三尖弁逆流症(三尖弁閉鎖不全症)の開胸不要なカテーテル治療「TriClip™」

三尖弁逆流症の主な症状

  • 足のむくみ
  • 食欲不振
  • 倦怠感
  • 息切れ

このような症状がある場合は
注意が必要です

TriClip™は、外科的治療のリスクが高いと判断された
三尖弁逆流症(TR)に有効な治療方法となる場合があります。

中等度以上5人に1人
周術期死亡率0.6%、デバイス関連死亡率0%、1年後の生存率93%

慢性心不全患者の5人に1人は、
中等度以上の三尖弁逆流症(TR)があると言われ、
患者さんの状態によっては、TriClip™が有効な治療選択肢となる場合があります。
臨床試験において、TRの重症度を87%の患者さんで減少させることが実証され、
また周術期死亡率が極めて低く、高い安全性も実証済みです。

参考文献 N Engl J Med. 2023;388:1833-1842.

薬物治療
弁の逆流そのものの改善が不十分
開胸手術
術後死亡率が高くリスクがある

安全性と効果の両面で優れたTriClip™が有効な治療方法となります。

  • 87%の患者で逆流が中等度以下に改善
  • 生活の質が15ポイント以上改善(=患者が自覚的に「良くなった」と感じるレベル)
  • 心不全による再入院を有意に減少
TriClip™
弁の逆流を物理的に抑制し
リスクが低く回復も早い

TriClip™の治療方法を動画で解説

三尖弁逆流症(三尖弁閉鎖不全症)とは?

三尖弁逆流症(三尖弁閉鎖不全症、TR)とは、
三尖弁が十分に閉じず、血液が逆流してしまう弁膜症です。

主な症状

血液が逆流することで、全身から血液を回収する静脈側に負担がかかり、以下のような右心不全の症状が現れます。

  • 足のむくみ(下腿浮腫)
  • 肝うっ血や腸管のうっ血による食欲不振
  • 腹部膨満

また、送り出す血流が減少することで以下の症状も出現します。

  • 労作時の息切れ、全身の倦怠感

気が付いたときに重症化していることも多い

どんな症状がでるのか?
TRの原因

TRのほとんどは心不全に伴う二次性(機能性)TRで、弁の器質的な異常による一次性のTRは5-10%、多くても20%程度とされています。

TRに対してTriClip™は、患者さんの状態によっては有効な治療選択肢となります。併存疾患や高齢のため開胸手術のリスクが高い患者さんでも治療可能です。気になる症状がある場合、早期にご相談ください。

二次性TRは心筋症や不整脈(心房細動など)が根本原因であるため、TriClip™は弁の逆流を制御する重要な手段ですが、並行して原因疾患の管理も重要です。

一次性TRと二次性(機能性)TRの円グラフ

参考文献 N Engl J Med. 2023;388:1876-1891.

死亡率

中等症以上の三尖弁逆流症は生存率を下げることがわかっています。(症状の有無にかかわらず)
進行すると心不全を引き起こし、重症になると生活の質の低下や死亡率の増加につながります。
重症になると心不全を繰り返しやすくなり、患者の3分の1は5年以内に心不全で入院し、半数の患者が複数回の心不全入院を経験します。

参考文献 Int J Cardiol. 2017;243:251-257

生存率のグラフ
治療法

これまでは利尿剤などの薬物治療や開胸手術が行われてきました。
しかし、薬物治療では弁の逆流そのもの(重症度)の改善が不十分であることがあり、他の臓器への影響も生じます。
開胸手術では術後死亡率が8〜10%と高く、特に高齢の心不全患者が実際に手術を受けられるケースはごくわずかでした。
近年では、足の付け根の静脈からカテーテルを挿入し、三尖弁をクリップでつまんで逆流を軽減する「TriClip™(経皮的三尖弁接合不全修復術)」という新しい治療法が承認・導入されています。
これにより、胸を開かずに身体への負担が少ない(低侵襲)治療が可能になっています。

従来の治療
薬物治療・開胸手術
新しい治療法
TriClip™(有効かつ安全な治療法)

開胸手術が困難な方にも行える治療方法

TriClipシステム

TriClip™は、右足の付け根の静脈からカテーテルを挿入して心臓の三尖弁まで到達させることで、従来の開胸手術を受けるのが難しい重症の三尖弁逆流症の患者さんに向けた治療です。

対象(適応)者

重症度
高度(重症)の三尖弁逆流症(TR)がある方
(安静時・負荷時を問わずTR 3+以上)
症状
利尿薬などの薬物治療を続けても、
息切れ・むくみ・腹水などの心不全症状が残る方
外科リスク
高齢・過去に心臓を行っている方、肝機能や腎機能障害など併存疾患などにより、外科手術(開胸手術)が最適ではないと判断される方
解剖学的条件
大腿静脈からアプローチでき、クリップ留置に適した弁の形態である方

上記に当てはまっても治療をお勧めできない場合があります。
最終的な適応は、専門の医療チーム(ハートチーム)が一人ひとり個別に判断します。

TriClip™の3つのメリット

身体への負担が少ない、回復が早い

胸を大きく開く必要がなく、傷口は約1㎝程度で済みます。
そのため、術後の回復が早く、翌日には自分の足で歩くことができ、1週間弱で退院が可能です。

死亡リスクが低い(周術期死亡率0.6%)

心臓を止めずに動かしたまま(自己心拍下)治療を行うため、エコー画像を見ながらリアルタイムで正確な効果判定ができ、クリップの位置の修正も可能です。

高齢の方でも治療できる(低侵襲)

高齢の方や併存疾患を有する方など、外科手術のリスクが高いと判断された重度の三尖弁逆流症の患者さんでも治療が可能です。

TriClip™の治療の流れ

Step

足の付け根の静脈からカテーテル(細い管)を挿入します。胸を開く必要がないため、傷口はわずか1㎝程度で済みます。
※全身麻酔での治療となります。

Step

人工心肺装置などは使わず、心臓を動かしたまま、血管(静脈)を通ってカテーテルを心臓の右心房へ進め、三尖弁まで到達させます。この際、造影剤は使用せず、食道から入れる胃カメラのようなエコー(経食道心エコー)の画像を見ながら慎重にカテーテルを操作します。

Step

カテーテルの先端からクリップを出し、逆流の原因となっている三尖弁の弁尖(ドアのように開閉する部分)をクリップでつまんで固定します。これにより、弁のすき間を減らし、血液の逆流を防ぎます。

Step

クリップで弁をつまんだ後、エコー画像を見ながらリアルタイムで「逆流がどれくらい減ったか」を正確に判定します。一番良い位置が決まったら、クリップを弁にしっかりと固定してカテーテルを抜去し、手術を終了します。

国立循環器病研究センターのTriClip™の特徴

国立循環器病研究センターは心臓血管系と脳血管系の治療を行う
世界でも画期的な最先端の大規模医療・研究施設です。

すべての治療方法の中から
患者さん各々に適切な治療法をご提案しています。

特徴01

西日本で初めてTriClip™を実施したパイオニア

当院では、承認翌日の2026年3月2日に西日本で初となるTriClip™を2例実施いたしました。

特徴02

重症心不全症例や困難な解剖症例の経験が豊富

当院では、2018年から僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療を実施しており、困難な症例においても多くの実績を有しています。TriClip™という新たな治療法が加わり、心不全治療の幅がさらに広がります。

特徴03

TriClip™認定施設として認定

2026年3月1日にカテーテル治療が保険承認され、国循ではいち早くこの治療に取り組みました。
現在、TriClip™の治療を行っている施設の中の1つとして認定されています。

特徴04

TriClip™が難しい患者さんにも治療提案が可能

TriClip™が難しい症例においても低侵襲三尖弁手術など最適な治療の提案が可能ですのでご安心ください。

特徴05

全方向性にきめ細やかなケアが可能

心臓血管系と脳血管系を専門とするセンターのため、各部門のプロフェッショナルが協力し合い、薬物治療、心臓再同期療法(ペースメーカーによる心臓収縮調整)、リハビリ、心移植、補助人工心臓などトータルなケアが可能です。

安心のハートチーム

あらゆる分野の循環器のスペシャリストが
チームとして患者さんを支えます。

治療の流れ(受診案内)

三尖弁逆流症による症状が気になる方は早めに受診を

受診を希望される患者さんへ

国立循環器病研究センターは、循環器の専門病院です。循環器疾患における急性期医療を必要とされる方を診察する基幹病院でありたいと願っております。そのため、初めて診察を受けられる方は「かかりつけ医」の診察を受け、相談のうえ「紹介状(診療情報提供書)」をお持ちいただくようお願いします。

患者さんのご紹介について

平日、月曜日から金曜日まで毎日対応させていただきます。
対象となる患者さんがおられましたら、ぜひご紹介ください。

患者さんをご紹介いただく際には、「診療予約依頼書 兼 診療情報提供書」 に必要事項をご記入の上、専門医療連携室(06-6170-1348)へFAXでご送信ください。

「弁膜症クリニック 診療希望」とご記入いただきますようお願い申し上げます。

※月曜日から金曜日まで、すべての曜日で対応しています。
 曜日に関しましては、可能な限りご希望に沿わせていただきますので、ご遠慮なくお申しつけください。

医師紹介

手技医(インプランター)

天木 誠 写真

天木 誠

岡田 厚 写真

岡田 厚

倉島 真一 写真

倉島 真一

術中エコー医

北井 豪 写真

北井 豪

神﨑 秀明 写真

神﨑 秀明

入江 勇旗 写真

入江 勇旗

ハートチーム医

泉 知里 写真

泉 知里

天野 雅史 写真

天野 雅史

夜久 英憲 写真

夜久 英憲

森内 写真

森内 健史

よくある質問

費用はいくらくらいかかりますか?

2026年3月より
TriClip™:経皮的三尖弁接合不全修復術が健康保険の適応となりました。高額療養費制度をご利用の場合、更に負担を減らすことが可能です。

高額療養費制度を利用しない場合
約120万円
※金額はモデルケースでありあくまでも一例となります。

70歳以上の方の上限額
(平成30年8月診療分から)

適用区分 ひと月の上限額
(世帯ごと)
外来(個人ごと)
現役並み 年収1,160万円?
標報83万円以上/課税所得690万円以上
252,600円+(医療費-842,000) x 1%
年収約770万円?約1,160万円
標報53万円以上/課税所得380万円以上
167,400円+(医療費-558,000) x 1%
年収約370万円?約770万円
標報28万円以上/課税所得145万円以上
80,100円+(医療費-267,000) x 1%
一般 年収156万?約370万円
標報26万円以下
課税所得145万円未満等
18,000円
[年14万4千円]
57,600円
住民税非課税等 II 住民税非課税世? 8,000円 24,600円
I 住民税非課税世?
(年金収入80万円以下など)
15,000円

69歳以下の方の上限額

適用区分 ひと月の上限額(世帯ごと)
年収約1,160万円?
健保:標報83万円以上
国保:旧ただし書き所得901万円超
252,600円+(医療費-842,000) x 1%
年収約770?約1,160万円
健保:標報53万~79万円
国保:旧ただし書き所得600万円?901万円
167,400円+(医療費-558,000) x 1%
年収約370?約770万円
健保:標報28万~50万円
国保:旧ただし書き所得210万~600万円
80,100円+(医療費-267,000) x 1%
?年収約370万円
健保:標報26万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下
57,600円
住民税非課税者 35,400円

厚生労働省:高額療養費制度について https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf

TriClip™を受けられないのはどのような場合ですか?

解剖学的にTriClip™が適応とならない方、経食道心エコーが困難な方、極めて心機能の悪い方、並存する他の病気のため余命が長くないと考えられる方などは、TriClip™を受けることができません。

入院期間はどのくらいですか?

順調に経過した場合には、1週間以内に退院可能です。
ただし、リハビリや薬物調整のためにより長く入院期間が必要となることもあります。

治療による痛みはどれぐらいですか?

全身麻酔を行い、患者さんが苦痛を感じることの無いよう、適切に管理いたします。原則、外科手術のように傷は胸には残りませんが、まれに術後に足の付け根のカテーテル挿入部が痛むことはあります。全身麻酔のため、術後にのどに違和感をおぼえたりすることがあります。これらは数日から一週間でおさまります。

希望すればTriClip™を受けることができますか?

三尖弁逆流症の治療は、まずは利尿薬などを用いた内科的治療(お薬でのコントロール)や、他の弁膜症手術の際に同時に行う外科手術が検討されます。
TriClip™は、十分な薬物治療を行っても症状が改善せず、かつ「外科手術のリスクが高い」とハートチーム(専門の医療チーム)によって判断された重症の三尖弁逆流症の患者さんが適応となります。ただ単に「外科手術が嫌だ」「薬を増やしたくない」という理由だけで治療を選択することはできません。当院の専門医療チームにて、患者さんの状態を総合的に考慮し、治療の必要性を判断いたします。

年齢に関係なくTriClip™は受けられますか?

年齢制限のみを理由に受けられないということはありません。
むしろ、高齢で体力が低下し、胸を開く外科手術のリスクが高い患者さんにとって、体への負担が少ないTriClip™は有効な治療選択肢となります。

遠方なのですが、国循で治療は受けられますか?

もちろん受けられます。
また、遠方の患者さんの場合、初診外来を省き、直接検査入院頂くことも可能です。
来院されるまえに事前に紹介状などで適応を判断することも可能ですので、かかりつけ医から当院医療連携室を通じてご連絡いただくとスムーズかと思います。

治療後のMRI検査は可能でしょうか?

MRI検査は(留置直後から)受けることが可能です。

国循にご興味がある医師の方へ

「臨床手技」「臨床研究」どちらにおいても
充実した学びの場となることをお約束いたします。

国立循環器病研究センターは、国内最高峰の医療を提供し、かつ併設する研究所との連携もさかんに行われています。
臨床手技を極めたい方にも臨床研究に注力したい方にも、充実した学びと経験の場を提供しています。

見学・研修をご希望の方はこちらまでご連絡ください。

education@ml.ncvc.go.jp

医師の方は電話(06-6170-1070 内線31125、31135)でも受け付けています。