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手術適応外の慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術に右心室機能改善効果

平成26年5月1日

国立循環器病研究センター(略称:国循)の大郷剛肺循環科医長らの研究チームは、手術適応外の慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対してバルーン肺動脈形成術(BPA)が肺高血圧症の予後にきわめて重要な右心室機能を改善させることを初めて解明しました。本研究の成果はEuropean Respiratoriy Journalのオンライン版に平成26年3月17日に掲載されました。

従来、手術適応外の慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者に対する有効な治療法がなく予後も悪かったところ、近年になりそのような患者に対してBPAの有効性や安全性が示されつつあり、特に血行動態や心不全症状、6分間歩行距離などの改善が報告されています。しかし、肺高血圧症患者において予後を決定する重要な因子であり、かつ症状や心不全改善の証明となる右心室機能に対する改善効果は未解明のままでした。

本研究では、2012年8月から2013年12月までに当センターでBPAを施行され、かつその前後で心臓MRIによる右室機能評価を行われた連続20症例について、主に右室の容積や収縮能、重量、心室中隔の扁平化率などについて解析を行いました。

その結果、20例のうち死亡や重篤な肺水腫といった手技に起因する問題となる合併症はなく、カテーテル後平均肺動脈圧や平均右房圧、心拍出係数、肺血管抵抗、総肺抵抗などの血行動態の改善に加えて、心不全の状況を示す血中BNP値や心不全状態、6分間歩行距離といった臨床的指標が改善されました(表)。さらに心臓MRIでは、右室容積や収縮能、重量、心室中隔の扁平化率といった右室機能が全て改善していることが明らかになりました(写真)。特に右室容積の改善は肺血管抵抗及び心拍出係数と強い相関がみられました。また、長い罹病期間のある患者は心機能が低下しており治療を行っても心臓機能が改善しない可能性がありましたが、本研究により長い罹病期間があってもBPAにより右心機能が改善することが示されました。

右室機能が肺高血圧症の予後を決定する重要な因子であることから今後はBPAの長期生命予後の証明が課題となります。またBPAによる効果が高い症例などについては未解明であり、症例数を増やしてさらに解析を行う必要があります。BPAによる右室機能改善に加えこれらの研究を進めることで、肺高血圧症の病態理解につながると期待されます。

(表)BPA前後の臨床指標と血行動態の改善

(表)BPA前後の臨床指標と血行動態の改善

(写真)BPA前後の心臓MRI画像の比較

(写真)BPA前後の心臓MRI画像の比較

最終更新日 2014年05月01日

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