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国立循環器病研究センター 冠疾患科
国立研究開発法人国立循環器病研究センター 
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疾患・治療等コラム

低侵襲PCI(経皮的冠動脈インターベンション)について

低侵襲PCI(経皮的冠動脈インターベンション)について

当院では年間650750件のPCI(経皮的冠動脈インターベンション)を行っていますが、できるだけ患者さんの負担の少ない低侵襲なPCIを目指しています。

PCIの合併症の約半数は、穿刺部(針を刺した部位)に関連したもので、穿刺部の出血(血腫)、仮性動脈瘤(穿刺した血管の穴が閉じずに瘤状の血溜まりを作ること)、動静脈瘻(穿刺した動脈と伴走する静脈とが交通すること)、動脈閉塞などがあります。したがって、カテーテル(治療で使用する管)を挿入するのに、どの血管を選択するか(アプローチ)が重要になります。通常、PCIでカテーテルを挿入する動脈には、大腿動脈, 撓骨動脈, 遠位橈骨動脈, 上腕動脈などの選択肢があります。

従来、PCIでは主に大腿動脈アプローチ(鼠径部の血管を穿刺してカテーテルを挿入する)が行われてきました。
大腿動脈は体表から比較的容易に穿刺できる太い動脈であるため、冠動脈の治療に用いる太いカテーテルを無理なく挿入できる利点があります。一方で、治療後の止血のために術後数時間はベッド上で安静を保って圧迫止血する必要があるなど、患者さんにとっては負担の大きいものとなります。安静が保てないと術後の止血が不十分になり、前述の穿刺部出血や仮性動脈瘤などの穿刺部合併症を起こすリスクが高まります。大腿動脈穿刺で止血が得られなかった場合、体表への出血ではなく後腹膜(骨盤内)へ内出血が広がる場合があり、出血量が多くても体表からの観察では出血の存在がわかりにくく、重篤な状態となることがあります。

橈骨動脈(手首の血管[図1左])アプローチでのPCIが1993年に報告されて以後、その安全性・優位性が証明され、現在の標準的なアプローチ方法となっています。橈骨動脈アプローチでは、術後は手首に止血バンドを装着することで止血ができ、穿刺部の合併症の頻度は大腿動脈アプローチより少ないとされています。大腿動脈アプローチと違って術後に鼠径部の圧迫止血のために長時間のベッド上安静を強いられることがないので、患者さんは術直後から楽に過ごすことができます。

さらに当院では2019年から、遠位橈骨動脈アプローチでのより低侵襲なPCIを行っています。橈骨動脈を従来の手首ではなくより末梢の手背(手の甲)の親指の付け根あたりで穿刺[図1右]するため、術後に手首の安静の必要もなく患者さんの負担がより少ないうえ、橈骨動脈アプローチと比べても穿刺部の合併症がさらに少ないのが特徴です。末梢の細い血管であるため挿入できるカテーテルの太さに制限がありますが、より細いカテーテルを使用して治療できるよう工夫するなどして、可能な症例では遠位橈骨動脈アプローチでの低侵襲なPCIを行っています。当院では2019年に遠位橈骨動脈アプローチでのPCIを開始し、2020年に実施したPCIの10%、2021年に実施したPCIの15%で遠位橈骨動脈の穿刺を行っており、増加傾向にあります。(対して大腿動脈穿刺は2019, 2020, 2021年でそれぞれ19%, 17%, 15%と減少傾向です)[図2]

現在でも、複雑な治療のためにより太いカテーテルの挿入が必要な場合や、上肢の透析シャント作成後の場合、冠動脈バイパス術で橈骨動脈を過去に採取されている場合、上肢の血管に狭窄や閉塞がある場合など、治療内容や患者さんの状態によってはどうしても遠位橈骨動脈以外の動脈からのアプローチを選択せざるを得ない場合がありますが、当院ではできる限り患者さんの負担の少ない、より低侵襲なPCIを目指して日々努力しています。

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