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創薬オミックス解析センター

研究について
心臓移植の対象となる重症心不全・心筋症のオミックス解析

重症心不全は、心筋炎、心筋梗塞、開心術後などから急性心不全として発症することも、特発性や二次性心筋症にともなう慢性心不全の急性増悪として発症することもありますが、心不全の進行や増悪を規定する分子機序や診断マーカーは知られていません。また拒絶反応を非侵襲的に見出す方法として、単核球中のRNAや血漿中のドナー由来DNAを検出する検査法が研究されていますが、感度・特異度の問題から国内では実用化に至っていません。重症心不全の増悪の発生機序や拒絶反応の非侵襲的診断法を確立するための一つの手段は、重症心不全患者の心筋組織を病理組織的に解析するとともに、ゲノム・RNA・タンパク・エピゲノム・ミトコンドリアなどの各階層レベルで網羅的解析(マルチオミックス解析)を行い、心不全の増悪と一致して特異的に変動する生体分子を同定することです。これらの解析から得られる分子病態情報と患者の臨床情報を詳細に分析することによって、重症心不全増悪の機序や診断マーカーが同定され、新たな予防法や治療法の開発につながることが期待されます。

一部の遺伝性心疾患においては、遺伝子変異やリスク多型などのゲノム情報は疾患発症の病因や病態の究明に重要であることが知られていますが、装着や心臓移植を受ける患者においても、心筋細胞機能異常を誘導する可能性がある遺伝子異常がかなり高い割合で存在する可能性が示されてきました。多数症例から得られた遺伝子変異やリスク多型などのゲノム解析と臨床症状・予後の関連を解明することによって診断確率や精度が向上することが期待されます。遺伝子変異や多型には人種や地域による差がみられるので、我が国のゲノム医療・精密医療を実現するためには日本人の遺伝子変異・多型のデータを蓄積することが不可欠であり、将来的にはこれらのビックデータに基づいた患者管理や新たな治療法の確立が可能になります。また、遺伝子変異に基づく新たな薬物治療のターゲット分子を解明するために、患者由来iPS心筋細胞を用いた薬理学的研究も必要になります。

当センターでは心筋生検の切片1枚からRNA-seq解析する技術の開発に成功しました。したがって、臨床上の理由で採取された心筋組織の残余組織を用いることによって、患者に追加の負担をかけることなく、心筋組織中のRNAとタンパク質の情報と、血液中の遺伝子関連情報を比較解析することができるようになりました。

本研究では、重症心不全と心筋症患者のゲノム解析を実施するとともに、多様な病態における心筋組織のトランスクリプトーム、プロテオーム、エピゲノム解析を推進して、病態の分子レベルで表現型を分析し、病因の究明、心不全病態や心臓移植時の拒絶反応の発症・増悪の分子機序の解明と分子情報に基づく診断法の樹立を目指します。

関連研究費

① AMED 免疫アレルギー疾患等実用化研究事業(研究代表者 福嶌教偉、研究分担者 蒔田直昌、R1~R3年度)「遺伝子関連情報の解析を用いた臓器移植に関わる個別化医療に関する研究」

最終更新日:2021年09月21日

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