バイオバンク
バイオバンク事業の概要
国立循環器病研究センター(国循)の事業として、主に循環器領域の医学臨床研究に貢献するために、国循の受診患者をはじめとする循環器病の患者の医療情報と生体試料を収集保管し、それらを研究に払い出して活用することで、循環器疾患の成因の解明、新しい検査法・治療法・予防法の開発などの医学研究、医学教育などを推進させることを使命としている。ヒト試料を用いた研究に必要な倫理性の確保と研究協力者の個人情報の保護にも万全を期すため取り組んでいる。
2024年の部門別活動内容
- 試料の収集・管理・払出
- 2024年中のバイオバンクの協力者は3,214人(累計33,450人)、生体試料を3,052人(累計30,181人)から採取し、保管した。
- 臨床研究に対し2024年末までに累計94件の保管試料の払い出しを実施した。払出先の内訳は、国循内研究41件、共同研究がアカデミア32件、企業13件、ナショナルセンター8件であった。
- バイオバンク説明パンフレット、意思確認書、同意撤回書、説明動画について、患者にわかりやすく、かつ記入不備を防止する為、表現および書式の大幅な改訂を行った。
- アセントについては、年齢・発達に応じた3種類に改訂した。
- 説明動画を国循チャンネル(YouTube)に公開し、院内に設置しているリーフレットや高度循環器ドック受診者向け案内にQRコードを掲載し、また外部医療機関にURLを案内し、簡便に動画を視聴いただけるようにした。
- バイオバンク公式サイトにもこれらを掲載し案内している。
- 電子カルテシステムにバイオバンク説明同意文書(剖検・アセント)を追加で実装した。
- バイオバンク同意を得て収集した検体について管理番号・ラベル発行システムによる効率的な管理を行っている。
- 事業内の倫理的配慮を必要とする事項について研究倫理センターと連携しながら対応している。
- 残数の少ない試料の取り扱いについて、世情に合わせた試料・データリソースの活用ルールの作成を行っている。
- ゲノム医療部門との協働により、外部医療機関からの遺伝子検査用の試料の収集・管理を行っている。
- 血清コレステロール(HDL-C、LDL-C)の国際的な標準化(Cholesterol Reference Method Laboratory Network (CRMLN))に関して取り組み、多様な患者由来血清の提供を実施した。
- 2024年中の病名登録数は、3,223件(累計33,161件)となった。
- 試料の利活用に向けた活動
- これまで営利企業への試料等の提供は原則としてNCVCとの共同研究でのみ対応していたが、営利企業やアカデミアへの分譲による試料等の提供の要請の高まりに対応するため、分譲の実現に向け、事業計画書の改訂を行った。
- BB-ORCサーバーの容量が拡充され、5,000症例におよぶ全ゲノム解析/全エクソーム解析の実施が可能となり、実際にバリアントデータベースの施設内利用が開始され、安定した運営の現実度を高めた。
- ゲノムインフォマティシャンが新規に加入し、計画の実践に貢献した。
- 第1回バイオバンクユーザー会を6月20日、7月1日に開催し、関連部署から26名が参加した。第2回開催に向け、ユーザーの意見を集約した。
- 研究者自身が研究目的に合致するバイオバンク保管試料の情報を検索する「バイオバンク試料検索システム」を構築しており、事前調整の前に研究者がおおまかな研究計画を検討することができるようになっている。
- 診療情報提供例およびバイオバンク病名毎の検体数一覧・病名登録規則をGaroonで公開している。
- 「国循バイオバンク利用の手引き」をGaroonで公開し、研究者が利用のための情報を得やすくしている。
- NCBNへ保管試料および附随する情報を隔月に提出した。NCBNへの外部からの検索数が増加しており、6NCバイオバンクのone stop利用が進められている。
- 日本医療研究開発機構(AMED)の研究班が主催する「バイオバンクオープンフォーラム」が2月と8月の2回開催され、引き続き多施設のバイオバンク間、企業、患者等との情報交換を行った。
- NCBNが取り組む研究と事業
- がんや難病に関するゲノム医療の推進に必要な健常群・疾患コントロール群データの構築[AMEDの研究]
- NSAID・抗生剤・造影剤・アルコール消毒に対する薬剤アレルギー既往歴を有する症例のゲノム解析[JHの研究]
- 造影剤腎症を有する症例のゲノム解析[JHの研究]
- ゲノム医療実現推進のためのバイオバンク・ネットワーク構築とバイオバンク利活用促進に関する研究開発[AMEDの研究]
- 産学官共同臨床情報利活用創薬プロジェクト
[GAPFREE4 日本製薬工業協会との共同研究]
学会発表・展示
- 第88回日本循環器学会学術集会(3月8日-10日/神戸市、3月19日-4月19日/オンデマンド配信)においてNCBNとNCVCの紹介をNCVCが主体となって行った。
- 6NCリトリートポスターセッション(4月13日/新宿区)において、石原康貴リサーチフェローが、「核膜病関連疾患・臨床ゲノム情報統合データベースの新規構築」と題し、ポスター発表を行った。
- 日本医療検査科学会第56回大会(10月4日-6日/横浜市)においてNCBNの紹介をNCVCがバナー広告にて行った。