情報利用促進部
研究活動の概要

情報利用促進部においては、循環器病および健康の情報収集を広く行うとともに、その情報を研究、医療施策に活用する体制の整備を行い、広く社会への還元を目指している。様々な学会、大学をはじめ、各種研究団体および公的機関などとの多くの共同事業・研究を施行するとともに、様々な新規取組みにも参画している。また産学連携の枠組みのなかで、様々な社会、医療実装を見据えた事業、研究にも取り組んでいる。

主な活動としては、下記の通りである。

  1. 日本循環器学会とのJROAD、JROAD-DPC事業
    • JROAD調査は、2004年より実施され、①施設概要、②検査、③治療の実施状況を病院レベルで収集している。①は循環器医療の供給度、②、③は循環器医療の必要度(需要)を示している。
    • JROAD-DPC調査は、各施設の循環器医療に関するDPC情報(診断名、重症度、処方、処置、治療、退院時予後など)を2012年度のものから患者個人レベルで収集している。
    • JROAD及びJROAD-DPCの公募研究:2015年より循環器疾患の診療実態を明らかにするとともに、日本の循環器病疾患医療の質の向上に資する研究として継続して行っている。
    • 2012年4月から2021年3月までの我が国における急性心不全入院の管理と転帰を調査し、急性心不全入院患者は高齢化しているが、死亡率と再入院率も減少していることを報告した。(Circ J. 2024 Jul 25;88(8):1265-1273.)
    • 劇症型心筋炎患者における心筋機能不全の自然経過と予後について報告した。
      (Circ. Heart Fail. 2024d Apr; 17(4): e010840.)
    • 日本におけるウェアラブル心血管除細動器(WCD)の使用状況を報告した。
      (J Arrhythm. 2024a Aug; 40(4): 998-1000.)

  2. 日本脳卒中データバンク事業
    • 国立循環器病研究センター脳血管内科に研究事務局を置く多施設共同研究事業であり、急性期脳卒中入院患者が登録されている。
    • 急性虚血性脳卒中および出血性脳卒中後の臨床転帰に対する肥満指数(BMI)の予後への影響を報告した。(Int. J. Stroke. 2024 Oct; 19(8): 907-915.)
    • 心房細動を伴う虚血性脳卒中患者 33,870 人の重症度、転帰、およびそれらの経年変化を報告した。(J Atheroscler Thromb. 2024 Aug 29. PMID: 39198185.)

  3. レジストリ研究
    • J-AB:2017年7月より本邦におけるカテーテルアブレーションの現状(施設数、術者数、疾患分類、合併症割合等)を把握することにより、カテーテルアブレーションの不整脈診療における有効性・有益性・安全性およびリスクを明らかにすることを目的にレジストリが開始されている。
      高齢者集団における心房細動(AF)の治療におけるカテーテルアブレーションの安全性と有効性について報告した。(Eur Heart J-Qual Car. 2024 Sep 18.)
    • J-LEX:本研究は、リード抜去症例の実態を把握することによりリード抜去術の有効性・有益性・安全性およびリスクを明らかにする目的にて実施されている。
    • J-BPA:本研究は、慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対するバルーン肺動脈形成術(BPA)の実態を把握することによりその有効性・有益性・安全性およびリスクを明らかにする目的にて実施されている。
    • APHRS-BrS:アジア太平洋地域におけるBrugada症候群患者の臨床情報を登録、前向き観察研究である。
    • J-MITRA:2019年4月より手術リスクの高い器質的ないし機能性MRを有する患者に対する経皮的僧帽弁接合不全修復システムを用いた治療の安全性モニタリングを含む実態調査を行なっている。
    • J-LAAO:2020年10月より非弁膜症性心房細動患者に対する経皮的左心耳閉鎖システムを用いた治療の安全性モニタリングを含む実態調査を行なっている。
    • JAB_PMS:2024年4月よりパルスフィールドアブレーション(PFA)カテーテル新医療機器の製造販売後データベース調査を全国24施設で実施。PFAカテーテルを使用して治療された患者の臨床データを収集し、製造販売後の使用実態下におけるアブレーション用カテーテル及びアブレーションに用いる併用機器の有効性及び安全性を調査することを目的としている。

  4. NDB(National Database)を用いた研究
    • 心房細動に対するカテーテルアブレーション後の経口抗凝固薬の継続状況と、血栓塞栓症および出血事象との関連性を CHADS2 スコアに従って評価し、継続する利点とリスクが患者のCHADS2スコアにより異なることを示した。(Eur Heart J. 2024 Feb 16;45(7):522-534.)

  5. レジストリ事業・医療情報の民間活用の促進
    • レジストリの利活用を民間に広げることにより、より広く医療、社会に貢献を行うための方策検討を進めるとともに、JROAD、JROAD-DPCデータの産学連携利用を行っている。