予防医療部
研究活動の概要
  1. 高度循環器ドック
     循環器病では全く症状の無い方に突然、命に関わる重大な状況が発生します。幸いにして生命の危機を脱したとしても、しばしば後遺障害を残して、ご本人の人生を大きく損なうのみならず、ご家族や社会にも重い負担をかけることになります。これが循環器病の怖いところです。
     一方で、循環器病は、その準備状態となる生活習慣の改善などで予防できる可能性があります。また、重大な病気の予備群の状態を発見できれば、先制攻撃としての治療を行うことも可能です。ここに、早期発見のための「循環器病ドック」の意義があります。
     国立循環器病研究センター(国循)では、高度先進医療の開発を推進するため、健康な方を対象に、からだの形と働きの基本情報を収集するプロジェクトを平成25年9月より立ち上げるとともに、循環器病の早期発見のための「スーパードック」ともいえる「高度循環器ドック」を実施しており、その運営を当部で担当しております。高度循環器ドックのウェブサイトもご覧ください。
    http://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/prevention/ncvcdock.html#yoyaku

  2. 禁煙外来
     喫煙は循環器病の最も大きな危険因子であり、禁煙によりリスクが大幅に低下することが知られています。しかし、喫煙は「ニコチン依存症」であり、自分一人ではなかなか禁煙を継続できません。国循では禁煙外来を開設しており(主に当部で担当)、できるだけ無理なく禁煙できるように、必要に応じて禁煙補助薬も使用しながら、医師や看護師が精一杯サポー卜を行っております。「タバコ(ニコチン依存症)から開放されたい方」「禁煙したいけれども、一人での禁煙に自信のない方」はご相談ください。詳しくは、禁煙外来のウェブサイトをご覧ください。
    http://www.ncvc.go.jp/hospital/section/nonsmoking/

  3. 国循マンションプロジェクト
     国循の周囲には、吹田市民病院や研究施設、健康増進を目指した公園などがあり、「北大阪健康医療都市(健都)」として開発が進んでいます。都市型居住ゾーン(国循に隣接)に建設された「ローレルスクエア健都ザ・レジデンスおよび健都ザ・テラス」において、国循は居住者の皆様の健康寿命の延伸と循環器病の予防を目指し、「国循マンションプロジェクト」を実施しております。当プロジェクトは当部を中心に運営しており、主に「高度循環器ドック」、「国循健康管理システム」、「入居者限定セミナー」から構成されています。簡単にその概要をご紹介いたします。
  1. (1)高度循環器ドック
     前述しました「高度循環器ドック」を受診する権利が各戸に1回分付与されています。循環器病の早期発見に特化した一連の検査を受けることにより、心臓や脳、血管などの状態が詳しくわかり、循環器病予防のための対策を考えるのに有用です。

  2. (2)国循健康管理システム
     「国循健康管理システム」とは、IT技術なども活用しながら個人の健康管理を行うもので、国循で独自に開発しております。マンションの各戸には、血圧計、体重体組成計、ウェアラブル端末(歩数などを計測)がそれぞれ1台標準装備されており、国循が提供する国循健康管理システムに申し込むと、測定データがインターネットを介して転送されます。国循では測定データにもとづき、自動コメント(随時)を配信するとともに、生活習慣などに関する個別コメントを医師と保健師が作成し、約3ヶ月に1回のペースで配信しております(生活習慣アンケート、健診・人間ドックの結果、お薬の情報など追加の健康情報をご提供いただいた場合には、その内容も踏まえ、より詳細なコメントが可能です)。また、定期的にコラムや動画の配信なども行っており、パソコンやスマートフォンなどから閲覧できます。次世代の健康管理ツールとして循環器病の予防に資することを目標に、実際にサービスを提供しながら、改良を重ねている段階です。今後の展開をご期待ください。

  3. (3)入居者限定セミナー
     循環器病やその予防方法について具体的に学んでいただくために、居住者の方を対象に、年に4回程度(調理法の実演・試食、心臓リハビリテーションに基づく運動教室、検査体験、病気のお話など)、体験型セミナーを中心に開催しております。
  4. このような取り組みを通して、さらにデータやノウハウを蓄積し、国循の目標の1つである循環器病の予防に結びつくように、実践的な予防方法の開発・研究に取り組んでいく予定です。

研究業績
  1. Sugiyama D, Turin TC, Yeasmin F, Rumana N, Watanabe M, Higashiyama A, Takegami M, Kokubo Y, Okamura T, Miyamoto Y. Hypercholesterolemia and Lifetime Risk of Coronary Heart Disease in the General Japanese Population: Results from the Suita Cohort Study. Journal of Atherosclerosis and Thrombosis. 27, 60-70, 2020.
  2. Katsuragi S, Okamura T, Kokubo Y, Watanabe M, Higashiyama A, Ikeda T, Miyamoto Y. The Perinatal Condition Around Birth and Cardiovascular Risk Factors in the Japanese General Population: The Suita Study. Journal of Atherosclerosis and Thrombosis. 27, 204-214, 2020.
  3. Nakai M, Watanabe M, Kokubo Y, Nishimura K, Higashiyama A, Takegami M, Nakao YM, Okamura T, Miyamoto Y. Development of a Cardiovascular Disease Risk Prediction Model Using the Suita Study, a Population-Based Prospective Cohort Study in Japan. Journal of Atherosclerosis and Thrombosis. 27, 1160-1175, 2020.
  4. Higashiyama A, Kokubo Y, Watanabe M, Nakao YM, Okamura T, Okayama A, Miyamoto Y. Echocardiographic Parameters and the Risk of Incident Atrial Fibrillation: The Suita Study. Journal of Epidemiology. 30, 183-187, 2020.
  5. Katsuragi S, Okamura T, Kokubo Y, Watanabe M, Higashiyama A, Ikeda T, Miyamoto Y. Relationship between thin physique at 6 years and metabolic disease risks in middle-aged Japanese women: The Suita study. The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research. 46, 517-526, 2020.
  6. Kida M, Ono T, Kokubo Y, Yoshimuta Y, Kosaka T, Kikui M, Yamamoto MA, Ikebe K, Maeda Y, Nokubi T, Nishimura K, Watanabe M, Higashiyama A, Miyamoto Y. Decreased masticatory performance is related to increased intima-media thickness in a general urban Japanese population: The Suita study. Journal of Prosthodontic Research. 64, 346-353, 2020.
  7. Fujii K, Kosaka T, Hasegawa Y, Kida M, Hashimoto S, Fushida S, Nokubi T, Kokubo Y, Watanabe M, Higashiyama A, Miyamoto Y, Ikebe K, Ono T. Periodical utilization of dental services is an effective breakthrough for declining masticatory performance: the Suita study. Odontology. 108, 715-722, 2020.
  8. Sekikawa A, Higashiyama A, Lopresti BJ, Ihara M, Aizenstein H, Watanabe M, Chang Y, Kakuta C, Yu Z, Mathis C, Kokubo Y, Klunk W, Lopez OL, Kuller LH, Miyamoto Y, Cui C. Associations of equol-producing status with white matter lesion and amyloid-β deposition in cognitively normal elderly Japanese. Alzheimer's & Dementia (NY). 6, e12089, 2020.
  9. 真殿 亜季, 由田 克士, 栗林 徹, 奥田 奈賀子, 中村 幸志, 渡邉 至, 樺山 舞, 神出 計, 三浦 克之, 板井 一好, 岡山 明. 遅い夕食習慣は中年男性のメタボリックシンドローム 発症リスクを増加させる. 日本循環器病予防学会誌. 55, 40-49, 2020.
  10. 樋口 温子, 樺山 舞, 神出 計, 呉代 華容, 赤木 優也, 奥田 奈賀子, 中村 幸志, 渡邉 至, 栗林 徹, 板井 一好, 由田 克士, 三浦 克之, 岡山 明. 特定保健指導積極的支援における中性脂肪該当者の特徴と中性脂肪に対する指導効果の検討. 日本循環器病予防学会誌. 55, 124-133, 2020.