産婦人科
研究活動の概要

 産婦人科では母体心臓病合併妊娠の管理、母体の脳血管障害合併妊娠の管理、胎児心臓病に関する妊娠、出産の管理を中心に診療している。研究はこの3つの診療の柱を中心に進められている。

 特に妊産婦死亡の原因解析は日本産婦人科医会と共同で多くのエビデンスを発信している。
毎年、発刊される「母体安全への提言」は従来全国の周産期センターおよび日本産婦人科医会会員全員に配布されている。妊産婦死亡に関してはさらに大阪産婦人科医会のもとで行っている大阪府における妊産婦死亡の調査を年次報告している。妊産婦死亡にも強い関わりを持つ妊娠高血圧症候群の発症予知や発症した場合の脳血管、心血管系への影響と予後の研究も進めている。特に脳血管障害に関してはAMEDに「脳卒中の発症と女性特有の病態との関連と新たなバイオマーカーによる女性における脳卒中発症を予測するスコアを開発する研究, Study of Research and Development of Prediction Score of Brain Stroke with Big Data and New Biomarkers in Japanese Women」が採択され、大きな目玉として進めている。さらに、妊娠高血圧症候群がその発症因子となる周産期心筋症の前向き登録事業もこれまで通り進められている。

 プレコンセプションケアに関しては我が国でも先駆的な取り組みを行なって来た。注目され始めた分野であり、これまでの経験を発信している。

 胎児心疾患に関してはキヤノンメディカルシステムと日立造船それぞれとAIを利用した胎児不整脈診断システムの研究を共同研究として行なっている。両者とも特許につながりうる新規発明を含み、今後に期待の大きな研究である。

2023年の主な研究成果
  1. AMEDに「脳卒中の発症と女性特有の病態との関連と新たなバイオマーカーによる女性における脳卒中発症を予測するスコアを開発する研究, Study of Research and Development of Prediction Score of Brain Stroke with Big Data and New Biomarkers in Japanese Women」が採択され、研究を継続している。
  2. 母体心疾患合併妊娠の研究成果を疾患ごとにまとめpublishしている。
  3. 周産期心筋症に関する前向き登録、病態解明の研究を進めている。また、心筋症特異的遺伝子との関連に関する研究が進められている。
  4. 日本妊娠高血圧学会による「妊娠高血圧症候群の診療指針2026」(2026年刊行予定)にて診療指針を部分執筆、また、外部委員として参加した。
  5. AMED主催のプレコンセプションケアの公開講座をはじめとして当科で行なって来たプレコンセプションカウンセリングについて発表している。
  6. 大阪府における妊産婦死亡の調査を行い発表した。
  7. World Associate of Perinatal Medicineのthe secretary generalとして活動している。また、日本胎児心臓病学会の理事長業務を行なっている。
  8. 日立造船と胎児不整脈のAIを用いた診断補助ソフトの開発を行っている。また、その成果を特許申請している。
  9. キヤノンメディカルシステムとAIを用いた胎児心臓超音波の新しいモダリティの開発を進めている。