バイオバンク
バイオバンク事業の概要

国循の事業として、循環器領域の医学臨床研究に貢献するために、国循の受診患者をはじめとする循環器の患者の医療情報と生体試料を収集保管し、それらを研究活用に分配することで循環器疾患の成因の解明、新しい検査法・治療法・予防法の開発などの医学研究および医学教育を推進させることを使命としている。ヒト試料を用いた研究が必要とする研究倫理と研究協力者の個人情報の保護の体制整備にも万全に取り組んでいる。

2022年の部門別活動内容
  1. 試料の収集・管理・払出
    • 2022年中のバイオバンクの協力者は2,602人 (累計27,447人)、生体試料を2,439人(累計24,390人)から採取し、保管した。
    • 臨床研究に対し35件の保管試料の払い出しを実施した。内訳として院内19件、共同研究はアカデミア9件、企業4件、6ナショナルセンター3件となっている。
    • ISO20387取得に向けSOPの見直しなど書類の整備を開始した。
    • 血清コレステロール(HDL-C、LDL-C)値の国際的な標準化に関して、Cholesterol Reference Method Laboratory Network (CRMLN)で必要とされる多様なHDL-C値、LDL-C値の患者由来血清の提供を実施した。
    • ゲノム医療支援部との協働による外部医療機関からの遺伝子検査用の試料の収集・管理体制の改善をおこなった。
    • バイオバンク同意のある病理検体の匿名化・ラベル発行システムの導入による効率的な管理体制整備をおこなった。事業内の倫理的配慮を必要とする事項について、医学倫理研究部と連携しながら対応している。
    • 電子カルテシステムに未実装であるバイオバンク説明同意文書(剖検・アセント)について対応をすすめている。
    • 海外提供を希望する利用者がルールに遵守した払出申請ができるよう、事前に確認できる参考文書と申請書を作成し、Garoonに公開した。
    • 残数の少ない試料の取り扱いについて、世情に合わせた試料・データリソースの活用ルールの作成を行っている。
    • カルテIDや診療情報を付与したデータの払出を希望された場合のフローを作成し、運用を開始した。
    • 電子カルテ上IDの二重発番発見時について、バイオバンク関連情報の名寄せ対応のフローを作成し、運用を開始した。
    • 移植医療部と国循内の移植・組織保存バンクからの試料受け入れについて、検討を開始した。
    • 臨床研究開発部や臨床研究管理部など関連部署と、他機関の倫理委員会で中央一括審査が行われた場合の払出について、フローの作成を進めている。
    • 払出承認委員会設置に向けて、調整を進めている。

  2. 試料の利活用に向けた活動
    • 外部からの問合せの増加、関連指針の改定などに対応するため、2名の副バイオバンク長が着任、2月から9月の間で更なる利活用の拡大、手続きの迅速化に向けた準備を行った。現在は、バンク長と室長を中心に活動を行っている。
    • バイオバンク試料の更なる利活用を推進すべく、利活用推進室員2名を迎えた。
    • OICにおいて定期的に企業とのWEB交流会が設けられ、共同研究に向けた情報交換を行った。
    • 日本医療研究開発機構(AMED)がである「バイオバンクオープンフォーラム」が2月と9月の2回開催され、引き続き多施設のバイオバンク間、企業、患者等との情報交換を行った。
    • 病名登録システムの修正と登録ルールの改訂を随時行い、新規協力者の主病名・併存病名登録の作業ペースのアップを図った。
    • 診療情報提供例およびバイオバンク病名毎の検体数一覧・病名登録規則をGaroonで公開している。
    • 2022年中の病名登録数は、2,640件(累計27,174件)となった。
    • 2022年中のSF-36®健康質問票の登録数は、444件(累計7,820件)となった。
    • 「国循バイオバンク利用の手引き」をGaroonで公開し、研究者が利用のための情報を得やすくしている。
    • 研究者自身が研究目的に合致するバイオバンク保管試料の情報を検索する「バイオバンク保管検体検索システム」を構築した。これにより事前調整の前に研究者がおおまかな研究計画を検討することができるようになった。
    • NCBNへ保管試料および附随する情報を隔月に提出した。NCBNへの外部からの検索数が増加しており、6NCバイオバンクのone stop利用が進められている。
    • BB-ORCサーバーに保管されている全ゲノムデータについて、再解析し最新の情報を付与したデータリソースとするため、ストレージ容量の拡張手続きを開始した。

  3. NCBNが取り組む研究と事業
    • がんや難病に関するゲノム医療の推進に必要な健常群・疾患コントロール群データの構築[AMEDの研究]
    • NSAID・抗生剤・造影剤・アルコール消毒に対する薬剤アレルギー既往歴を有する症例のゲノム解析[JHの研究]
    • 造影剤腎症を有する症例のゲノム解析[JHの研究]
    • ゲノム医療実現推進のためのバイオバンク利活用促進に向けたバイオバンク・ネットワーク構築と運用支援に関する研究開発[AMEDの研究]
    • 産学官共同臨床情報利活用創薬プロジェクト
      [GAPFREE4 日本製薬工業協会との共同研究]

学会発表・展示
  • 第86回日本循環器学会学術集会(3月11日-13日/WEB開催、3月23日-4月20日/オンデマンド配信)においてNCBNとNCVCの紹介をNCVCが主体となって行った。
  • 第7回クリニカルバイオバンク学会シンポジウム(7月8日-9日/岡山市、7月26日-8月23日/オンデマンド配信)においてNCVCの紹介を行った。
  • 日本医療検査科学会第54回大会(10月7日-10月9日/神戸市開催、10月24日-11月23日/オンデマンド配信)においてNCBNの紹介をNCVCが主体となって行った。
  • 第69回日本臨床検査医学会学術集会(11月17日-20日/宇都宮市、11月28日-2023年1月18日/オンデマンド配信)においてNCBNの紹介をNCVCが主体となって展示した。