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分子生理部

2016年の業績

研究活動の概要

細胞分化・増殖・移動など多様な生命現象の組み合わせにより、複数の起源を有する前駆細胞から心臓・血管の発生・形態形成を行い、多様な細胞群が協調して働く成熟機能システムを実現するメカニズムは非常に複雑です。心血管系の発生・形態形成において働く分子機構は、その破綻が先天性心疾患発症に直結するのみならず、成人の循環器疾患・脳血管疾患の病態においても重要な役割を有すると考えられます。

この見地より、分子生理部では心臓と血管の発生・形態形成・成熟機能獲得に働く分子メカニズムの研究を行っています。特に、発生期に発現する転写調節因子やシグナル伝達分子に焦点を当て、遺伝子組換えによる実験モデルマウスの形態学・組織学・分子生物学的解析を中心に据え、培養細胞実験・生化学実験を組み合わせることによって研究を進めています。

先天性心疾患・循環器疾患・脳血管疾患などの基礎医学研究と先端医療を行うナショナルセンターの一員として、新しい発想・技術を取り入れた臨床的・社会的意義のある研究の推進を目指すとともに、心血管系の基礎医学研究を担う次世代研究者の育成にも注力しています。

2016年の主な研究成果

    Notchシグナル伝達系は心血管発生制御の根幹となり、その機能異常はAlagille症候群・CADASILをはじめとするヒト疾患の原因となります。私たちが同定したNotchシグナル下流転写調節因子Hrt/Heyファミリーは心血管の発生・形態形成・成熟機能に必須の役割を有し、これら疾患の病態でも重要であると考えられます。本年の研究において、Hrt/Hey遺伝子の細胞特異的機能を解析するためのconditionalノックアウトマウス系統を作出するとともに、CRISPR/Cas9遺伝子編集マウス・転写レポーターマウスなどを用いた研究によってHrt/Hey遺伝子の発現制御に働く遠位エンハンサーの同定を行いました。

    一方、Hrt/Hey遺伝子の発現はALK1受容体シグナルによっても制御されますが、このALK1系もヒト遺伝性出血性末梢血管拡張症・肺動脈性肺高血圧症の病因・病態に深く関与する重要な血管シグナル伝達系です。本年の研究において、ALK1シグナルの新しい下流遺伝子を同定し、その胎生期血管発現制御機構の解析を進めています。当該遺伝子の欠損は血管発生異常による胎生致死性を生じさせることが知られており、上記疾患を含むヒト病態における重要性を明らかにすることを目指しています。

    これらに加え、エピトープタグ標識分子発現マウスの作出と分子複合体解析、マイクロCT・組織標本3D再構築を用いた心血管形成過程の立体観察技術の開発など、新しい実験技法の開発・導入にも取り組んでいます。

研究業績

  1. Sun WP, Uchida K, Suzuki Y, Zhou YM, Kim M, Takayama Y, Takahashi N, Goto T, Wakabayashi S, Kawada T, Iwata Y, Tominaga M. Lack of TRPV2 impairs thermogenesis in mouse brown adipose tissue. EMBO Reports. 17, 383-399, 2016.
  2. Iwata Y, Suzuki N, Ohtake H, Kamauchi S, Hashimoto N, Kiyono T, Wakabayashi S. Cancer cachexia causes skeletal muscle damage via transient receptor potential vanilloid 2-independent mechanisms, unlike muscular dystrophy. Journal of Cachexia Sarcopenia and Muscle. 7, 366-376, 2016.
  3. Nakamura TY, Nakao S, Wakabayashi S. Neuronal Ca2+ sensor-1 contributes to stress tolerance in cardiomyocytes via activation of mitochondrial detoxification pathways. Journal of Molecular and Cellular Cardiology. 99, 23-34, 2016.
  4. Fujita M, Sakabe M, Ioka T, Watanabe Y, Kinugasa-Katayama Y, Tsuchihashi T, Utset MF, Yamagishi H, Nakagawa O. Pharyngeal arch artery defects and lethal malformations of the aortic arch and its branches in mice deficient for the Hrt1/Hey1 transcription factor. Mechanisms of Development. 139, 65-73, 2016.
  5. Sun WP, Uchida K, Takahashi N, Iwata Y, Wakabayashi S, Goto T, Kawada T, Tominaga M. Activation of TRPV2 negatively regulates the differentiation of mouse brown adipocytes. Pfulugers Archiv-European Journal of Physiology. 468, 1527-1540, 2016.
  6. Park J, Wysocki RW, Amoozgar Z, Maiorino L, Fein MR, Jorns J, Schott AF, Kinugasa-Katayama Y, Lee Y, Won NH, Nakasone ES, Hearn SA, Küttner V, Qiu J, Almeida AS, Perurena N, Kessenbrock K, Goldberg MS, Egeblad M. Cancer cells induce metastasis-supporting neutrophil extracellular DNA traps. Science Translational Medicine. 8, 361ra138, 2016.
  7. 岩田 裕子. ストレッチ感受性Ca2+透過チャネルTRPV2を標的とした筋変性治療薬の開発. 医学のあゆみ. 259, 65-72, 2016.

最終更新日 2017年08月18日

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