臨床試験に参加するには、通常、患者さん本人や家族の書面による同意が必要です。しかし、脳卒中のような急性疾患では、迅速な治療と臨床試験の開始が重要です。このため、十分な説明をして同意を得る時間を取るのが難しい場合があります。特に、意識障害や言語障害のために、患者さん本人から同意を得ることが難しい場合がよくあります。その際、家族が代わりに同意する「代諾者同意」が必要です。しかし、家族が遠方にいるなど、すぐに病院へ駆けつけられない場合には、代諾者同意を得るのが遅れ、その結果、治療や臨床試験の開始が遅れるという課題があります。こうした課題に対処するため、他の国では一刻を争う緊急時の臨床試験で、同意を省略したり、後で同意を得る仕組みが作られています。これにより、治療の開始を遅らせないで、患者さんの負担を減らしながら試験を進められます。日本では、倫理的な配慮や制度上の課題があり、患者さんや家族、一般の方への周知もあまりおこなわれていません。そのため、 “ 新しい同意のカタチ” を用いた緊急時の臨床試験には、慎重な対応が求められます。1111SECTION緊急時同意の課題新しい仕組みを考える私たちの研究班では、日本において、一刻を争う緊急時の臨床試験における同意手続きをより円滑に進めるために必要な条件や課題について検討しました。次からの章では、その具体的な内容をご紹介します。緊急時の臨床試験に求められる新しい同意のカタチ0404
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