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CTOはchronic total occlusion:慢性完全閉塞の略語になります。CTOは3か月以上にわたり冠動脈が閉塞している病変を指し、カテーテル治療(PCI)の中でも難易度が高く、巧みな技と卓越した知識、積み重ねた経験が必要となります。急性心筋梗塞に対する治療と異なり、治療自体に緊急性はありませんが、他のPCIに比べ成功率は低く、合併症発生率も高いことから治療に対する適応があるか否かを慎重に見極めることが大切です。慢性的な虚血状態を改善することは①狭心症症状の軽減、②心機能改善、③運動耐用能、生活の質の改善、④冠動脈バイパス術の回避、⑤生命予後の改善といった複数のメリットが挙げられます。
当院のCTO件数は全PCIの5%程度で推移しており、ここ数年図1のように決して多くはありませんが、成功率はおおむね75~80%と全国的な平均の76%と同等の数値です1)。合併症は1%程度で、内訳はカテーテル後の心筋梗塞が8例、輸血が必要となったケースが3例、1例緊急バイパス術をお受けいただいた患者様はいますが死亡例はここ5年ではありません。
特徴として日本心血管インターベンション専門医4人を中心とした週2回のカンファレンスに加え、週1回の心臓外科医とのハートチームカンファレンスを行っており、PCI治療、バイパス手術、薬物療法から最適なものを患者様に提供しております。他院から紹介されたケースでも場合によりカテーテル手術をお勧めしない場合もあります。カテーテル治療を勧めさせていただいた場合は主に専門医が治療を担当することになります。通常のPCIではカテーテルを挿入する場所は1か所で主に手首の橈骨動脈からになりますが、CTO治療においては順行性治療(詰まっている場所を手前から治療する)、に加え逆行性治療(側副血行路をつたって詰まっている場所の奥から治療する)が必要な場合も少なくありません。代表例を
両方向性アプローチにより血行再建に成功し、術後明らかに虚血の範囲が改善しています。この方法の場合、カテーテルを挿入する場所が2か所となり、太いカテーテルを用いた場合のほうが治療手段も増えるため、足の付け根の鼠径部から行う場合もあります(橈骨と鼠径、両橈骨、両鼠径など)。手術時間は通常のPCIでは2時間以内で終了することがほとんどですが、CTO治療は場合により5時間程度かかる場合もあります。長時間の手技は放射線の暴露、造影剤の量がおのずと増えますので主に、5時間をめどにガイドワイヤー通過が2時間以内に見込めない場合、放射線量が5Gyを超過した場合(皮膚に障害が出る場合があります)、造影剤量が300ml(腎臓の機能によりさらに少ない場合もあります)を使用した時点でガイドワイヤーが通過していない場合を中止の基準としております。
心臓カテーテル治療は使用する道具の進歩、テクニックの向上から様々な課題を克服してきた歴史がありますが、CTO治療、石灰化治療、急性心筋梗塞に対する治療は残された数少ない課題であり、スタッフ一丸となり成績向上に取り組んでおります。