不整脈科
研究活動の概要

不整脈科では、種々の頻脈性・致死性不整脈の病態及び機序の解明、並びに新たな診断・治療法の開発に加え、近年増加している心房細動に関連した抗凝固療法や新しいアブレーション法、アブレーション合併症軽減などを臨床研究のテーマとし難治性の不整脈疾患において種々の研究活動を行っている。

本年は継続して行っていた心房細動カテーテルアブレーションに関して3つの多施設前向き介入研究に関して、世界最高峰の3つの学会のlate breakingにて発表を行った。いずれもアブレーション法の違い(高周波 vs. クライオアブレーション)による有効性安全性を検討したものであるが、米国ACC学会(2024.3)では、周術期脳塞栓発生に関する研究を、欧州ESC学会(2024.8)では、心不全症例における安全性・有効性を、米国AHA学会(2024.11)では、持続性心房細動における有効性・安全性をそれぞれ発表した。今後も多施設前向き介入研究を続け、新しいエビデンス創出に取り組んでいく予定である。

また隠れた心房細動を見つけ出すAIを用いた独自の心電図診断装置の開発を、オープンイノベーションセンター(OIC)にてJSR社との共同研究で行い、成果を2022年日本循環器学会で発表、その後、得られた心電図から睡眠時無呼吸の簡易チェックが可能か研究を続けている。

心臓サルコイドーシスに関して、全国調査から得られた結果を用い、不整脈診療ガイドラインFocus update2024へ1次予防としての植込み型除細動器(ICD)の適応の推奨度を上げた。さらに超長期のイベント発生に関して全国調査をJACSレジストリとして継続している。

遺伝性不整脈疾患に関しては遺伝性不整脈外来創設による効果で、昨年も500名近い遺伝子診断紹介を受け、次世代シーケンサーを使った診断を随時行っている。これらの結果を元にQT延長症候群、Brugada症候群、カテコラミン依存性多形性心室頻拍などの治療や予後に関する報告を種々の国際学会・英文論文等でその成果を報告した。

ビッグデータを使った研究として、2017年から行っている全国アブレーション登録事業(J-AB)のデータから高齢心房細動へのアブレーションの有効性・安全性を報告した。さらに新規の研究として2014-2018年に心臓再同期療法(CRT)を行ったDPCデータの2次調査を全国規模で施行中(JPN-CRT研究)で、今後我が国初の急性期から長期的な予後予測因子を報告できる可能性が高い。

デバイス遠隔モニタリングは800名を超える除細動器患者を含んで2800名以上に行い、デバイス植込み数とともに単施設の遠隔モニタリング数としては日本最大である。

その他、不整脈心電学会と共同研究を進め、アブレーション全例登録事業(J-AB)、リード抜去全例登録事業(J-LEX)、左心耳閉鎖デバイスの全例登録事業(J-LAAO)を引き続いて行っている。J-ABは月間1万例を超える登録が安定して行われており、登録数は55万件に達し世界一となっている。

今後もあらゆる方面から難治性心不全や不整脈の治療・管理・研究に取り組む予定である。

2024年の主な研究成果
  • アブレーション安全性をみる前向き研究(Embo試験)の発表(ACC 2024 late breaking)
  • 心不全例へのアブレーションの安全性をみる前向き研究(CRABLE-HF試験)の発表
    (ESC 2024 late breaking)
  • 持続性心房細動へのブレーションの安全性をみる前向き研究(CRRF-AF試験)の発表
    (AHA 2024 late breaking)
  • 国際多施設共同治験(日本PI)MidQ Response試験参加中
  • 不整脈心電学会との共同研究でアブレーション全例登録レジストリー事業(J-AB)、リード抜去全例登録事業(J-LEX)を継続、日本循環器学会との共同研究で左心耳閉鎖デバイス全例登録事業(J-LAAO)の継続
  • 無症候例に対する心房細動カテーテルアブレーションの有効性をみる多施設前向き研究(ASYM試験)継続
  • 新しいアルゴリズムをもった心臓再同期療法の効果に関する研究(PPAP-CRT試験)の継続