循環動態制御部
研究活動の概要

循環動態制御部は設立より一貫して、循環の物理的・工学的成り立ちと心臓が消費するエネルギーに着目した研究を行い、成果を繋いでいる。2022年度においては、

  1. 循環動態を巨視的・システム的に記述し、介入ポイントを探索する基礎研究
  2. 循環動態を操るための手法を探る基礎研究
  3. 臨床にいきる医療機器開発

の3つの大テーマを軸として、研究活動を推進した。その過程において、臨床医への教育講演や企業への開発コンサルテーションを行い、基礎研究成果だけでなく、多くのアカデミアおよび企業との共同研究や外部への発信につながった。


2022年の主な研究成果

  1. 循環動態を巨視的・システム的に記述し、介入ポイントを探索する基礎研究
    循環調節の生理機能について、動脈圧反射と腎臓交感神経調節の関連に関する研究を行った。腎臓という循環の最終決定機構と交感神経活動の関係をより定量的に観察した研究である。薬剤と循環動態の研究は、将来的に治療シミュレーターにつなぐことを目的とし、「Drug library」と名付けたプロジェクトのもとに、段階的に進めている。本年度においては、イバブラジンやベルイシグアト、SGLT-2阻害薬などの新規心不全薬の検証を循環動態および自律神経調節の側面から系統的に推進した。これらのデータはすべて3.に示す循環シミュレーターに統合することを目的としている。
  2. 循環動態を操り最適化を行う手法を探る基礎研究
    本年度は自動治療システムの基盤研究に注力した。これまでの薬剤による自動治療のコンセプトから延長させ、左室補助装置やECMOなどを使用することでさらに強力かつ緻密な自動治療システムを確立することを目指した。その過程でNTT-Research社との共同研究のもと、3つの特許出願につながった。
  3. 循環制御につながる医療機器開発
    医療機器開発は、測定機器と治療機器の開発を両輪として、いずれも企業との共同研究の中で推進された。測定機器としては、低圧カフ血圧計や連続血圧計、治療機器としては、心筋梗塞を対象としたカテーテルや補助循環カテーテルなど多岐に及んだ。またそれらを最適に使用する循環動態シミュレーターの開発は最重要項目と考え、1.で得た治験の統合やユーザビリティの向上など、多くの検証や最適化を実施した。