研究推進支援部
支援業務概要・研究活動の概要
【支援業務概要】
- 本年度から新規動物実験実施者教育訓練講習会をe-Learning形式での受講に変更し、60名が受講完了した。また、センター外に所属する方などには、DVDでの受講も受け付け、54名が受講完了した。
- 令和4年6月1日から動物実験施設を利用するための小動物エリアおよび中大動物エリアのラボツアーもe-Learning形式での受講に変更し、37名が受講完了した。また、DVDでの受講も受け付け、41名が受講完了した。なお、令和4年5月末日までに従来のラボツアーは41名が受講完了した。
- 新規教育訓練ならびにラボツアー受講者に対して、令和5年3月にe-Learning形式での継続者講習を開催し、研究者の継続的な教育の場を提供している。
- 実験管理委員会事務業務を遂行した。
- 分子生物学部発生工学研究室(現 先端医療技術開発部)の全面協力のもと、遺伝子組み換え動物の作成で研究支援を実施した。
- 情報統括部・医療情報部と協力し、センターにおける研究開発や診療業務に不可欠な情報基盤の整備および情報システム・機器の仕様策定・導入開発・運用管理を行った。
- 情報統括部・医療情報部と協力し、種々の情報セキュリティインシデント発生時には、厚生労働省やNISCと連携しながら速やかに対応できる体制(CSIRT)を整備し活動している。
- 情報統括部・医療情報部と協力し、職員の情報セキュリティ教育のためのコンテンツの作成、講習会の開催などを行った。
- 論文関連データを適切なアクセス権限の下で安全に中央管理し、保管されたデータに対するアクセスログを収集することで、誰がいつどのデータに何をしたかを確認できるシステムを研究者および研究所のために開発し、2019年度から運用開始している。2023年1月現在、284件の論文および関連するデータが保管されている。
- 医療情報の抽出・匿名化・セキュアな管理・適切な解析方法などの技術的なコンサルテーションを行い、医療情報関連の様々な研究に関する研究計画立案や研究実施の支援を行った。
- 年間を通して全国の臨床検査室からの標準化依頼(47件)及び試薬メーカーから値付けの依頼があった15検体(管理血清)の処理と、大手臨床検査会社2社および試薬メーカー5社に対するT-CHO、HDL-C及びLDL-C測定試薬の認証試験を実施した。
- 研究開発の推進に必要となる公的研究資金等の外部研究資金、特に国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」(AMED)からの外部資金獲得増に向けて、研究計画書等の作成支援、研究班構築調整、臨床研究の推進等を行った。(研究者面談15件、計画書等査読16件)。
- 研究所共通実験室および共通機器の管理および病院職員の新規利用者登録の促進を行い、研究環境の整備に努めた。
- 有害薬品とアイソトープ(RI)及びエックス線装置を用いた研究活動を支援するために、研究者に対して法令に基づいた教育訓練と安全管理業務、さらには機器の保守点検等を通して、研究の質の向上に努めた。
- 有害薬品とRIの取り扱いに関する質問等に対応し、関係部署へ引き継いだ。
- 「電離放射線障害防止規則」に基づく『エックス線装置使用の手引き』に従い、エックス線装置所有部署に半年毎の点検を案内し結果を保管している。また、各機器の漏洩をモニターするための環境用ガラスバッジを管理している。
- 先端医療技術開発部と連携して7T-MRIの利活用を推進している。
- 大動物CTの撮像時に動物の搬入・搬出の補助業務を実施した。
- RI管理区域内の施設有効利用のため、7T-MRI、大動物CTの他、先端医療技術開発部の多光子顕微鏡、血管生理学部のノトバイオート実験設備の設置に協力している。
- 「放射性同位元素等規制法」に基づきRI施設及び設備の定期的な保守点検を行い、補修等必要な処置を講じた。
- 「特定化学物質障害予防規則」及び「有機溶剤中毒予防規則」に基づき共通薬品使用室の局所排気装置を定期点検した。また、各部署の有害薬品使用を取り纏めて作業環境測定を依頼し、結果を保管している。
- 「消防法」に基づき防火区画単位で貯蔵量を指定数量内にて管理している。
- 各部署からの実験廃液や不使用試薬を取り纏め、業者による回収に立ち会った。
動物実験管理室
研究情報基盤管理室
脂質基準分析室
研究企画調整室
研究安全管理室
【研究概要】
- 研究企画調整室では、主に先天性心疾患を含む心不全における病態生理の解明及びその病態生理に基づいた治療に関する研究を行っている。病態生理の解明には、複雑系の機能解析に必要な工学的手法やコンピュータ・シミュレーションを用いた研究を行っている。また、治療には独自に開発したデバイスの臨床応用を目指した基礎研究を行っている。
- 研究情報基盤管理室では、情報統括部・医療情報部と協力して、様々な医療情報システムのデータを一元的に管理するデータベース(統合DB)を開発し、複数のシステムに分散している情報を横断的に検索・抽出できる環境を整備した。統合DBの精度や利便性の向上のため、継続的にデータの収集漏れやデータ形式の不整合の確認、データ定義書の更新のサイクルを回し、データの追加・修正や分かりやすいデータ定義書の整備を行うことで、統合DBの精度や利便性の向上を図った。
- 生理・病理現象の原因解明によって、循環器病を中心とした疾患治療および予防と健康寿命延長を目指して研究を進めている。「生体内のエネルギー代謝動態の変化が疾患や老化の根本的な原因になる」という仮説のもと研究を進めている。本年度は、薬剤投与や外部刺激による病態改善のメカニズム解明や新たなモデル動物の開発などを行った。具体的には、糖尿病性心不全の改善薬の模索、光操作による腎傷害に改善効果のメカニズムの検討、すい臓がんの進行過程における代謝動態の検討、骨格筋疲労に伴う代謝動態の変化の検討、アルツハイマーが骨格筋の興奮性に及ぼす影響の検討を行った。
2022年の主な研究成果
- 6NC共同で国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)の横断的研究推進費課題として政策提言機能について研究を行っている。6NC共通データベースとしてのNDB利用は承認されなかったが、各NCの所掌疾患に関してはNDBの利用が認められ、現在、抽出データの到着を待っているところである。
- 統合DBにおけるデータの追加・修正や分かりやすいデータ定義書の整備を継続的に行うことで、統合DBの精度や利便性の向上を図った。
- コンピュータ・シミュレーションを用いたフォンタン循環の病態解明研究を行い、植え込み型補助人工心臓の効果を明らかにした。
- 心臓マイクロダイアリシス法を用いて、心筋虚血・再灌流時にSGLT2阻害薬が心筋ミオグロビン分泌に及ぼす影響を明らかにした。
- 心停止ドナーモデルラットにおける心停止時間と両心室でのearly response gene発現の関連を明らかにした。
- 糖尿病性心不全薬としてsodium glucose transporter (SGLT)2阻害薬が有益な効果を示すことを発見した。そのメカニズムは、SGLT2阻害薬がミトコンドリア内ATP産生を高めることによって、細胞内ATP量を維持するためであることを明らかにした。
- 光操作によって腎傷害が軽減することを明らかにした。このメカニズムは、因子Xの酸素解離機能を高め腎傷害に伴うATP量低下を抑制するためであることを発見した。
- アポトーシス誘導遺伝子と細胞増殖遺伝子に変異を加えることによって、すい臓がんモデルマウスを作製することに成功した。このモデルでは、がん誘発後、時間をおくと腸間膜への転移がわずかに確認されたが、主としては、すい臓がんのみの影響を観察できることを確認した。
- これまで骨格筋疲労の原因の一部はATP濃度の低下にあると考えられてきたが、疲労時におけるATPの低下量は機能に影響を及ぼすほどではないことを明らかにした。また、特に収縮頻度の高い運動では、疲労収縮開始10秒後をめどに細胞内ATP濃度が上昇し始めることを明らかにした。
- アルツハイマーモデルマウス(J20)では、脳機能だけでなく、超初期(2か月齢)に骨格筋の興奮性が低下することを明らかにした。