研究推進支援部
支援業務概要
- 研究開発の推進に必要となる公的研究資金等の外部研究資金、特に国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」(AMED)からの外部資金獲得増に向けて、研究計画書等の作成支援、研究班構築調整、臨床研究の推進等を行った。
- 研究所共通実験室および共通機器の管理および病院職員の新規利用者登録の促進を行い、研究環境の整備に努めた。
- 国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)共同研究課(併任)を通じて、6NC連携による研究を推進した。
- 情報統括部・医療情報部と協力し、センターにおける研究開発や診療業務に不可欠な情報基盤の運用管理を行った。
- 情報統括部・医療情報部と協力し、センターにおける研究開発や診療業務に不可欠な様々な情報システムの仕様策定委員会・技術審査委員会へ出席し、仕様策定や調達の支援を行った。
- 情報統括部・医療情報部と協力し、種々の情報セキュリティインシデント発生時には、厚生労働省やNISCと連携しながら速やかに対応できる体制(CSIRT)を整備し活動している。
- 研究公正に資するために論文関連データ管理システムを開発し運用管理している。2019年度から研究所を対象に運用開始し、2023年度より病院に拡張し、現在はセンターにおけるほぼすべての投稿論文に関連するデータの管理を行なっている。2025年1月現在、研究所322件、病院145件の論文および関連するデータが保管されている。
- 医療情報の抽出・匿名化・セキュアな管理・適切な解析方法などの技術的なコンサルテーションを行い、医療情報関連の様々な研究に関する研究計画立案や研究実施の支援を行った。
- 年間を通して全国の臨床検査室からの標準化依頼(40件)及び試薬メーカーから値付けの依頼があった50検体(管理血清)の処理と試薬メーカー5社に対するT-CHO、HDL-C及びLDL-Cの測定試薬に対する米国CDCの認証プロトコルに基づく認証試験を実施した。
研究企画調整室
研究情報基盤管理室
脂質基準分析室
研究活動の概要
- 研究企画調整室では、主に先天性心疾患を含む心不全における病態生理の解明及びその病態生理に基づいた治療に関する研究を行っている。病態生理の解明には、複雑系の機能解析に必要な工学的手法やコンピュータ・シミュレーションを用いた研究を行っている。また、先天性心疾患の原因解明に向けた遺伝子研究を行っている。
- 研究情報基盤管理室では、情報統括部・医療情報部と協力して、様々な医療情報システムのデータを一元的に管理するデータベース(統合DB)を開発し、複数のシステムに分散している情報を横断的に検索・抽出できる環境を整備している。継続的にデータの追加・修正、収集漏れ・間違い・データ形式の不整合などのリカバリ、それらに伴うデータ定義書の更新を行い、統合DBの精度や利便性の向上を図った。
- 生理・病理現象の原因解明によって、循環器病を中心とした疾患治療および予防と健康寿命延長を目指して研究を進めている。「生体内のエネルギー代謝動態の変化が疾患や老化の根本的な原因になる」という仮説のもと研究を進めている。本年度は、薬剤投与や外部刺激による病態改善のメカニズム解明や新たなモデル動物の開発などを行った。具体的には、糖尿病性心不全の改善薬の模索、光操作による腎傷害に改善効果のメカニズムの検討、すい臓がんの進行過程における代謝動態の検討、骨格筋疲労に伴う代謝動態の変化の検討、アルツハイマーが骨格筋の興奮性に及ぼす影響の検討を行った。
2024年の主な研究成果
- コンピュータ・シミュレーションを用いたフォンタン循環の病態解明研究を行い、埋め込み型人工心臓およびフェネストレーションの効果を明らかにした。
- 心臓マイクロダイアリシス法を用いて、心筋虚血・再灌流時にSGLT2阻害薬が心筋ミオグロビン分泌を抑制し、心保護作用を発揮することを明らかにした。
- 心停止ドナーモデルラットにおけて、心停止後の右室負荷が遷延していることを遺伝子発現レベルで解明した。
- CPAPが心拍出量を増加させるメカニズムについて解明した。
- ファロー四徴症患者心筋の状態を反映するmicroRNAを探索し、肺動脈弁輪径と相関するmicroRNAを同定した。
- 統合DBにおけるデータの追加・修正や分かりやすいデータ定義書の整備を継続的に行うことで、統合DBの精度や利便性の向上を図った。
- 大動物(犬)を用いて呼気終末期陽圧(PEEP)の循環動態へ及ぼす影響が、正常と急性肺障害時に異なる呼吸-循環連関を示すことを検証した。
- 循環シミュレータにより、補助循環下の弁膜症や不整脈によって生じる循環破綻を要素ごとに検証し、病態の特徴を検証した。
- 糖尿病性心不全薬としてsodium glucose transporter(SGLT)2阻害薬が有益な効果を示すことを発見した。そのメカニズムは、SGLT2阻害薬がミトコンドリア内ATP産生を高めることによって、細胞内ATP量を維持するためであることを明らかにした。
- 光操作によって腎傷害が軽減することを明らかにした。このメカニズムは、因子Xの酸素解離機能を高め腎傷害に伴うATP量低下を抑制するためであることを発見した。
- アポトーシス誘導遺伝子と細胞増殖遺伝子に変異を加えることによって、すい臓がんモデルマウスを作製することに成功した。このモデルでは、がん誘発後、時間をおくと腸間膜への転移がわずかに確認されたが、主としては、すい臓がんのみの影響を観察できることを確認した。
- これまで骨格筋疲労の原因の一部はATP濃度の低下にあると考えられてきたが、疲労時におけるATPの低下量は機能に影響を及ぼすほどではないことを明らかにした。また、特に収縮頻度の高い運動では、疲労収縮開始10秒後をめどに細胞内ATP濃度が上昇し始めることを明らかにした。
- アルツハイマーモデルマウス(J20)では、脳機能だけでなく、超初期(2か月齢)に骨格筋の興奮性が低下することを明らかにした。