国立循環器病研究センター

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広報活動

迅速・超迅速な脳血流・代謝PET診断システムの開発と臨床応用

国立循環器病研究センター研究所の飯田秀博画像診断医学部長と中川原譲二脳卒中統合イメージングセンター部長らの研究チームは、超迅速で高精度な脳血流・代謝PET検査システムを開発し、平成25年5月より国循にて本格的臨床応用を開始しました。この技術開発の成果は6月10日にカナダ国バンクーバー市で開催される米国核医学会にて発表されました。

飯田部長らの国循研究所と病院のチームは、脳虚血性疾患の重症度を短時間で精度よく診断するPET法の開発を進めてきました。半減期が2分の放射性酸素(15O)で標識した3種のガス(酸素、二酸化炭素、一酸化炭素)をそれぞれ吸入しながら撮影を行う検査で、局所脳血流量、局所脳酸素消費量、局所酸素摂取率、および局所血液量の計算画像を得ることができます。当初は2時間を要した検査が、酸素と二酸化炭素を吸入する10分程度の撮影と一酸化炭素吸入の10分程度の撮影2回に集約され(DARG法)、撮影装置(PET/CT)や周辺機器の改善・改良と相まって、現在では約30分となっています。

そして今回、酸素と二酸化炭素吸入の撮影のみで局所血液量以外の3種類の計算画像を作成するソフトウェアを開発し、5月より臨床応用を開始しました。この方法により、一酸化炭素吸入の撮影を省略して、約10分でPET検査を終えることも可能になりました(超迅速法)。なお新しいソフトウェアによる計算画像は従来のものとそん色がなく、血管成分などの読影の支障となる障害陰影が出ないという新たな利点もあります。

迅速・超迅速な診断システムの開発により、従来は研究用の精密検査とみなされていた脳血流・代謝PETを、病態の変化が速く安静の保ちにくい脳血管障害患者の日常の臨床検査として用いることができるようになりました。今後は脳卒中の診療で必要な時に速やかに検査ができるような体制整備とともに、中川原部長を中心にその有用性を発信していく予定です。

<背景>

PET(陽電子放射断層撮影:Positron Emission Tomography)は、特殊な放射性同位元素を用いた検査で、体の働きや組織の性質を調べるための非常に優れた画像診断法です。特にがんの検査によく用いられており、脳では認知症の検査でも注目されています。

脳血管障害では、放射性の酸素を含むガスPETが、脳の血流や代謝のゴールドスタンダードとなる検査法として知られていますが、臨床現場で広く用いられているわけではなく、限られた施設での研究目的の使用がほとんどでした。これはサイクロトロンを設置し、検査中に同時に運転するなどの作業が必要で、撮影に時間がかかるうえに、検査前の準備から検査後の画像処理まで多くの人手と手間を要することが原因です。そこで検査自体の簡便・迅速化が長年、望まれていました。

<本システムの概念図>

今回は、下図の画像解析ソフトウェア(塗りつぶし部分)の開発に成功し、臨床応用を開始しました。

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第1図

新しいシステムで撮影した脳血流量、酸素消費量、酸素摂取率の画像。血管成分が増大している領域においては従来のPET検査では評価できないとされてきたが、本検査システムの開発により読影が可能になったと考えられる。血流および酸素消費量の画像から組織残存と虚血の有無が示唆される。

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最終更新日 2013年07月05日

最終更新日:2021年09月28日

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