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リンパ球が血管内へ移動する仕組みの解明

平成24年3月13日

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:橋本信夫、略称:国循)研究所の福原茂朋 細胞機能研究室長、望月直樹 細胞生物学部長らの研究グループは、免疫の主体であるBリンパ球、Tリンパ球が組織から血管に入るための機構として血管内皮細胞のスフィンゴシン1燐酸 (S1P)輸送体(スピンスター2, Spns2)が不可欠であることを突き止めました。

スフィンゴシン1燐酸(S1P)は、血栓症(血小板や赤血球が固まり血管が詰まる病態)のときに、血小板・赤血球から血管内に放出されると考えられています。血栓症で放出されるS1Pは、血管を構成する血管内皮細胞や血管平滑筋細胞に働きかけ血管機能を調節していると予想されてきました。今回の研究により、生理的な条件では、血管内皮細胞からスピンスター2を介して放出されたS1Pが、リンパ組織から血管内へのリンパ球の移動を調節していることが明らかになりました。

Spns2の機能阻害(阻害薬の開発や、機能阻害抗体の開発)により、過剰な免疫反応である多発性硬化症(脳疾患)、動脈硬化症(血管疾患)の治療に繋がると期待されます。また、移植の際の免疫抑制にも効果がある可能性があると考えています。

大阪大学、東北大学、理研との共同研究による成果で、米国科学雑誌The Journal of Clinical Investigation(ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション)に、2012年3月13日付オンライン版で発表されます。

アイコン 研究の背景

リンパ球がリンパ組織から血管内に移動しなければ、免疫担当細胞としての機能を果たせません。しかしどのように血中への移動が調節されているのか不明でした。S1Pの受容体がリンパ球に発現しておりS1Pの重要性は指摘されていましたが、S1Pがどこからどのように分泌されてリンパ球の移動を制御しているのかが重大な未解決な問題でした。

動脈硬化症を悪化させる炎症細胞であるマクロファージもS1Pの受容体を発現しており、マクロファージの動脈硬化病変への集積がS1Pによって誘導されることが報告されています。S1Pの抑制が免疫や循環器疾患で治療効果を示す可能性が指摘されていましたが、S1Pの放出の主体となる細胞と分子が不明でした。

われわれはすでにS1P輸送体(スピンスター2)をゼブラフィッシュで同定して報告していましたが(Science 2009)哺乳類での機能は不明でした。
アイコン 研究手法と成果

① 哺乳類でのスピンスター2の機能を調べるために、スピンスター2の全身での遺伝子欠損マウスと血管内皮だけで遺伝子欠損をしたマウスを作製しました。

② このマウスの血液とリンパ組織(胸腺・骨髄・リンパ節・脾臓)を調べたところ、胸腺・骨髄からの成熟リンパ球が血管内へ移動できないことにより、血液中ならびリンパ節・脾臓でのリンパ球数の顕著な減少となることを突き止めました

③ この顕著なリンパ球の減少が、全身での遺伝子欠損マウスと血管内皮細胞での特異的欠損で同程度だったので血管内皮細胞のスピンスター2がS1Pの細胞からの放出に重要であることが明らかになりました。
アイコン 今後の展望
リンパ球の胸腺・骨髄から血管内への移動に重要なS1P輸送体スピンスター2の特異的阻害化合物を得ることにより、新規の免疫抑制薬の開発につながると予想しています。またリンパ球が免疫の主体となっている病態の治療薬になりうる考えます。例えば、アトピーや喘息などのアレルギー疾患の治療や、慢性炎症が主体と考えられる動脈硬化症などの抑制にも効果がある可能性があると考えています。
アイコン 補足説明
一次免疫組織

最終更新日 2012年03月13日

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