雄室長らの研究チームは、名古屋大学環境医学研究所の本荘晴朗准教授・英国マンチェスター大学生理学教室のMark R Boyett教授らとの共同研究により、心臓を動かすための電気信号を発するペースメーカーの機能をもつ洞結節の複雑な構造をコンピューターシミュレーションで解析しました。本研究成果は、専門誌PLOS ONEオンライン版に平成26年4月24日(日本時間)に掲載される予定です。

洞結節は心臓の右房大静脈付近にあり、心臓のペースメーカーとして心臓全体を動かすための電気信号の発信源の役割を果たしています(図1)。稲田研究員らのチームは、これまでの研究において、洞結節が性質の異なる細胞群で構成されていることや正常な電気信号は洞結節の中心領域から発生して右房に伝導することを、動物実験により明らかにしてきました。しかし、動物実験だけでは洞結節の詳細な構造や洞結節が性質の異なる細胞で構成されている意義を明らかにすることはできませんでした。

研究チームはコンピューター上にウサギの洞結節とその周囲の心臓組織モデルを構築しました。洞結節が正常に活動する条件を突き止めるため、洞結節の細胞の組み合わせと細胞間の結合力を変化させた約1000通りのモデルを作成しました。その結果、均質な細胞群からなる洞結節モデルでは電気信号が途中で伝導しないなど正常な心臓では起こらない現象が確認されました。一方、不均質な構造の洞結節では、正常な心臓と同様に洞結節の中心から発生した電気信号が右心房に途絶えることなく伝導する現象が再現されました(図2)。このことから、心臓を正常に拍動させるためには洞結節を構成する細胞やその結合力の強さが不均質である必要があることなど、洞結節の複雑な構造が明らかになりました。

洞結節の仕組みが明らかになったことで、今後は他の細胞モデルと組み合わせて"刺激伝導系"と呼ばれる心臓全体の電気活動をコントロールする仕組みをシミュレーションする研究や、電気信号の異常が原因となる不整脈患者の治療への応用などが可能になります。また将来的に、iPS細胞からできた心臓組織を移植する場合にも、事前にコンピューターシミュレーションで正常に電気信号が伝導するかを確認したり、不整脈が起こる可能性を調べたりといった再生医療研究への応用も期待されます。

(図1)心臓の構造と洞結節のはたらき
A:洞結節は大静脈と右心房の付近にあり、右心房を伝って心臓全体に特殊な経路で電気信号を発信します。
B:洞結節のある部位の拡大
C:今回シミュレーションを作成した、洞結節から右心房にかけての組織断面を模式図にしたものです。
(図1)心臓の構造と洞結節のはたらき

(図2)洞結節の構造による、電気信号の伝わり方
A:洞結節の細胞の性質が均質の場合、洞結節中心から発した電気信号は右心房まで達することができません。
B:洞結節の細胞の性質が不均質の場合、電気信号は右心房まで到達し、結果として心臓全体を動かすことができます。なお、細胞の性質だけでなく細胞の結合の強さも同様に不均質である必要があります。
(図2)洞結節の構造による、電気信号の伝わり方

最終更新日 2014年04月24日

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