情報利用促進部
研究活動の概要
情報利用促進部においては、循環器病および健康の情報収集を広く行うとともに、その情報を研究、医療施策に活用する体制の整備を行い、広く社会への還元を目指している。様々な学会、大学をはじめ、各種研究団体および公的機関などとの多くの共同事業・研究を施行するとともに、様々な新規取組みにも参画している。また産学連携の枠組みのなかで、様々な社会、医療実装を見据えた事業、研究にも取り組んでいる。
主な活動としては、下記の通りである。
- 日本循環器学会とのJROAD、JROAD-DPC事業の推進
- JROAD調査は、2004年より日本循環器学会主導のもと実施され、①施設概要、②検査、
③治療の実施状況から構成されており、我が国の循環器医療を反映している。①は循環器医療の供給度、②、③は循環器医療の必要度(需要)を示している。2021年度JROAD調査では、1516施設から回答を得、急性心筋梗塞入院患者数年間77,971名、心不全入院患者数年間284,521名、急性大動脈解離患者数年間25,141名であることが明らかとなった。 - JROAD-DPC調査は、2014年度より、各施設の循環器医療に関するDPC情報を収集することにより診断名、重症度、処方、処置、治療、退院時予後などの患者個人レベルの情報を収集する事業として実施している。2021年度データは830施設より147万患者のレコードを得た。今までの9年間の収集データ数は、約1,130万件に及び、我が国随一の循環器入院データベースとなっている。
- JROAD及びJROAD-DPCの公募研究:2015年より循環器疾患の診療実態を明らかにするとともに、 日本の循環器病疾患医療の質の向上に資する研究として継続して行っている。2022年は、年間22件の研究を実施。17本の研究論文が発表された。
- JROAD調査は、2004年より日本循環器学会主導のもと実施され、①施設概要、②検査、
- 日本脳卒中データバンク事業の推進
- 国立循環器病研究センター脳血管内科に研究事務局を置く多施設共同研究事業であり、全国134施設の参加のもと年間約2.0万症例(2022年実績)の急性期脳卒中入院患者が登録されている。2022年は、累積で約9.3万例の登録データとなり、31件の公募研究を推し進め、
2編の論文発表を行った。
- 国立循環器病研究センター脳血管内科に研究事務局を置く多施設共同研究事業であり、全国134施設の参加のもと年間約2.0万症例(2022年実績)の急性期脳卒中入院患者が登録されている。2022年は、累積で約9.3万例の登録データとなり、31件の公募研究を推し進め、
- 日本不整脈学会や日本心臓リハビリテーション学会などとの共同研究事業の施行
- J-AB:2017年7月より本邦におけるカテーテルアブレーションの現状(施設数、術者数、疾患分類、合併症割合等)を把握することにより、カテーテルアブレーションの不整脈診療における有効性・有益性・安全性およびリスクを明らかにすることを目的にレジストリが開始され、2022年は全国514施設より年間約7万例の症例が登録され、現在累計38万例を超えたカテーテルアブレーションの施行データが登録されている。
- J-LEX:本研究は、リード抜去症例の実態を把握することによりリード抜去術の有効性・有益性・安全性およびリスクを明らかにする目的にて実施されている。2022年は117施設、850例を超える登録の見込みであり、累計症例数は3,200例を超える。
- J-BPA:本研究は、慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対するバルーン肺動脈形成術(BPA)の実態を把握することによりその有効性・有益性・安全性およびリスクを明らかにする目的にて実施されている。現在、135施設、1,324例の登録が行われている。
- APHRS-BrS:アジア太平洋地域におけるBrugada症候群患者の臨床情報を登録、前向き観察研究である。台湾からの症例登録も順調に進んでいる。現在、11施設から316例が登録されている。
- JROAD-CR:急性心筋梗塞後の心臓リハビリテーション施行に関する全国実態調査を行い、各種イベントの発生および死亡を追跡することにより、予後改善への貢献、診療ガイドラインの改訂を目的とし実施している。現在74施設にて5,240例の症例が登録されている。
- 日本循環器学会、関連学会が実施する市販後調査レジストリの推進
- 2019年4月より手術リスクの高い器質的ないし機能性MRを有する患者に対する経皮的僧帽弁接合不全修復システムを用いた治療の安全性モニタリングを含む実態調査(J-MITRA)が開始されている。2022年は、全国103施設から約2,000例の症例が登録され、累計約5,500例となった。
- 2020年10月より非弁膜症性心房細動患者に対する経皮的左心耳閉鎖システムを用いた治療の安全性モニタリングを含む実態調査(J-LAAO)が開始された。2022年は118施設から約1,500症例の登録があり、累積で約2,500例の症例が登録されている。
- レジストリ事業・研究の民間活用の促進
- レジストリの利活用を民間に広げることにより、より広く医療、社会に貢献を行うための方策検討を進めるとともに、JROAD、JROAD-DPCデータの産学連携利用を開始した。また、製造販売後調査(PMS)へのJ-ABレジストリ活用の仕組みを構築した。
- より良い医療体制構築を目指した研究への参画
- 厚労科研「循環器病に係る急性期から回復期・慢性期へのシームレスな医療提供体制の構築のための研究」において、NDBデータから循環器疾患に対して都道府県で活用できる実用的な指標の策定、活用を行っている。医療提供体制の現状とその問題点を明らかにし、シームレスな医療連携を目指した6編の研究論文が2022年に当部から発表された。
- NDB(National Database)利活用を目指した研究への参画
- 厚労科研「国や都道府県が循環器病対策に関する計画を策定する際に利用可能な指標の設定、及び新型コロナウイルス感染症による循環器病への影響の評価のための研究」において、NDBデータから循環器疾患に対して都道府県で活用できる実用的な指標の策定、活用を行った。最適な医療資源配分の実現につなげるとともに、臨床診療における質向上と効率化を目指した8編の研究論文が2022年に当部から発表された。
- パーソナルヘルスレコード(PHR)活用の取組
- スマートフォンを用いたライフログデータ収集のための汎用アプリケーションの開発、ITを活用した行動変容支援システムの開発、PHRとマイナポータルとの連動可能性の検討などを行っている。
- 産学連携による社会・医療実装研究の推進
- 健康・診断アプリの開発、診断・ウェアラブルデバイスの開発応用、医療情報の利活用などに関して、企業との共同研究にて推進を図っている。