臨床栄養部
研究活動の概要

 臨床栄養部は、栄養管理部門とNST活動を統括している。栄養管理部門では、入院患者への美味しい減塩食を提供できるよう、管理栄養士と調理師が一体となり活動を行っている。NST活動においては心移植待機患者をはじめとする心不全によるカヘキシー患者に対する栄養管理を積極的に実施している。
 また、「社会実装推進室」と密接に連携し、「かるしおレシピ」を始めとする国循食事業「かるしおプロジェクト」の活動を行っている。

病院食の充実に向けた取り組み

 臨床栄養部は循環器疾患治療を目的に、塩分制限・脂質組成・エネルギー量等を考慮すると共に、嗜好的にも満足できる病院食の取り組みを行ってきた。減塩食を中心とした治療食(特別加算食)の提供は他施設より大幅に高く、食事提供者の78.7%(2023年12月迄の実績)を占めている。循環器病の専門病院としてワーファリン服用患者の食選択のひとつとして低ビタミンK食の提供も行っている。また、脳卒中後の咀嚼・嚥下障害に対応した嚥下食も日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の基準に準拠し、病状によりステップアップができるよう、4段階提供している。ペースト食はより安全な嚥下食を目指し、定期的な簡易粘度測定による再評価を行い、形状の安定化に努めている。さらに患者サービスの一環として週2回の選択食導入や、お子様ランチの提供を行っている。加えて、低食欲、低栄養患者への取り組みとして、食品・経腸栄養製品・栄養補助食品等も駆使し患者の栄養管理を行っている。

移転後の病院食への取り組み

 2019年に岸辺に移転後は、新調理システム(クックチル+再加熱カート)での安全で精度の高い食事提供を継続し、以前よりおいしい病院食と好評を得ていた状況を保ちつつ、新調理システムに合ったレシピの開発を行ってきた。10月に実施した患者へのアンケートでは、満足とやや満足が58%、普通が34%と肯定的な意見が92%であった。今後も新調理システムを用いたレシピの開発を続け、より満足度の高い食事提供を目指していく。

栄養食事指導への取り組み

 栄養食事指導においては、栄養治療の重要性を認識してもらうべく入院・外来患者に個別栄養指導、糖尿病透析予防指導、集団指導として高血圧教室、腎臓病教室、糖尿病教室、心リハ教室を行っている。
個別指導では、循環器病の予防と治療を目的とした、効果的かつ継続可能な減塩の方法についての指導を、一月あたり214件(2023年12月迄の実績)行っている。また、生活習慣病部門と連携して行っている糖尿病透析予防指導管理に関しては、11件(2023年12月迄の実績)の協働介入を行っている。さらなる指導件数の増加を目指し、患者の食生活改善に寄与していく。

チーム医療への取り組み

 臨床栄養部は、NST(Nutrition Support Team)、褥瘡チーム、嚥下チーム、代謝内科チーム、緩和チームに参画し、各チームの介入患者への栄養学的アプローチに寄与している。NSTにおいては、臨床栄養部が中核を担い能動的な活動を行っている。NST活動は、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師などを含む多職種協同で栄養状態の把握から適切な栄養投与に関する治療活動を進めている。12月迄にNSTで対応を行った件数は195件/月、うちNST加算件数188件/月、歯科医師連携加算も同数の算定が出来た。
ここ数年は安定した対応が出来ており、栄養不良の予防と栄養改善に寄与できている。早期の栄養介入管理においては5月よりCCUのHCUでも開始し、CCU(HCU含む)は12月迄に318件/月の算定を行い、ICUでは280件/月の算定を行った。

学会発表・講演活動

 循環器疾患の制圧に向けて学会発表や講演による情報発信や啓発を実施している。

・学会発表
  • 第26回日本病態栄養学会年次学術集会
  • 第42回食事療法学会
  • 第38回日本臨床栄養代謝学会

・講演活動
  • 吹田市立高齢者生きがい活動センター健康づくり講座
  • 岐阜県恵那保健所公衆衛生講演会
  • 徳島県阿南保健所研修会

かるしおレシピの普及推進

 食事療法の重要性は、生活習慣が要因として起こる循環器病疾患の治療・予防策として広く認められているところである。当部は循環器病専門病院の治療食を担う責任部門として、研究・教育活動を進めている。これまで塩分やその他の栄養素にも配慮した美味しい病院食を基盤とした各種治療食に関するコンテンツを、知財戦略室(旧知的資産部)と協力し国循の知的資産としての活用化に取組んでいる。その中で、病院食のコンセプトに基づく宅配弁当(国循弁当)へのレシピ化事業を進めてきた。また、患者をはじめ多方面から要望のあった国循の食事をレシピ本にまとめた「国循の美味しいかるしおレシピ」シリーズも以下の実績を上げている。その後、出版社の事業縮小によりこれらの書籍の販売が終了したため、新たな出版会社と協議を行い、2021年7月にこれまでのレシピ本から厳選したレシピに新しいレシピを加えた「国循の厳選おいしい‼かるしおレシピ今日から始める減塩メニュー100」を出版した。

  • 2012/12/19 「国循の美味しい!かるしおレシピ」
  • 2013/12/18 「続 国循の美味しい!かるしおレシピ」
  • 2014/04/10 「saita mook 美味しい!かるしおレシピ春」
  • 2015/02/26 「1日1品から始める 国循のかるしおレシピ練習帖」
  • 2015/10/10 「国循のかるしお手帳」
  • 2017/03/01 「続々国循の美味しい!かるしおレシピ」
    (以上のかるしおレシピシリーズ累計発行部数は約40万部)
  • 2021/07/01 「国循の厳選おいしい‼かるしおレシピ今日から始める減塩メニュー100」

かるしお認定

 循環器疾患の究明と克服に向け、「一人ひとりが健康でいられる社会をつくる」という想いから、塩分などに配慮し循環器疾患・予防への対応を考えた美味しい食事「かるしお」生活をひろげていくための新たな取り組みとして、知財戦略室と共同し「かるしお認定」を開始した。10月現在かるしお認定商品は42社85件(容量違い除く)となっている。

食育活動

 子供及び子育て世代に減塩生活の啓発を行う一環として、吹田市の小学校給食にかるしおレシピを応用したメニューの導入を行った。また、減塩についての知識向上のためのプログラムも作成し食育活動を行っている。今後は導入レシピを増やし、減塩の食習慣を学童期から身に着けられるプログラムを構築する。また、そのプログラムを全国展開することを目指していく。