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生化学部

ニューロメジンUとニューロメジンSの新たな機能解明に関する研究

ニューロメジンU(NMU)は、私たちが1985年に子宮筋収縮アッセイを用いてブタ脊髄より発見した神経ペプチドです。NMUは中枢組織のみならず末梢組織にも多量に存在し、これまで末梢組織における機能はよく解析されてきました。しかしながら、中枢神経系における生理作用の詳細については長期間不明でした。2000年になり、私たちのグループを含む数グループはほぼ同時に、オーファン受容体FM3(NMU1R)とFM4(NMU2R)に対する内因性リガンドがこのNMUであることを同定しました。これらの受容体は中枢神経系、特に視床下部領域で強く発現していることから、ペプチドのラットへの脳室内(ICV)投与によりNMUの中枢性摂食抑制作用、エネルギーバランス調節への関与を明らかにしました。これらの結果はNMUが循環器疾患などの生活習慣病の危険因子である肥満の分子機構に密接に関与していることを強く示唆しています。これにくわえて、NMUのラット脳室内ICV投与はストレス反応を誘発し、NMUが中枢でのストレス反応の制御に重要であること、この反応がCorticotropin-Releasing Hormone(CRH)を介することを明らかにし、さらに、NMUのICV投与は、交感神経系を介して血圧上昇、心拍数の増加など循環器系にも働くこと、CRHを介して胃酸分泌や胃排出の抑制など消化管機能の制御にも働くことを明らかにしました。また最近、NMUが生物の概日リズムを司る視交叉上核に発現していることを示し、NMUが概日リズムの調節に関与していることを明らかにしました。

一方、オーファン受容体FM3(NMU1R)とFM4(NMU2R)に対する内因性リガンド探索を継続したところ、ラット脳から得たペプチド抽出物中に新たなアゴニスト活性を見出し、精製と構造解析の結果、新規生理活性ペプチドであることが判明しました。このペプチドの遺伝子発現は視床下部で強く、なかでも視交叉上核(suprachiasmatic nuclei)での発現量が突出していたため、その頭文字をとって新規ペプチドをニューロメジンS(NMS)と命名しました。NMSとNMUは、アゴニスト活性に必要な共通構造を持つために2つの受容体を共有しますが、それぞれ別々の遺伝子から産生されることから、異なる生理機能を担っていると考えられます。NMSをICV投与すると、NMUの場合と同様に、摂食を抑制し、下垂体後葉ホルモンの分泌を促し、概日リズムを調節するなどしますが、大変興味深いことに、NMUに比べて約10倍強く作用することがわかりました。現在では、ノックアウトマウスの解析により、NMSが交感神経系を介した循環器調節や体温調節に関与することが示されています。

最終更新日 2016年07月01日

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