国立循環器病研究センターでは、臨床診療において、肥大型心筋症、マルファン症候群、遺伝性不整脈(QT延長症候群、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍、ブルガダ症候群など)、家族性高コレステロール血症、遺伝性血栓症などの遺伝性疾患の遺伝学的検査を担っています。さらに診療で同定に至らない場合も、ゲノム解析研究の枠組みで原因の同定と医療への還元を目指す研究に取り組んでいます。
循環器領域の心筋症、不整脈、血管疾患、脳神経疾患、周産期領域、小児循環器領域等、を含む難病・希少疾患はもちろんのこと、将来は心筋梗塞、脳卒中、生活習慣病(糖尿病・代謝、腎臓・高血圧)などのありふれた病気に対してもゲノム医療を推進できるように、「ゲノム医療部門」が設置され、病院診療科横断的に取り組んでいます。オープンイノベーションセンター・バイオバンクやメディカルゲノムセンター、研究所の各専門領域部署などとともに、連携して活動しています。
また、遺伝子検査室・遺伝情報管理室ではNGSを用いた先進的高度ゲノム解析が、遺伝相談室では難病遺伝学的検査のレポーティングを含む遺伝カウンセリングとともに、産婦人科部と協力して、NIPTコンソーシアムの協力施設として、無侵襲的出生前遺伝学的検査(non-invasive prenatal genetic testing:NIPT※)を臨床研究として実施しています。
※NIPTは、遺伝カウンセリングを行なったうえで母体から採取した血液をスクリーニングして特定の胎児染色体異常を検知する方法です。
ゲノム医療部門では、国立循環器病研究センター内外の研究者とともに、多施設参加型のゲノム研究コンソーシアムによる大規模ゲノム解析研究、診断・治療に還元するための疾患ゲノム解析研究について、以下に示すように各種実施しています。
- 循環器疾患におけるゲノム医療推進のための全国規模プラットフォームの構築
遺伝性循環器疾患の既知・新規遺伝子バリアントの検出、探索同定から患者/社会還元、利用に関する研究です。(https://grandstar-next.ncvc.go.jp/) - 未診断疾患イニシアチブ(IRUD)研究事業(日本医療研究開発機構)
遺伝子を調べることで診断の手がかりを見つけ、全国の病院と情報共有して治療法の開発につなげる患者さん参加型のプロジェクトです。表現型と遺伝型のマッチングによって確定診断に至るため、より多くの方々のご協力によって、いままで未診断であった患者さんたちにも正確な診断がより早くもたらされます。 - 難病のゲノム医療推進に向けた全ゲノム解析基盤に関する先行的研究開発(日本医療研究開発機構)
全ゲノム解析を効率よく、信頼性高く行うための事業体である「全ゲノム解析基盤」を構築するために、「先行解析」を行いながら基盤構築に必要な研究開発を行い、将来の「本格解析」につなげる研究です。 - 超高齢社会の有症候性徐脈に対する新規心拍上昇薬の開発指標の探索同定と医師主導治験実施に資する至適評価指標の構築(日本医療研究開発機構)
洞不全症候群、房室ブロックなど、徐脈性不整脈の新規経口薬の臨床開発研究を行っています。 - 希少難病に対する機能喪失型バリアント評価に基づく遺伝子治療ターゲット創出システムの構築(日本医療研究開発機構)
遺伝性循環器疾患のゲノム解析基盤を利用して、治療標的を探索し、創出システムを確立する基礎開発研究を行っています。