情報利用促進部
研究活動の概要
情報利用促進部においては、循環器病および健康の情報収集を広く行うとともに、その情報を研究、医療施策に活用する体制の整備を行い、広く社会への還元を目指している。様々な学会、大学をはじめ、各種研究団体および公的機関などとの多くの共同事業・研究を施行するとともに、様々な新規取組みにも参画している。また産学連携の枠組みのなかで、様々な社会、医療実装を見据えた事業、研究にも取り組んでいる。
主な活動としては、下記の通りである。
- 日本循環器学会とのJROAD、JROAD-DPC事業
- JROAD調査は、2004年より実施され、①施設概要、②検査、③治療の実施状況を病院レベルで収集している。①は循環器医療の供給度、②、③は循環器医療の必要度(需要)を示している。2023年度JROAD調査では、1516施設から回答を得た。これらの施設の年間の入院患者数は急性心筋梗塞80,084名、心不全入院患者数年間284,815名、急性大動脈解離患者数年間25,996名であった。
- JROAD-DPC調査は、2014年度より、各施設の循環器医療に関するDPC情報を収集することにより診断名、重症度、処方、処置、治療、退院時予後などを患者個人レベルで収集している。2022年度調査までの10年間の収集データ数は、約1,280万件に及び、我が国随一の循環器入院データベースとなっている。
- JROAD及びJROAD-DPCの公募研究:2015年より循環器疾患の診療実態を明らかにするとともに、 日本の循環器病疾患医療の質の向上に資する研究として継続して行っている。2023年は12本の研究論文が発表された。
- 日本脳卒中データバンク事業
- 国立循環器病研究センター脳血管内科に研究事務局を置く多施設共同研究事業であり、全国の年間約2.0万症例(2023年実績)の急性期脳卒中入院患者が登録されている。2023年は発祥不明脳卒中の臨床転機について報告を行った。(J Neurol Sci. 2023 Oct 15;453:120798. )
- 学会とのレジストリ事業
- J-AB:2017年7月より本邦におけるカテーテルアブレーションの現状(施設数、術者数、疾患分類、合併症割合等)を把握することにより、カテーテルアブレーションの不整脈診療における有効性・有益性・安全性およびリスクを明らかにすることを目的にレジストリが開始されている。年間に8万例を超える症例が登録されている。(J Arrhythm. 2023 Sep 25;39(6):853-859.)
- J-LEX:本研究は、リード抜去症例の実態を把握することによりリード抜去術の有効性・有益性・安全性およびリスクを明らかにする目的にて実施されている。累計症例数は4,000例を超える。
- J-BPA:本研究は、慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対するバルーン肺動脈形成術(BPA)の実態を把握することによりその有効性・有益性・安全性およびリスクを明らかにする目的にて実施されている。1,600例を超える登録が行われている。
- APHRS-BrS:アジア太平洋地域におけるBrugada症候群患者の臨床情報を登録、前向き観察研究である。
- JROAD-CR:急性心筋梗塞後の心臓リハビリテーション施行に関する全国実態調査を行い、各種イベントの発生および死亡を追跡することにより、予後改善への貢献、診療ガイドラインの改訂を目的とし実施している。
- J-MITRA:2019年4月より手術リスクの高い器質的ないし機能性MRを有する患者に対する経皮的僧帽弁接合不全修復システムを用いた治療の安全性モニタリングを含む実態調査が開始されている。累計7,000例を超える症例が登録されている。
- J-LAAO:2020年10月より非弁膜症性心房細動患者に対する経皮的左心耳閉鎖システムを用いた治療の安全性モニタリングを含む実態調査が開始された。約4,000例を超える症例が登録されている。
- NDB(National Database)を用いた研究
- 心房細動のカテーテルアブレーション後の経口抗凝固療法のリスク・ベネフィットに関する重要なエビデンスを報告した。(Eur Heart J. 2023 doi: 10.1093 Online ahead of print.)
- レジストリ事業・医療情報の民間活用の促進
- レジストリの利活用を民間に広げることにより、より広く医療、社会に貢献を行うための方策検討を進めるとともに、JROAD、JROAD-DPCデータの産学連携利用を行っている。