バイオバンク
バイオバンク事業の概要

国循の事業として、循環器領域の医学臨床研究に貢献するために、国循の受診患者をはじめとする循環器の患者の医療情報と生体試料を収集保管し、それらを研究活用に分配することで循環器疾患の成因の解明、新しい検査法・治療法・予防法の開発などの医学研究および医学教育を推進させることを使命としている。ヒト試料を用いた研究が必要とする研究倫理と研究協力者の個人情報の保護の体制整備にも万全に取り組んでいる。

2023年の部門別活動内容
  1. 試料の収集・管理・払出
    • 2023年中のバイオバンクの協力者は2,789人 (累計30,236人)、生体試料を2,739人(累計27,129人)から採取し、保管した。
    • 臨床研究に対し2023年末までに累計83件の保管試料の払い出しを実施した。内訳として院内41件、共同研究はアカデミア26件、企業10件、6ナショナルセンター6件となっている。
    • 新たな指針の下で実施される研究への払出が可能なように、試料収集・管理ができるように、事業計画の改訂を行った。
    • 電子カルテシステムに未実装であるバイオバンク説明同意文書(剖検・アセント)について対応をすすめている。
    • バイオバンク同意のある病理検体の匿名化・ラベル発行システムの導入による効率的な管理体制整備を行った。事業内の倫理的配慮を必要とする事項について、医学統計研究部と連携しながら対応している。
    • 残数の少ない試料の取り扱いについて、世情に合わせた試料・データリソースの活用ルールの作成を行っている。
    • ISO20387取得に向けSOPの見直しなど書類の整備を開始した。
    • ゲノム医療部門との協働により、外部医療機関からの遺伝子検査用の試料の収集・管理体制を行った。
    • これまで実施してきた血清コレステロール(HDL-C、LDL-C)の国際的な標準化に関する(Cholesterol Reference Method Laboratory Network (CRMLN))の取り組みに加えて、血清トリグリセライド(TG)値についても、同様に取り組みを実施し、多様なTG値の患者由来血清の提供を実施した。
    • 移植医療部と国循内の移植・組織保存バンクからの試料受け入れについて、検討している。

  2. 試料の利活用に向けた活動
    • バイオバンク試料の更なる利活用を推進すべく、4月にバイオバンク利活用推進室長が着任した。
    • 外部からの問合せの増加、関連指針の改定などに対応するため、10月以降は各室を越えたチーム制とし、更なる利活用の拡大、手続きの迅速化に向けた準備をしている。
    • 研究者自身が研究目的に合致するバイオバンク保管試料の情報を検索する「バイオバンク試料検索システム」を構築しており、事前調整の前に研究者がおおまかな研究計画を検討することができるようになっている。
    • NCBNへ保管試料および附随する情報を隔月に提出した。NCBNへの外部からの検索数が増加しており、6NCバイオバンクのone stop利用が進められている。
    • 臨床研究開発部と、研究倫理審査委員会提出前の事前審査についてフローを見直し、研究者へのコメントを臨床研究開発部からの1本化へ変更した。
    • BB-ORCサーバーの容量が拡充され、保管されている全ゲノムデータの一部について、再解析・アノテーション付与を行い、研究者の申請に応じて情報払い出しを行った。
    • 2023年中の病名登録数は、2,764件(累計29,938件)となった。
    • 診療情報提供例およびバイオバンク病名毎の検体数一覧・病名登録規則をGaroonで公開している。
    • 「国循バイオバンク利用の手引き」をGaroonで公開し、研究者が利用のための情報を得やすくしている。
    • 日本医療研究開発機構(AMED)の研究班が主催する「バイオバンクオープンフォーラム」が2月と8月の2回開催され、引き続き多施設のバイオバンク間、企業、患者等との情報交換を行った。

  3. NCBNが取り組む研究と事業
    • がんや難病に関するゲノム医療の推進に必要な健常群・疾患コントロール群データの構築[AMEDの研究]
    • NSAID・抗生剤・造影剤・アルコール消毒に対する薬剤アレルギー既往歴を有する症例のゲノム解析[JHの研究]
    • 造影剤腎症を有する症例のゲノム解析[JHの研究]
    • ゲノム医療実現推進のためのバイオバンク・ネットワーク構築とバイオバンク利活用促進に関する研究開発[AMEDの研究]
    • 産学官共同臨床情報利活用創薬プロジェクト
      [GAPFREE4 日本製薬工業協会との共同研究]

学会発表・展示
  • 第87回日本循環器学会学術集会(3月10日-12日/福岡市、3月20日-3月31日/オンデマンド配信)においてNCBNとNCVCの紹介をNCVCが主体となって行った。
  • 6NCリトリートポスターセッション(4月22日/千代田区)において、石原康貴リサーチフェローが、「血液および心筋由来mtDNAにおけるヘテロプラスミープロファイルの類似性の検討と心筋mtDNAの新規遺伝的評価法」と題し、ポスター発表を行った。
  • 第8回クリニカルバイオバンク学会シンポジウム(7月28日-29日/千葉市、8月14日-9月4日/オンデマンド配信)において、冨田努バイオリソース管理室長が、「バイオバンク利活用の課題と展望 -費用を含む調整、契約、試料・情報の準備と提供-」と題し、講演した。
  • 日本医療検査科学会第55回大会(10月6日-10月8日/横浜市)においてNCBNの紹介をNCVCがバナー広告にて行った。