KOKUJUN Press vol.52
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病理診断による確定診断は、ゲノム医療分野にも応用される時代へ04 病理部は、心臓血管外科などの臨床各科へ迅速・的確な病理診断を提供することを目指しています。病理診断には大きく分けて、術中迅速診断、組織診断、細胞診断、剖検診断、の4つがあります。今回は心臓血管外科とのかかわりについて簡潔にご紹介します。 まず術中迅速診断は手術中に治療の方針や切除する範囲などを決定する際に必要です。手術中に採られた病気の組織から標本を作り、15〜20分ほどで診断し、結果を迅速に手術場の臨床医に伝えます。心臓血管外科においては、特に心臓や肺動脈から発生した病変が腫瘍か否か、腫瘍なら悪性か良性かの判定を行って、手術の方向性(どのくらいの範囲を手術でとったらよいか、あるいは取り残しがあるか否かなど)の判断材料となっています。 次に組織診断に関しては、心臓では補助人工心臓の装着時や弁疾患の手術時に心筋の一部や弁を顕微鏡で直接観察することにより、MRI、CT、エコーなどの画像検査では診断できない病変の確定診断を行います。大動脈では大動脈瘤や動脈解離の手術時に動脈壁の一部が病理検体として提出されて、マルファン症候群などの結合組織病や高安動脈炎などの病気の確定診断に直結しています。 病理診断による確定診断は患者さんの将来の合併症などの予後推定に役立つこともあり極めて重要な医療行為と考えられます。病理診断に供された組織はホルマリン固定パラフィン包埋組織として長期間に渡り病理部に保存されて、何年か先に病気が再燃した時などに再び使用されています。がんの分野では著しく発展を遂げているゲノム医療・遺伝子診断が各臨床分野において普及し始めています。病理部に保存された組織がこのような分子レベルの解析にも応用される時代が到来すると思われます。 病理部 部長 畠山 金太Kinta Hatakeyama〈専門領域〉循環器病理、動脈硬化と血栓症、病理診断学〈専門資格等〉日本病理学会病理専門医・指導医日本臨床細胞学会細胞診専門医・指導医臨床研修指導医心臓血管外科  輸血管理部  病理部病理部

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