臨床研究開発部
研究活動の概要

臨床研究開発部は、1)国立循環器病研究センターにおいて行われている基礎研究の成果を臨床研究の場に移し、実臨床で使用可能にするための橋渡し(トランスレーショナル, TR)を支援・またはそれらを自ら実行し、2)その橋渡しされたシーズを実臨床において活用されるように臨床研究・医師主導治験を支援し、また自ら実行する部門である。このようなTR・臨床研究を行うためのインフラをセンター内で整備し、かつそのインフラを用いて、国立循環器病研究センター独自の情報発信をすることを目的とする。

具体的には、国立循環器病研究センターのTR・臨床研究を活性化するためのシーズを基礎研究成果から探索して、そのシーズが臨床試験に運用されるまでの研究およびその支援を行う。また、人を対象とする医学系研究を対象とし、倫理審査申請前にすべての研究計画書等の審査や、研究者に対する教育も行う。

業務は、以下の通りである。

  1. 医師主導型治験・介入試験および観察研究のサポートと実践
  2. 臨床研究相談
  3. 信頼性保証・新たなシーズのためのパイプライン確保
  4. トランスレーショナル研究の遂行
  5. 基礎研究および創薬などの臨床研究への展開
  6. 医学系研究計画の審査
  7. 臨床研究教育
2023年の主な業務とその成果

<支援業務>

  • 医師主導型治験・介入および観察臨床研究のサポート、臨床研究相談:
    臨床研究開発部では、医師主導治験、特定臨床研究等の介入研究、観察研究に関し、研究者の相談に応じて適切なアドバイスを行った。本年度、研究相談を707回行った。計画書の作成支援業務は7件行った。また、研究者のサポートのため、以下の資料を作成し利用できるようにした。

  • 改訂
    • 医学系研究計画審査申請書
    • 新指針対応 観察研究計画書雛形
    • 新指針対応 適切な同意雛形
    • 新指針対応 情報公開文書雛形

  • トランスレーショナル研究支援:
    当センター内で実施されているトランスレーショナルリサーチおよび探索的な臨床研究に、臨床研究開発部医師およびリサーチナースなどが参画し、研究計画作成段階から関わることで被験者保護に努めている。さらに試験の運営に関する人・もの・医事に係る調整や準備、試験の管理・運営補助、被験者への説明、有害事象への対応等を実施し、TRのスムーズな運営を支援している。
  • 臨床研究開発部 研究室の運営および支援:
    国立循環器病研究センターで実施されている臨床試験や多施設共同試験の研究補助員のための活動スペースを確保し、研究データ等の解析、保管に充てることで、個人情報等の漏洩、盗難を防止している。2023年1~3月に全8回の外部公開ウェビナーを研究者及び支援者向けに開催し、e-learningも公開した。

<教育・研修業務>

  • 臨床研究に関わる教育と啓発活動:
    臨床研究開発部では、臨床研究推進センターの他部署や、産学連携本部、研究倫理センター、研究振興部等と協力し、臨床研究全般の知識が獲得できるよう臨床研究セミナーの企画・運営を行っている。

<実践業務>

  • 医師主導治験・医師主導型臨床試験・観察研究の実践:
    医師主導治験・医師主導型臨床試験の基盤環境整備を進めた。臨床研究開発部が主体となって実施した、急性心不全にかかわる医師主導型治験「EARLIER治験」は、主要論文が国際誌にアクセプトされた(Eur Heart J Cardiovasc Pharmacother)。
    また、重症虚血肢に対するロータブレーターの有効性を評価する医師主導治験「RESCUE BTK治験」の患者登録を2018年より開始し、目標登録例数17例を完遂した。今後承認申請予定であり、その成果は実臨床に還元されることが期待される。「RESCUE BTK治験」では、プロトコル論文が国際誌にアクセプトされた(Circulation Reports)。

    医師主導型臨床試験では、TOPLEVEL, TASTE, DAPPER, AST-HFの大規模臨床研究が臨床研究開発部主体で進行中である。また、我々が実施した介入試験のサブ解析や観察研究に関しても、国際誌に報告し、国内外から高い評価を得ている。

  • トランスレーショナル研究および基礎研究の遂行:
    心不全などの循環器疾患に対する基礎研究を行っている。また、臨床医が基礎研究を行ない、生体試料を取り扱えるよう臨床研究実験室の整備・管理を行った。
  • 医学系研究計画の審査:
    当院で行う人を対象とする医学系研究に関して、新規申請・変更申請ともに当部署で審査を行っている。これまで、バイオバンクの事前審査と当部署の事前審査を別々に行っていたが、本年度より審査を円滑に進めるため、バイオバンクの事前審査も当部署の審査に組み込み、連携して審査を行っている。これに伴い、審査に関するフローの改訂を行った。
    2023年1月~2023月12月まで、以下の審査を行った。
    • 新規課題 観察研究  58課題、介入研究 8課題
    • 変更申請 観察研究 285課題、介入研究 38課題
    審査回数としては、合計1654回であった。